老後2000万円問題とFIREの関係性は?

 こんにちは、ディアパートナー行政書士事務所 代表 瀧澤です。かつて話題になった「老後2000万円問題」と今話題の「FIRE」との関係性についての投稿です。

 総務省が毎年夏に前年分を総括して発表する「家計調査年報」といえば日本の家計の詳細があぶりだされてきます。収入がどのくらいで、それをどんな費目にどれだけ支出したかなどを、職業の有無や家族構成、年齢層のカテゴリーごとに足元の平均像を浮かび上がらせる重要統計となります。

変わった「年金暮らし夫婦」の定義

 先に発表された2020年分では、地味ながら見逃せない変化がありました。ちょうど2年前の夏に燃え上がった「老後資金2000万円不足問題」で取り沙汰された「年金暮らしの高齢夫婦」の定義が微妙に変わったのです。

 これまで年報でグラフ入りで紹介されていた代表的なモデル世帯は「高齢夫婦世帯」。これが今年発表分から「夫婦高齢者世帯」に変わったのです。

 「どこがどう違うんだ~」と思うかもしれませんが、要するに夫65歳以上・妻60歳以上の夫婦(=高齢夫婦世帯)に注目するか、2人とも65歳以上の夫婦(=夫婦高齢者世帯)に焦点を当てるかの違いということです。2000万円問題で使っていた前者の定義を今年から後者に改めたということです。

消滅した「赤字」 2000万円不足の幻

 数字的には大差ないし、どちらの基準でも時系列データはたどれるのですが、なぜわざわざ年報に収載するモデル世帯を変えたのでしょうか?

 所管する総務省では、「2000万円問題の変遷を年報でたどる際の混乱の可能性も検討したが、様々な意見を踏まえ局で議論をして決めた」(総務省統計局)ということのようです。

 その中で注目すべきは、2年前のリポートで指摘された多額の老後生活の不足額がついに「消滅」した事実です。2000万円問題の基データでは毎月5.5万円の赤字だった収支差が逆に1100円強の黒字になりました。

 年間だと66万円、30年間にも及ぶ老後を考えると1980万円不足するので年金以外に2000万円ないと生活がたち行かない――。そんなロジックが新データを前にすると無意味だったことがよく分かります。

データは変わる 家計も変わる

 ちなみに従前の「高齢夫婦世帯」の基準では月1500円強の赤字が残っています。要するにデータ次第で結果は変わるし、家計も変わるということです。

 若干の赤字、黒字という違いはあるが、いずれにしても20年の家計は新型コロナウイルス禍に翻弄されたといっていいでしょう。

 収入面では特別定額給付金(世帯の月換算で1万7000円弱)の臨時収入があり、支出面では巣ごもり生活の影響で交際費や教養娯楽費、外食費を中心に大きく圧縮されました。

 コロナ禍前は2000万円問題の議論が迷走し、「国が年金だけでは暮らせないと認めた」という極端な論調が幅を利かせた時も「5万円強の不足額の大半は交際費や娯楽費で説明できる。そこまで公的年金に期待すべきでない」という冷静な指摘はありました。「入るを量りて出(い)ずるを為(な)す」のが家計です。同額の赤字を30年間出し続けるのはあくまでシミュレーション上の話となります。

「生活費」基準のFIREの教え

 2000万円問題の夏から2年が経ち、「老後にいくら必要かは自分で決める」ブームが台頭してきています。今話題のFIRE(Financial Independence, Retire Early)です。色々な変型や発展型があるが、いずれも人生に節約と投資というピースを標準装備するという暮らしぶりです。

 基本形では早期退職するのに必要な資金を「年間生活費の25倍」と設定するので、収入は同じでも生活費が高額な人のゴールは遠く、節約家のゴールは近くなります。

 例えば生活費が月20万円なら必要資金は年240万円、掛ける25倍で6000万円の資金確保がゴールになり、月30万円生活なら9000万円がゴールとなってきます。

 さらに「4%ルール」という運用指針に従い、期待リターンが4%になるように米国の株と債券のインデックスファンドに半々ずつ投資し、生活費はためたFIRE資金の運用益で賄える仕組みづくりを目指します。すると「元本が枯渇する」という取り崩しの恐怖から逃れられる仕組みが出来上がります。

取り崩しは悪ではない

 2000万円でないとすると老後の必要額はいくらになるのでしょうか? FIREの教えは、一律の解などはなくカギを握るのが自分の生活であることに改めて気づかせてくれています。さらに運用という武器を味方に付ける重要性も浮き彫りにする点でパーソナルファイナンスの教科書のようです。ただ、気になる点もあると専門家は指摘します。

 それは、取り崩しは悪いことではないということです。もちろん老後2000万円問題とFIREとでは「主人公」が年金生活者と主に若者という違いはありますが、どちらも資産の取り崩しよりもフローの収入で生活を賄おうとする視点があります。だがマーケット環境は絶えず変化し、いくらたまったから安泰というゴールはありえません。将来に備えるのは重要だが、今のためにお金を使うことも等しく重要なことです。(還暦を迎えた私も、最近そのようにとくに感じています!)

FIREの基本理念はマネープランの王道

 FIREの目標は壮大ですが、アプローチそのものはおかしいことをいってはいません。

例えば、

(1)所得の最大化をはかるべく、仕事で年収を増やす方法を強く意識する
(2)支出の最小化をはかるべく、固定支出、日ごろの生活費を削減する
(3)収支差額を資産形成に回し、リスクとリターンのバランスを意識しつつ高い利回りの確保を目指す
上記の(1)~(3)は、そのこと自体はマネープランニングの王道そのものです。

 細かいアプローチの部分では「年収の70%を貯蓄しよう」といったり、「インデックス運用で十分」といったり「個別株で勝負をしよう」などといったりする人もいますが、FIREの基本は計画的な老後資産形成そのものなんだと思います。

目標未達でも経済的に豊かな老後が待っている

 ところで努力を重ねたとしても、FIREを成功させられない場合も出てくると思います。想定していたより資産形成がはかどらなかった場合、残念ながらアーリーリタイアメントを断念することもあるでしょう。

 しかし、ここでうなだれる必要はありません。ここまでがんばってきたFIREへの努力は決してムダにはならないからです。

 なぜなら、努力を重ねた人は、「同じ年齢で引退する周囲の友人より、経済的豊かさを持ったリタイア」になるからです。結果として1億円をためられなかったとしても、同僚に数千万円の資産格差があれば、その人のセカンドライフは、より自由で豊かなものになってくるでしょう。

 あるいは65歳、70歳になったとき、「プチFIRE」として5年早いリタイアをしてみるというのもいいかもしれません。会社にしがみつかずに気持ちよく引退するのは快感だと思います。「老後に2000万円」問題を解決する糸口は「FIREムーブメント」にあるのではないでしょうか。

別の視点1(別の専門家から)

 マクロ的な視点から見れば、老後2000万円問題をきっかけに貯蓄から投資に向かえばよい方向と言えますが、逆に将来不安の高まりで貯蓄性向が高まれば、むしろ合成の誤謬で経済にはマイナスとなりかねません。
 また、FIREがあまり進みすぎても、マクロの給与所得が減ってしまえば、社会保険料収入が減ってしまう可能性があります。
 お金に働いてもらうことも重要ですが、社会保障財政も考えれば、それ以上にできるだけ長く健康を維持して労働力として活躍してもらうことが重要でしょう。

別の視点2(別の専門家から)

 物価が上がらない状況での勝者は、定期収入のある人です。たとえば年金を受給している人は、この30年間の利得者といえます。定期収入額が生活費を上回れば、生活に困ることはありません。ただしある程度の貯蓄と住宅があればですが。とすると、FIREは定期収入をどのように得るかにかかってきます。
 同じ仕事をしても仕事をすることで、誰かが楽しくなる(たとえば音楽を提供するなど)、喜ばれる、誰かがらくになるなどの仕事は天職と呼べるもので、この天職から定期収入が得られるのであれば、本当に良い人生だと思います。

まとめ

 結局は、「自分で選択して、それを信じて実践していくのみ」ということになるのでしょうね~。

 若い人たちには「時間」という大きな味方がついています。これをいかに有効に活用するか、この点につきるかもしれません!

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