注意点は? 年金受給の繰り下げが75歳までに拡大

みなさん、こんにちは!「家族信託」に特化した取組を行うディアパートナー行政書士事務所です。
今回は、日本FP協会「FPいまどきウォッチング」に年金受給の繰下げ年齢拡大などの記事が掲載されていましたので、それに関して投稿していきます。(いまどきウォッチング 2022年2月10日)

現在、60歳から70歳までの間で選択できる老齢年金の受給開始時期の上限が2022年4月以降、75歳まで拡大され、60歳から75歳までの間で選択できるようになります。繰り下げ受給のメリット、注意点とともに、FPとしてリタイアメントプランニングを検討する際の留意点を紹介します。

年金の繰り下げ請求とは

年金には、老齢年金、障害年金、遺族年金があります。繰り下げ制度があるのは老齢年金で、老齢厚生年金と老齢基礎年金を繰り下げることができます。老齢年金は原則として65歳で請求できますが、65歳で請求せずに66歳(※)以降70歳までの間で請求することも可能で、これを繰り下げ請求といいます。繰り下げ請求をした時点によって、現在は最大42%年金額が増額されます。

(※)繰り下げ請求ができるのは、老齢年金の受給権発生から1年後からとなります。

これが2020年5月29日に成立した年金制度改正法により、2022年4月以降に70歳になる人から、老齢年金の繰り下げ請求の上限が現在の70歳から75歳まで拡大され、75歳で繰り下げ請求をすると年金額は最大84%の増額となります。生年月日によっては、65歳未満で特別支給の老齢厚生年金を受け取れる場合もありますが、特別支給の老齢厚生年金に繰り下げはありません。

もし65歳時点で老齢年金の受給権が発生していない場合は、権利が発生してから1年後からとなりますので、必ずしも66歳とは限りません。

繰り下げのメリットは?

老齢年金を増やすには、長く働いて年金保険料を支払う方法がありますが、年金保険料を払わずに増やす方法が、請求の時期を延ばす繰り下げ制度です。老齢年金の請求の時期を延ばすことで老齢年金の年金額が増え、増額した年金を一生受け取ることができます。

リタイア後のメイン収入である老齢年金が増額されるというのは、メリットでしょう。老齢厚生年金と老齢基礎年金は同時に繰り下げる必要はありません。別々に繰り下げることも、どちらか一方だけを繰り下げることもできます。老齢基礎年金を繰り下げる場合、付加年金に加入していた人は、付加年金も同率で増額されます。

66歳以降に繰り下げ請求をするつもりだった人が急にまとまった資金が必要になった場合は、まとめて受給することも可能です。66歳以降に請求するときに、「繰り下げによる増額した年金を請求」するか、「増額なしの年金を65歳にさかのぼって請求」するかのどちらかを選ぶことができます。

繰り下げ請求をするときの注意点

(1)加給年金・振替加算との調整

老齢厚生年金に加給年金が付く場合には、繰り下げた時点から加給年金が付きますが、加給年金額は増額されません。また、繰り下げ待機中に加給年金のみを受け取ることはできません。

老齢基礎年金に振替加算が付く場合には、繰り下げた時点から振替加算が付きますが、増額されません。こちらも繰り下げ待機中は振替加算のみを受け取ることはできません。

(2)他年金との調整

【遺族年金や障害年金を受ける権利がある場合】

66歳前に遺族年金や障害年金を受ける権利がある場合には、原則的に繰り下げはできません。例外として、障害基礎年金を受ける権利がある場合、老齢厚生年金のみ繰り下げ請求が可能です。

66歳以降の繰り下げ待機中に遺族年金や障害年金を受け取る権利を得た場合は、その年金を受け取る権利を得た時点で老齢年金の増額率が固定され、それ以上は増額されません。

【退職共済年金と老齢厚生年金を受け取る場合】

退職共済年金と老齢厚生年金は、どちらか一方の繰り下げはできず、同時に繰り下げなければなりません。どちらかを先に繰り下げ請求した場合、同日で両方が繰り下げになります。

【厚生年金基金や企業年金連合会の年金を受け取る場合】

厚生年金基金または企業年金連合会からの基本年金や代行年金は、老齢厚生年金の繰り下げ支給と連動して増額されます。老齢厚生年金の繰り下げをする場合は、厚生年金基金または企業年金連合会からの年金も合わせて繰り下げをする手続きが必要です。

(3)在職老齢年金の対象となる場合

在職老齢年金の対象となる場合は、調整後の年金額(65歳時点での老齢厚生年金の額から支給停止額を差し引いた額)が増額となり、在職老齢年金の制度により停止されている部分は増額されません。

(4)未支給年金の計算

繰り下げ請求は、遺族が代わって行うことはできません。繰り下げ待機中に亡くなった場合は、65歳時点から死亡時までの年金が未支給年金として遺族に支払われます。

(5)社会保険・税金・介護給付への影響

繰り下げることによって老齢年金が増えると、負担する社会保険料や所得税・住民税の負担も増える可能性があります。老齢年金の金額にもよりますが、約10~20%の負担になるため、老齢年金が84%増となっても、実際の手取り額としてはそこまで増えません。

他に収入があれば、さらに社会保険料や所得税・住民税の負担も増えるでしょう。また、介護保険サービスを利用した際の自己負担割合も、年収が増えると上がります。繰り下げによる年収増加により、自己負担割合が増えることにつながるかもしれません。

年金繰下げを考える場合の留意点

繰り下げによる年金の増額は確かに魅力的ですが、受取時期を延ばすことにより、受け取るまでの期間、本人の生活がきちんと成り立つかどうかを考えなければなりません。「いつまで、どのような働き方をするのか」「生活に必要な収入を確保できるか」「老齢年金以外に収入はないか」などを、きちんと計画したうえで考えることが大切です。

年金繰下げを検討するときは、以下の点に注意しましょう。

【収入】

老齢年金の繰り下げなしや繰り下げありの組み合わせ、退職金や企業型確定拠出年金、個人型確定拠出年金(iDeCo)があるなら、その受取方法の組み合わせも考慮して、複数の案をシミュレーションしましょう。

繰り下げに当たっては、当面の手元資金の余裕について確認が必要です。くわえてプレミアム旅行などご自分のライフイベントを考慮に入れることも、判断の重要なポイントです。

男性は1961年4月1日以前生まれ、女性は1966年4月1日以前生まれの人で、65歳未満で受け取れる場合がある特別支給の老齢厚生年金には、繰り下げはないため、65歳からの本来の老齢年金と分けて考えることが大切です。(特別支給は積極的に受給しましょう!!)

ご自身で、最新のねんきん定期便により特別支給の老齢厚生年金を受給できるかどうかを確認してください。なお、加給年金、振替加算についてはねんきん定期便には記載されません。これらについてはご自身の「家族状況」「生年月日」「年金加入状況」によって加算されるかどうかが決まります。

70歳までは厚生年金に加入して働くことも可能ですが、在職老齢年金の制度により支給停止される金額は繰り下げしても増額されませんので注意が必要です。

また、正確な年金額については安易な判断はせず、最終的には年金事務所でご自身が試算してもらうようにしましょう。年金事務所では親切に試算してくれるハズです。

繰り下げれば老齢年金の金額は増えますが、トータルで受け取る金額は一定年数受け取り続けなければ、65歳から受け取る金額を逆転しません。老齢年金は長生きに備える保険だということを肝に銘じ、安易な繰り下げは禁物です。よく検討しましょう!

【支出】

リフォームや車購入、子どもの教育資金、結婚資金の援助などの突発的な支出の可能性がないか、また、ご自身やご家族の介護費用についても考慮に入れる必要があるでしょう。

老齢年金の繰り下げは、一度請求すると撤回はできません。繰り下げの時期は慎重に選ぶ必要がありますので、さまざまな選択肢をシミュレーションして検討しましょう。

まとめ

公的年金の受給についても、これだけの留意点があります。早いうちからiDeCoやNISAをはじめとする「自分年金」づくりを目指していきたいものです。若い世代の皆さんは「時間」という大きな武器を持っています。この時間を有効に活用する「自分年金」づくりを心がけましょう。

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