“早期リタイア”「FIRE」の誤解と目指すべき姿

みなさん、こんにちは!「家族信託」に特化した取組を行うディアパートナー行政書士事務所です。
今回は、日本FP協会「FPいまどきウォッチング」に今注目される「早期リタイア:FIRE」の記事が掲載されていましたので、それに関して投稿していきます。(いまどきウォッチング 2022年1月13日)

今、FIRE(ファイア)という言葉がもてはやされています。ところが、日本でブームになっているFIREのイメージは、米国で唱えられているFIREとは少し異なる印象です。改めて本来のFIREの意味を押さえておきましょう。

米国で生まれたFIREとは

改めてFIREの意味をおさらいしましょう。FIREとはFinancial Independence, Retire Earlyの頭文字をとったもので、「経済的な自立を実現し、早期リタイアを目指すムーブメント」を指します。

FIREの原点となったのは、ヴィッキー・ロビンとジョー・ドミンゲスによる著書『Your Money or Your Life』(1992年、日本版『お金か人生か』)でした。この本で「経済的自立を成し遂げるための必要なステップ」が提唱されたのです。

その後、ヤコブ・ルンド・フィスカーが『Early Retirement Extreme』(2010年)で「高い貯蓄率は、従来の貯蓄率と比較してはるかに早い退職を可能にする」という考えをまとめました。

さらに、これらを実践した多くの人がFIREに関するブログや本などを次々と発表、米国では2010年代、まさにムーブメントとなり、1981~96年生まれのミレニアル世代を中心に人気が高まりました。

定番化されているFIREのルールをまとめると、大きく以下のようになります。

(1)貯蓄率を高め、年間支出の25年分を貯蓄し、投資元本とする。

(2)投資元本に対するインフレ調整後の投資利回りを4%以上にする。

(2)は、米国のトリニティ大学の教授たちが研究した「トリニティスタディ」といわれる金融理論を基にしています。

退職後の資産を毎年4%(株式50%、債券50%)売却していけば、高い確率で30年以上資産を維持できるという理論です。つまり、4%以内に支出を抑えれば、資産が維持できるということです。

米国の株式市場がこれまで年間平均7%の成長率を続け、インフレ率が3%であることから、差し引き4%という数字が基準となっているようです。

(1)の「年間支出(生活費)の25倍」というFIREの目標金額も、生活費を投資元本の4%にするためには、いくらの投資元本があればいいか、という「投資元本(100%)÷支出(4%)=25」の計算が根拠となっています。

日本では偏ったイメージが先行

2021年、日本でもこの考え方が話題になり、数々の本や雑誌が出版されました。しかし、1億円の金融資産を持つ人が「億り人」ともてはやされたことや、キリのいい数字でもあるためか、「1億円」という金額や、若い人へのアピールのためか「40歳」というキーワードが強調されています。「1億円の資産を築いて40歳でFIREを実現しよう」という具合です。

内容も積極的な投資を促すものが目立ち、高い収益が見込める株式投資や、不動産投資の実践こそが〇歳でリタイアの夢を実現させる、といった調子です。これだと「〇歳でFIRE実現のためには年10%が必要だから、10%が狙える投資をしよう」という行動につながりかねません。

しかし、特に若いうちにその目標額を達成するには、かなり難易度が高いことはおぼろげながら理解できます。

原点は「経済的自立」が目標

そこで改めて、前述の『お金か人生か』の内容からFIREムーブメントの原点を確認しておきましょう。「自分の人生をコントロールするために、お金に頼る生活からあなたを解放してくれるもの。そのすべてが経済的自立」とし、実現するための9つのステップを提唱しています。

ステップの詳細は割愛しますが、「仕事をするために必要な時間とお金、両面でのコストを計算し、実質時給を計算する」「毎月の支出表を作る」。そのうえで「支出の最小化」(節約や消費行動の見直し)「収入の最大化」(副業など)が推奨されます。

簡易なクロスオーバーポイントの求め方が「25倍」

経済的自立に関する具体的内容はステップ8で出てきます。ここでは、投資収入のラインが支出のラインとクロスするとき(クロスオーバーポイント)、お金のための仕事を続けるかどうか、正式に選択肢になる、としています。

経済的自立に到達するまでに、残りどれくらいの期間働かなければならないのかがおおむね予測できるようになるのです。ただし、このクロスオーバーポイントを見つけるまでのステップは、膨大な作業が必要になります。

便宜的に前述の4%ルールを利用して、「年間支出の25倍の資本を稼いだとき、クロスオーバーポイントに到達する」、と発表したのがFIREムーブメントの著名なブロガー、「ミスター・マネー・マスタッシュ」でした。「25倍が4%の引き出し率を亡くなるまで継続できる地点」としたのです。

ちなみに最後のステップ9では、経済的自立に到達した後の投資にも触れられています。長期的に自分の資金をしっかりと管理するのがポイントで、手数料の安いインデックスファンドが奨励されています。

結局、この本は「経済的自立」を目的にした生き方の提案であり、「早期退職」はその結果の1つにすぎない、ということがわかります。

FIREルールに潜む注意点とは

このように、日本で話題となっているイメージだけでFIREを捉えず、多様な主張を知っておくこと、さらにいくつかの注意点を知ることも必要です。

1つはFIREの基本ルールは米国のインフレ率や株式市場の成長率を基にしており、日本にそのままあてはまらない点です。投資利回り(あるいは引き出し率)はインフレ調整、税引き後の実質利回りであることも重要です。

現在の日本の低いインフレ率や米国とは異なる貯蓄や投資に対しての行動、消費マインド、年金制度なども考慮する必要があります。資産を築くのに人気の高い米国株・米国ETFに投資する場合は、為替リスクも考えなければなりません。

収入に対して貯蓄率50%を推奨している例もあるように、高い貯蓄率への批判もあります。これは高所得者なら可能かもしれませんが、低所得者では達成することは困難です。

高い貯蓄率にこだわるあまり、自己投資や子どもの教育費などを削減することで、長期的に見て、自分の稼ぐ能力が低下する、子どもの成長可能性を狭めてしまう、という懸念もあります。

さらに人生100年と考えれば仮に40歳でリタイアして、60年ほども続く可能性がある点も見逃せません。FIREルールがこの先、長期にわたって有効かはまだ実証できていないのです。会社員・公務員がリタイアする場合、厚生年金の加入期間が短くなるため、将来の年金額が減ることも見過ごせません。

投資におけるリスク許容度が適正かどうかも大切な観点です。投資経験が乏しく、金融リテラシーも十分でないまま、FIRE達成のため貯蓄金額の大半を高リスク商品に投資することは適切とは言えません。

自身のライフプランに基づいた検討を

FIREについて考える場合、まず「そもそもなぜFIREを目指したいのか、FIRE達成後のライフプランをどのように考えているのか」などを明確にする必要があります。さらに、「自分のリスク許容度から適切なアセットアロケーションを検討する」ことや「自身の家計の削減ポイントを見つける」ことなども重要になってきます。

まとめ

「早期リアイア=FIRE」は、「経済的自立」を目的にした豊かな人生、生き方を行うことであり、「早期退職」はその結果の1つにすぎない、ということではないでしょうか。

「早期リアイア=FIRE」とまではいかなくても、若いうちから、将来迎える老後のために「自分年金」作りを検討していくことは、極めて有益なことと考えます。経済的自立も「豊かな人生」を送るための一手段であり、「早期リタイアしてから何に取り組むか」は、自分の人生の大きな課題になると考えます。

豊かな人生を過ごすための「自分年金」、考えてはみませんか。

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