後見制度を利用する際のリスクとは?

 みなさん、こんにちは。認知症対策の強い味方となる”家族信託”を活用した相続対策を専門にしているディアパートナー行政書士事務所 代表の瀧澤です。

 前回のブログでも「後見人の報酬」についてふれましたが、今回は後見制度を利用する際のリスクについてです。(当事務所と業務提携しているトリニティグループのコラムを参考)

後見制度を利用する際はデメリットに要注意

 最近はメディアでも当たり前のように登場するようになった「成年後見制度」ですが、毎年、3万件以上の申立てが家庭裁判所になされています。

 しかし、制度の名前そのものは知られていますが、その実態についての理解はまだまだ専門家や一部の制度利用経験者が把握いしているのみで、一般的にはなっていません。

 実は、成年後見制度にはデメリットも多く、その利用には注意が必要な制度でもあります。今回は、成年後見制度利用時に注意すべきデメリットのうち、特に注意すべき3つのポイントについて解説を行います。具体的な失敗事例のご紹介もいたしますので、成年後見制度利用検討時に参考にしてみてください。

成年後見制度利用の3つのデメリット

 成年後見制度とは、認知症などにより物事を判断する能力を失ってしまった人の生活と財産を保護することを目的として作られた制度です。

 制度の内容は、家庭裁判所が、判断能力のなくなってしまった方の代理人となる人物として、「後見人」を選任し、その後見人を監督することによって、後見を受ける本人の生活と財産を守る、というものです。

 そして、この制度を利用する場合、以下の3つのデメリットを引き受けなければなりません。

【デメリット1】
後見を受けている方の生活や財産に関して裁判所、弁護士、司法書士といった第三者が介入してくる。

【デメリット2】
後見事務の手間が発生する、後見人に対する報酬=費用が発生する。

【デメリット3】
相続税対策や資産運用など、後見を受けている方が所持している財産の変更や活用ができなくなる。

以下、3つのデメリットについて詳しく解説していきます。

(1)デメリット1 後見を受けている方の生活や財産に関して裁判所、弁護士、司法書士といった第三者が介入してくる。

 家庭裁判所により後見人が選任され、後見が開始すると、以後、原則後見を受けている本人が亡くなるまで、本人は後見人の代理を通して法律行為や財産の処分を行うこととなり、後見人も家庭裁判所や後見監督人の監督を受けることとなります。

後見人には誰がなるのか?

 そもそも後見人に誰がなるのか?という問題がありますが、これは一般的には本人の親族または弁護士や司法書士といった専門家が就任します。統計的には、現在、全体の8割は専門家が後見人となっています。

 また、親族が後見人となる場合にも、後見監督人が選任されるケースがあります。後見監督人は後見人の業務を監督する者ですが、この選任は家庭裁判所に一任されており、家庭裁判所が所持している名簿に登載された弁護士や司法書士が選任されることになっています。

 したがって、後見制度を利用する場合には、後見人または後見監督人として弁護士や司法書士といった親族ではない第三者が関与する可能性が高くなっています。

 後見を受ける本人の財産が極めて少ない場合には、親族後見人の選任のみで後見がスタートする場合もありますが、この場合でも後見人は家庭裁判所の監督を受けることとなり、家庭裁判所の関与を回避することは不可能です。

第三者が介入することで発生する問題点

 後見制度の利用するには、本人の財産状況や生活状況(収入と支出)を家庭裁判所にすべて開示しなければならず、その情報は後見人や後見監督人にも共有されます。(正確には、後見人が本人の財産状況を調査し、家庭裁判所に報告します。)

 もちろん、これらの情報が外部に遺漏されることはありませんが、本人の財産状況が家庭裁判所や後見人等に知れてしまうことに抵抗を感じる親族もいるでしょう。

 また、後見を受けている本人とその他の親族が同居している場合には、生活費が一体となっている場合が少なくありません。

 この場合、同居の親族が後見を受けている本人分の生活費を本人の財産から工面する場合にはいちいち後見人に対して領収書を提示して請求しなければなりません。

 この作業は同居の親族にとっては負担となりますし、本人の生活費を通して同居の親族の生活までが後見人に見透かされる感覚に陥り、そこに大きなストレスを感じる方もいます。

 さらに、同居の親族から後見人に対して本人の生活費として支払いを求めたものに関しても、後見人から「本人の生活費と評価できない」「生活に不必要な費用なので請求には応じられない」といった対応をされてしまうことも考えられます。

 このような事態になってしまうと、同居の親族は経済的に厳しい立場に立たされるだけでなく、自らを否定された気持ちになり、精神的にも追い込まれてしまうこととなります。

(2)デメリット2 後見事務の手間が発生する、後見人に対する報酬=費用が発生する。

 後見人はその職務として、後見を受けている本人の法律行為を代理し、財産を管理します。

 また、後見開始直後および、その後最低1年に1回のペースで、家庭裁判所に対して後見を受けている本人の財産状況(収入と支出を含む)を文書にして提出しなければなりません。

 すなわち、この1年に1度の家庭裁判所への報告のために、常に本人の生活状況などに関して領収書などの記録を保管しておかなければならないのです。このような作業を一般の方が継続的に行うのは、相当な負担になります。

 また、弁護士や司法書士といった専門家が後見人となる場合や後見監督人が選任された場合には、これらの方に対して報酬を支払わなければなりません。

 支払いは後見を受けている本人の財産からされることになりますが、後見制度を利用しなければ支払う必要がなかったお金の支払いが必要になることに変わりはありません。

(3)デメリット3 相続税対策や資産運用など、後見を受けている方が所持している財産の変更や活用ができなくなる。

 後見が開始すると、後見を受ける本人の財産や生活に関して、家庭裁判所の監督を受けることになります。

 そして、家庭裁判所は 「本人の財産保護の観点」のみからその監督を行います。そのため、後見が開始すると以下のよう問題が発生します。

①同居の親族と共同生活をしている場合でも生活費の負担割合を明確にしなければならない。
②本人の財産を他の親族の利益のために使用・活用することができない。
③不動産投資や株式投資など、積極的な資産運用ができなくなる。
④相続税対策としての不動産購入や保険の加入などができなくなる。
⑤同居の親族と共同生活をしている場合でも生活費の負担割合を明確にしなければならない。

 通常、同居している親族の生活費の負担を各人が明確に分けていることは少なく、その負担割合の内訳は曖昧になっていたり、誰か一人がまとめて負担していることがほとんどです。

 そして、生活の柱となる収入を得ていたのが後見を受ける本人であった場合、問題になることが少なくありません。

 すなわち、後見開始後は、原則本人の財産は本人のためにしか使用できませんから、本人の収入により生活を賄っていたほかの親族は後見開始以後は自らの収入あるいは後見を受けている本人以外のものの収入に頼る必要が出てきます。

 その結果、生活水準を落とさざるを得なくなり、同居の親族が大きなストレスに苛まれるというケースが発生しがちです。

 ちなみに、同居の親族に収入を得る力が全くなく、かつ、後見を受ける本人がその者を養うだけの収入を得ていて、かつ、現に後見開始前からその者を養っていた場合には、後見開始後もその親族に関する生活費を本人の財産から負担して問題ないものと考えられます。

 また、後見を受けている方に扶養義務がある場合にも、その義務の範囲内での親族の生活費の負担は問題ありません。ただし、その金額は「相当の範囲」に制限されますので、これまで通りの生活が維持できるとは限りません。

本人の財産を他の親族の利益のために使用・活用することができない

 後見制度の趣旨は後見を受けている本人の、「本人のための」財産保護であるため、本人の利益にならないことに本人の財産をしようすることはできません。

 したがって、本人が潤沢な財産を持っていたとしても、その財産を活用して親族のために活用することは原則許されません。

 例えば、本人が親族のために不動産を購入しようとしていたり、保険に加入しようとして手続きをしている最中に認知症にり患し、後見制度の利用を開始した場合には、途中になっていた手続きを再開することはできず、その実現はあきらめるしかありません。

不動産投資や株式投資など、積極的な資産運用ができなくなる

 資産が潤沢にある方は、その資産を活用してさらに資産を大きくしていく、いわゆる「資産運用」を行っているケースも多いです。

 不動産や有価証券などの資産を保有、運用している場合には、社会情勢や物件・銘柄情報などを注視し、しかるべきタイミングで不動産や有価証券の購入・売却をしていく必要があります。

 そして、これらの資産運用は、資産価値の下落や資産の購入・売却のタイミングを誤ることによる損失の発生といった、資産減少のリスクを孕みます。

 後見制度は後見を受ける本人の財産の「保護」を目的としていますので、原則、後見人は本人の資産の積極的な運用はできる限り控え、預金など、少なくとも元本が減少するリスクのない形で資産を保持する必要があります。

 したがって、後見開始後は上記のようないわゆる資産運用はできなくなり、また、すでに収益目的で所持している不動産や有価証券は徐々に現金などに換価されていくことになります。

相続税対策としての不動産購入や保険の加入などができなくなる

 上の資産運用と同様に、本人の直接の利益とならないという理由で、相続税対策も行うことができなくなります。

 相続税はその対策の有無で金額に大きな違いが発生する場合もあるため、相続税対策が未了の場合には後見制度の利用を開始するか慎重に検討する必要があります。

失敗事例の紹介

 以上のデメリットをご理解いただければ、後見制度の利用で失敗する、というケースが想定されることは想像にたやすいと思います。以下、実際にあった後見制度利用の失敗事例についてご紹介いたします。

(1)失敗事例1 専門家後見人と同居の親族の関係がうまくいかず、同居の親族が疲弊しきってしまった事例

 90代の母を60代の娘とその夫が同居して介護する、所謂老々介護の家庭で、娘が母親の後見開始の申立てをしたところ、娘の兄弟が候補者(申立をした娘本人)について反対の意を表したため、家庭裁判所によって弁護士が後見人に選任されました。

 後見開始後も、生活状況は従前と変えず、娘夫婦が同居して母の面倒を見ながら、母の生活費に関しては後見人に領収書を提出して清算するという形で生活をしていくこととなりました。

 しかし、後見が開始してからしばらくして、問題が発生しました。

 同居の親族が本人の生活費として後見人に清算を依頼した費用の支払いを、後見人からなかなか認めてもらえなくなったのです。

 それどころか、清算に関して後見人に問い合わせの電話をすると、「横領だ!」「嘘つきだ!」などと罵声を浴びられ、最後には電話を「ガチャン!」と切られれてしまう、という状況になってしまいました。

 仕方なく郵送で領収書などを送っても、封すら開けずに返送されてくる始末。

 同居の親族は精神的に追い込まれ、また、立て替えている本人の生活費の清算ができないがために経済的にも困窮し、困り果ててしまいました。

 現状、このような状況になってしまった場合の有効な解決策は実質的には存在しません。

 後見人に問題がある場合には、利害関係人は後見人の解任を裁判所に申し立てることができますが、その理由には後見人が本人の財産を横領した、というような法的な責任と損害が発生していることが必要で、後見人と同居の親族がうまくコミュニケーションが取れないだとか、相性が悪い、という理由では後見人が解任されることはありません。

 実際、本件でも娘が家庭裁判所に対して後見人の解任の申立てをしましたが、却下されてしまいました。

 この事例の問題点は2つあります。

 1つ目は、後見の必要性について検討を尽くしていないこと。

 本件では、本人が高齢で何かと不便なので…というあいまいな理由で後見開始の申立てがなされていました。

 確かに、認知症になってしまうと銀行でまとまった金額が下ろせないなどの不便が生じますが、これらの問題は必ずしも後見制度の利用によってしか解決できないものではありません。

 本当に後見が必須かどうか、検討を尽くすことは非常に重要です。

 そして問題の2つ目。

 候補者の選任可能性について楽観的に考えすぎてしまった点。

 昨今では、候補者となった親族が単独で後見人に選任されるほうが稀といえるくらい、監督人や専門家後見人が選任されるケースが増加しています。

 また、親族の中に特定の親族を後見人にすることに反対しているものがいる場合には、その特定の親族が後見人に選任されることはまずありません。

 後見制度を利用する際には、この前提を踏まえたうえで、候補者の検討をする必要があります。

 それを怠ると、予想外の親族の反対により全く面識のない専門家が後見人に就任してしまうという事態を招きます。

(2)失敗事例2 後見人候補者の選任可能性を吟味せずに後見開始の申立てをしてしまった事例

 後見開始の申立てをする際には、後見人としたい方を「候補者」として裁判所に申し立てることが可能です。

 しかし、候補者として掲げれば誰もが選任されるわけではありません。

 現在、候補者として掲げた場合に選任される後見人は、本人の親族か、弁護士・司法書士といった専門家のみとなっています。

 すなわち、親族以外の第三者を後見人としようとしても、家庭裁判所がその第三者を選任することはありません。

 事例では、そのことを正確に理解していない親族が、普段介護でお世話になっている知人を候補者として後見開始の申立てをしたところ、その知人が専任されずに、見ず知らずの弁護士が選任されてしまいました。

 申立をしたきっかけは病院から契約のために必要といわれたためでしたので、申し立てをすること自体はやむを得ないケースでしたが、第三者が後見人に選任されないことを知っていれば、親族や面識のある専門家の中から候補者を検討するという道もあったでしょう。

判断を誤らないために=本当に後見制度の利用が必須か検討する

 後見制度の利用は、裁判所の監督が開始する、後見人として司法書士や弁護士といった第三者が本人の生活に介入する可能性が高い、本人が意思能力を回復するか死亡するまで終了することができない、といった様々な制約を伴います。

 これらの制約に対応することは、親族としても負担になる可能性が考えられますので、後見制度利用の検討にあたっては、どのように利用するか?を考える前に、「本当に利用することが必要か?」を今一度よく検討してみるほうが良いでしょう。

 判断が難しい場合には、利用が必要かどうかも含めて司法書士や弁護士、行政書士などの専門家に相談してみることをお勧めします。

そもそもの認知症り患リスクに対する準備、対策を怠らない

 後見制度利用者の7割近くが、認知症を理由に成年後見制度の利用を開始しています。後見制度利用の動機としてもっとも多いものは、銀行口座等の解約手続きです。このことから、本人の認知症り患前に取れる対策が見えてきます。

 一つは、家族信託の利用です。

 家族信託を活用すれば、後見制度のような第三者の介入や財産活用上の制限を受けることなく銀行口座やその他財産の管理が可能となります。

 もう一つ、任意後見制度の活用も考えられます。

 任意後見制度とは、本人が元気なうちに任意の方と後見に関する契約を結んでおき、いざ認知症にり患してしまった際には、その契約に基づいて後見が開始するという制度です。

 監督人が必ずついてしまうなど注意点はありますが、認知症になってから後見人をつける法定後見制度よりも後見人の権限などについて柔軟に設定ができるという特徴があります。

まとめ

 認知症のり患は、誰しもが抱えるリスクです。認知症にならなければもちろん素晴らしいことですが、万が一に備えて準備しておくことは重要です。

 今回のブログを参考に、どのような対策が必要か、ぜひ今一度検討をしてみてください。

 そして、認知症対策を検討するなら、一度専門家の無料相談などを活用してみることもおすすめです。(ディアパートナー行政書士事務所では、家族信託の無料相談、セミナーを行っていますので、お気軽にご相談ください。)

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