サラリーマンの副業・兼業と確定申告

 ディアパートナー行政書士/FP事務所 代表の瀧澤です。

 取扱い業務として、「公務員の兼業支援」や「定年退職者向けの起業支援」などのコンサルティングを行っていますので、サラリーマンの副業・兼業と収入の確定申告について考えてみましょう。

 現在、政府による「働き方改革」の一環、そして二地域居住など地域活性化の新しい手法として、サラリーマンの副業・兼業が注目されています。

 また、新型コロナウイルス感染拡大の影響等により、一部の企業では自社の社員に対して副業を完全に認めるケースも出てきています。

 サラリーマンの副業・兼業から生じる所得の区分(主として給与所得や雑所得)やその計算方法などを考察してみます。

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給与所得と雑所得の区別

1.給与所得

(1)給与所得とは

 所得税法によれば、「給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る所得をいう。」とされており、正規社員、非正規社員、パート従業員やアルバイト従業員などが勤務先から受ける給料、賞与などの所得をいいます。

(2)副業との関係

 サラリーマンの場合、たとえば勤務時間外などにアルバイトを行い、アルバイト先からアルバイト代を受けたケースなどは、そのアルバイト代も「給与所得」として取り扱われます。

(3)必要経費

 「給与所得」の金額の計算は次によります。

給与所得の金額=給与等の収入金額-給与所得控除額

給与所得には、「必要経費」という概念はなく、収入に応じて一律で定められた「給与所得控除額」が控除されます。「サラリーマンの概算経費」とも呼ばれるもので「実費」を計算することなく自動的に控除されるものです。

 なお、このほかに転居費や研修費など7種類の「特定の支出」をし、一定の条件に当てはまる場合は確定申告を行い「特定支出控除額」を控除することもできます。

2.雑所得

(1)雑所得とは

 所得税法によれば、「雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得をいう。」とされており、上記の9つの所得以外の種々雑多な所得が該当します。

(2)副業との関係

 サラリーマンの場合、たとえば週末などに勤務先の属する業界や関連業種において雇用されずにコンサルティング業務や業界誌の原稿作成を行ったり、FP資格を活かして相談業務を行うなどにより収入を得たケースは「雑所得」とされます。

 ※「営利を目的とした継続的行為」を「業務」といい、これを大規模に行う場合には「事業的規模」となります。「事業的規模」の場合の所得区分は「事業所得」となりますが、サラリーマンの「副業」の場合には通常は「事業的規模以外」と判断され「雑所得」に区分されるものと考えられます。

(3)必要経費

 「雑所得」の金額の計算は次によります。

雑所得の金額※=総収入金額-必要経費  ※公的年金等以外に係る雑所得

 雑所得は「公的年金等に係る雑所得の金額」と「公的年金等以外に係る雑所得の金額」に区分して計算しますが、今回はサラリーマンの副業を想定しているため、公的年金等以外の雑所得を前提にしています。

 雑所得に該当する「副業」では、給与所得の場合と異なり、その副業に必要となった経費について「実費」を計算して控除することになります。

 雑所得の計算上赤字が出た場合には、本業である給与所得との損益通算はできません

 なお、必要経費は「総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額およびその年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額」であり、業務を行うために必要となった費用のみが該当します。いわゆる生活費(家事費など)は除外しなければなりません。

確定申告との関係

1.確定申告の要否

 サラリーマンの場合には、大部分が年末調整により所得税等が精算されるため一般的に所得税の確定申告は不要(※1)です。ただし、副業による収入がある場合には、原則として確定申告が必要となります。

 具体的には、副業による所得の区分が「給与所得」の場合には、副業による給与等の収入金額(いわゆる額面金額)が20万円超(※2)、「雑所得」の場合には副業による雑所得の金額(必要経費控除後の所得金額)が20万円超のときには確定申告が必要となります。

 したがって、これらの金額が20万円以下の場合には確定申告は不要です(住民税については市区町村への申告が必要) 。

※1)給与等の収入金額が2,000万円超の場合には、副業の有無にかかわらず確定申告が必要です。

※2)副業による所得の区分が給与所得のみであれば、副業も含めた給与等の収入金額の合計額から、所得控除の合計額(雑損控除、医療費控除、寄附金控除および基礎控除を除く)を差し引いた残額が150万円以下であれば確定申告は不要です。

2.確定申告をしたほうが良い場合

 「上記1.」で確定申告が必要ない場合でも、確定申告をしたほうが有利になるケースもあります。

 なお、下記に該当する場合であっても、所得税の税率は累進税率となっているため、確定申告することで税率が上がり、結果的に税額が増加するケースもあり得ますので、確定申告の際には還付を受けられるか、計算をしっかりと行う必要があります。

(1)副業による所得の区分が給与所得になる場合

 アルバイトなどの副業を行っている場合には、アルバイト先においても支給されるアルバイト代から「源泉徴収」が行われています。副業の場合は、通常は源泉徴収税額表の「乙欄」の税額が源泉徴収されますが、本業の勤務先からの給与に対する源泉徴収税額に比べて高率になる場合もあるため、確定申告をすることで源泉徴収税額の還付を受けられる場合があります。

(2)副業による所得の区分が雑所得になる場合

 副業による原稿料等などがある場合には雑所得になりますが、原稿料等からは「源泉徴収」が行われていますので、上記(1)と同様に確定申告をすることで源泉徴収税額の還付を受けられる場合があります。

(3)所得控除が多額である場合

 本業による給与所得から控除しきれていない所得控除がある場合には、副業による所得も含めて確定申告することで源泉徴収税額の還付を受けられる場合があります。

 また、年末調整で控除されない雑損控除、医療費控除やふるさと納税(寄附金控除)などの適用を受ける場合には、確定申告をすることになります。その際には、副業による所得も含めて確定申告を行う必要があるため注意が必要です。

確定申告書の記入

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 所得税の「確定申告書」には、AとBの2種類があります。

 確定申告書Bは誰でも使用することができますが、確定申告書Aは、確定申告する所得が「給与所得」や「雑所得」「配当所得」「一時所得」の4つの所得だけの場合に使用できます。

 副業の所得が給与所得または雑所得の場合には確定申告書Aの方が項目が少ないため、使用しやすいでしょう。

スマートフォン等での確定申告の方法

 2019年1月よりスマートフォンやタブレット端末を利用し、事前に取得したIDとパスワードによる電子的な確定申告(ID・パスワード方式)ができるようになりました。従来はマイナンバーカードやICカードリーダライタの購入が必要でしたので、この点については利便性が高まりました。

 ただし、利用には事前準備が必要になること、マイナンバーカードやICカードリーダライタが普及するまでの暫定措置であることなどに注意が必要です。なお、国税庁は「ID・パスワード方式」と同時に設定された「マイナンバーカード方式」を推奨していますが、この方式ではマイナンバーカードの交付・受領やICカードリーダライタの購入が必要です。

 なお、2019年分の確定申告から、2か所以上の給与所得がある方、年金収入や副業等の雑所得がある方など、スマホ専用画面を利用できる対象範囲が広がり、スマートフォン等で確定申告がしやすくなっています。

雑所得の金額計算等に関する改正

 2022年1月以後、雑所得の計算等に関して改正が行われます。前々年分の公的年金等以外に係る雑所得の総収入金額(必要経費控除前の金額)に応じて、「現金主義」の適用容認、「保存書類」の明確化および「添付書類」の拡大が行われます。まだ先の話ではありますが、2020年分の雑所得の収入金額から計算の参照基準となるため、以下の表で確認をしておきます。

雑所得の金額計算等の改正事項(2022年1月以降)

前々年の雑所得の総収入金額改正事項
300万円以下「現金主義による所得計算の特例」の適用容認
300万円超「現金預金取引等関係書類」の翌年以降5年間の保存義務
1,000万円超「雑所得の総収入金額および必要経費の内容を記載した書類」の添付義務

 「現金主義」とは、現金の収入があった時点で売上に計上するという考え方です。たとえば副業のFP相談業務を2020年中に完了し、報酬の入金が2021年中であった場合には、その業務に係る雑所得の金額の計算上、その報酬は原則として2020年分の総収入金額に含めなければなりませんが、現金主義特例を適用した場合には入金があった2021年分の総収入金額に含めることができます。

 サラリーマンの副業以外にも、副業で経験を積んだのちに独立して個人事業主等になる場合も増えてきているようです。

 「兼業」、「起業」のどちらでも「確定申告に関する知識」は必要になってきます。

 サラリーマンの間は「副業・兼業」ですが、誰しもいつかはサラリーマンを卒業する時期が来るはずです。

 「副業・兼業」の延長線上に、どのような形での「働き方」、「生き方」を自分が求めているのか、それをしっかりと考えながら進めていければ良いと思います。

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参考出典:日本FP協会「いまどきウォッチング」

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