コロナ禍で移住や二地域居住は進んだか?

 ディアパートナー行政書士/FP事務所 代表の瀧澤です。

 新型コロナウイルスの感染症拡大を機に改めて脚光を浴びる地方移住や二地域居住/二拠点居住(デュアルライフ)ですが、更には定住する拠点をもたない住まい方など、「住」に関する選択肢が広がりを見せています。

 地方移住、二地域居住(二拠点居住)など、新しい生活様式で変わる「住まい方」とそれに関連した動きを見ていきましょう。

大都市圏近郊への移住が増加

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 総務省統計局がまとめた2020年の「住民基本台帳人口移動報告」によると、東京都から転出した人は前年に比べ4.7%増加し、転入した人は7.3%減少しました。久しく東京一極集中が言われてきましたが、新型コロナウイルスの感染症拡大を機に、その流れに変化が見られます。

住民基本台帳人口移動報告 2020年(令和2年)【総務省統計局】

 東京から転出した人は東京の近隣県、都心から50~100キロ圏内に移り住んでいる傾向が見られます。なお、同じ東京都内でも奥多摩町や檜原村などの多摩西部では、ほかの自治体からの移動などによる「社会増減」の要因でみると、人口が増えています。

 また、国土交通省が発表した2021年1月1日時点の公示地価を見ると、多くの地点の地価が下落する中で、軽井沢町をはじめ熱海市、宇都宮市、高崎市など新幹線による「交通アクセスの良い地域」が上昇しており、二極化の傾向が見られます。

住民基本台帳人口移動報告 2020年(令和2年)【総務省統計局】

 テレワークや在宅勤務の広がりで、通勤の利便性をこれまでほど重視しない人が増加したことが影響しているようです。

 満員電車での通勤を避け、テレワークも可能な、都心に比べゆったりとした間取りに住む。あるいは拠点とする。そうした生活スタイルは新型コロナウイルスの感染症予防に有効な「新しい生活様式」にもマッチします。

 都心への交通アクセスも比較的良く、必要なときは会社への出勤も可能なことが人気のポイントです。

首都圏近郊自治体も積極アピール

 これまでにも人口減対策として住居費の安さや「ゆとり」を売りにし、移住促進に取り組んできた首都圏近郊の自治体の多くは、この流れを好機ととらえ、様々な施策でニーズに応えようとしています。

住民基本台帳人口移動報告 2020年(令和2年)【総務省統計局】

 東京都心から電車で1時間半ほどの埼玉県小川町では、通勤電車の指定席代を助成する制度、さらにコワーキングスペースを提供するなどで、テレワークをする移住者にアピールし、2020年4~9月の移住希望件数は前年同期に比べて4割近く増加しました。

 茨城県日立市では「ひたちテレワーク移住促進助成事業」を実施。東京23区内から移住して住宅を取得する場合、移住支援金と合わせて最大251万5,000円を助成しています。助成制度には市内のコワーキングスペースなどの支払いに利用できる10万円分の「ひたちテレワーク応援チケット」も含まれ、フリーランスも事業の対象にするなど、きめ細かい支援で「テレワーク移住」の受け皿を担います。さらに「移住支援金」の対象は2020年までに市へふるさと納税をした人など、幅広く設定して申請のハードルを下げています。

移住者求め自治体も知恵比べ

 今後、移住者を呼び込んでいくには各自治体がどんな支援策を打ち出しているか、その戦略がより重要になりそうです。

 従来から地方移住の住まいの受け皿として「空き家バンク」を開設している自治体も少なくありません。もともと移住先の住まいとして選ばれる空き家は供給不足ぎみでした。移住地として人気が高い長野県では、県内の各自治体が空き家バンク事業をてこ入れ、補助金を拡充して空き家を開拓する動きを加速化させています。

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 私の実家も長野県の山間農村地域にあり、2016年に両親が相次いで亡くなり、空き家になっていました。毎週、休日を利用して草取りや庭木の剪定、掃除などを行っていましたが、やはり住んでいないと家の傷み具合が進むのが目に見えてわかりました。

 それに、毎週末に実家にいくので、光熱水費や電話などはそのまま使えるようにしていましたので、それらの基本料金もかかり、維持管理には手間だけではなく、相当なお金もかかっていました。

 そんな折、知り合いの宅地建物取引士さんから「空き家バンクを使っての実家の賃貸借」を提案されました。しかしながら、実家は農家であり、農作業用機械や備品がたくさんあって、その処理(片付)が大変だという話をしたところ、空き家の片付専門業者の活用を教えられました。しかも、市町村の空家バンクを利用して賃貸借すると、家の片付費用が最大で20万円、補助金として交付される制度がありましたので利用することとしました。

 結局、片付にかかった費用は95万円になりましたが、市町村から20万円の補助金交付がありましたので、75万円の投資で実家の賃貸借に結びつきました。借り手側も、住宅改修に最大100万円までの補助金制度が使えるので、借り手側にもメリットがあります。

 実際、市町村の空家バンク情報て「賃貸」を募ったところ、1日で3組の申込みがあり、意外に人気があるのがわかりました。現在、借りていただいている方にお聞きすると、空き家自体は多いが、片付けて賃貸に出す物件数は少ないので、人気になるとのことでした。

 保育園・小学校に通う子供さんのいる家族にお貸しできたので、子供が少ない集落(地域)も少し賑やかになったのではないかと思います。空家のままですと、治安や環境面にも悪影響を与えますので、あの時、「実家の片付け」を決断出来て、本当に良かったと思います。(この件については、画像なども残してありますので、後日、詳しく投稿したいと思います。)

 さて、話を長野県から全国に戻しますね~。

 東京都奥多摩町では2020年度から「0円空家バンク」を開始しています。年齢要件や定住要件に合わず、通常の空き家バンクを活用できない移住希望者や、アトリエ、倉庫、別荘用の物件を探している人も利用できる点が通常の空き家バンクとの違いです。リフォーム費用は自己負担ですが、名前のとおり土地と建物は無償で手に入るとあって、登録物件はすぐに成約となる人気ぶりです。

 一方、多くの自治体が子育てをする若い世代をターゲットに移住促進に力を入れる中、高齢者の移住に取り組むのが秋田県で、秋田県内の経済界が音頭をとり高齢者地方移住推進協議会を設立しました。

 東京都の高齢者は300万人以上と推定されます。そこで、介護施設の不足が深刻化している東京都の自治体に働きかけ、秋田県内に特別養護老人ホームを設置してもらう構想です。政府は米国で普及しているような退職者継続介護コミュニティ、いわゆる日本版CCRC構想を提唱しており、秋田県のこの取り組みも元気な高齢者に地方に移住してもらうことを狙ったものです。

国も「地域おこし協力隊」で移住を後押し

 国も移住をさらに後押しします。総務省は都市部から地方に移り住んで地域を振興する「地域おこし協力隊」制度を拡充します。

 「地域おこし協力隊」は、1~3年程度、都市圏から地方に移り住んで地域振興の担い手になってもらうための事業としてスタート。各自治体が新たな特産品づくりや地元商店街の活性化などのテーマを設定し、参加者を募ってきました。人件費などの経費は国が補助、2019年度は約5,000人が参加しています。

 これまでも2泊3日の短期の設定で地域おこし協力隊の仕事を体験できる制度はありましたが、2021年度から新たに実際の地方生活や隊員としての活動がより具体的にイメージできるように「2週間~3カ月」間のプログラムを加えます。参加者がより長く滞在して地方生活を経験してもらい、移住者の増加につなげるのが狙いです。

 任期終了後の隊員が定住するための、空き家の改修費用を補助する制度の新設も予定されており、2024年度には隊員数を8,000人にまで増やす目標です。

ホテルでの長期滞在という新しい選択肢

 一方、購入や賃貸ではない、新たな住まい方もじわじわと広がってきました。その1つが新型コロナウイルス感染症拡大の影響で宿泊客の減少に悩むホテルが相次いで開始した長期滞在サービスです。帝国ホテル東京やホテルニューオータニといった有名ホテルが長期滞在プランを開始したところ、高額にもかかわらず即完売となり、話題になりました。

 一般的なサービスでは、20~30代の一人暮らしをターゲットにしたホテルの長期滞在プランも人気です。定額制のホテル長期滞在プランを扱う予約サイト「goodroom(グッドルーム)」の「ホテルパス」では、全国約300の宿泊施設と提携し、予約を受け付けています。

 宿泊客は基本料(月額69,800円~)と水道光熱費1日300円などを運営会社に支払えば希望する宿泊施設を利用できる仕組みで、月8~9万円程度で利用できるホテルが人気で、住民票登録できる宿泊施設も用意されています。利用者からは「賃貸に住むよりも家賃、光熱費、通信費などを合わせた生活費全体の負担が軽い」という声があるそうです。

 しかし、こうしたホテルに長期滞在するという住まい方は、

・住民票を置く拠点をすでに持っている人が別荘的に利用する

・実家などに住民票を置くことができる人が第二の住まいとして利用する

・短期的な「つなぎ」として利用する

などが現実的な利用法になるでしょう。ホテルを移ることも考えられるため、荷物を減らすなどの行動変容も必須となります。さらに将来、ホテル需要が戻ってきたときにどうなるかは不透明です。

新型コロナ収束後も柔軟な住まい方は一部定着か

 コロナ禍で一気に需要が増した地方移住や二地域居住(二拠点居住)、宿泊施設での長期滞在が「住まい方」の新たな選択肢になるかは新型コロナウイルス感染症の収束次第といえるでしょう。

 しかし、「新しい生活様式」がある程度定着してきたり、「働き方改革」によりテレワークが進展してくれば、このような柔軟な「住まい方」へのニーズは若い世代を中心に継続するのではないでしょうか。

 また、各自治体も地域振興の観点から、ワーケーション、リゾートワークの推進に積極的に取り組んでいくものの考えられます。

 長野県では、ワーケーション、リゾートワーク推進の観点から、テレワークを普段のオフィスや自宅ではなく、信州ならではの魅力に触れながら行う「信州リゾートテレワーク」という新たなライフスタイルを提案しています。

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 非日常空間でいつもの仕事をする。そこに新たな価値が生まれます。日本の各地リゾート地(観光地)でも誘客活動が盛んになりつつある「ワーケーション」、「リゾートワーク」ですが、地域活性化のひとつ、観光振興の大きな柱になるかもしれません。

 後日、「信州リゾートテレワーク」を詳しく説明しながら、地域振興としての「ワーケーション」、「リゾートワーク」について、考察してみたいと思いますのでお楽しみに!

参考出典:日本FP協会「いまどきウォッチング」

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