「所有者不明土地」法改正で解消する?

みなさん、こんにちは。認知症対策の強い味方となる”家族信託”を活用した相続対策を専門にしているディアパートナー行政書士事務所 代表の瀧澤です。

今回は、日本FP協会「いまどきウォッチング 2021年10月28日更新」から、相続などで発生した「所有者不明土地」についてです。

人口減少や少子高齢化、都市部への人口流入に伴う地方を中心とする過疎化などに伴い、所有者がわからないまま放置されている土地(所有者不明土地)の増加が大きな問題となっています。

こうした所有者不明土地は公共事業や再開発の妨げにつながることから、解消に向けた関連法が2021年4月21日に成立しました。

「民法等の一部を改正する法律」(民法等に後述の「不動産登記法」が含まれる)及び「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(以下「相続土地国庫帰属法」)です。これら法律の成立は、東日本大震災の復興工事で顕在化してきた問題から端を発しているようです。

このふたつの法律は、所有者不明土地の「発生の予防」と既存の該当土地の「利用の円滑化」の両面から民事基本法制を見直すものです。

今回は「発生の予防」に的を絞り、法改正の内容と新たに創設された法制度について解説していきます。

九州より広い約410万haもの所有者不明土地

所有者不明土地とは、不動産登記簿や固定資産課税台帳から所有者が直ちに判明しない土地、所有者が判明しても、その所在(転出先や転居先)が不明で連絡がつかない土地を指します。

2016年の調査では、全国の所有者不明率は約2割、合計面積は九州(約368万ha)より広い約410万haに相当し、その原因として相続登記の未了が66.7%、住所変更登記の未了が32.4%となっています(所有者不明土地問題研究会・一般財団法人国土計画協会)。

背景としては前述したような人口動態の問題に加え、

①相続登記の申請が義務ではなく、申請しなくても不利益を被ることが少ない、

②現役世代の都市部への流出増加により、地方に残された土地への所有意識が希薄化し土地を利用したいというニーズが低下している、

③こうした理由から遺産分割をしないまま相続がくり返され、土地共有者が多数にふくらんでいる、

といったことが挙げられます。

その結果、所有者の探索の必要に迫られても多大なコストがかかる、土地の管理・利用のための合意形成が困難といった問題が発生しており、公共事業や復旧・復興事業が進まない、土地が管理不全化し隣接する土地への悪影響が及んでいるといった社会問題にまで発展。高齢化の進展により、今後、ますます問題が深刻化するリスクが指摘されていました。

その防止策として不動産登記法が改正され、新法として相続土地国庫帰属法が制定されました。

不動産登記法の改正により相続登記の申請が義務化

不動産登記法の改正ポイントは大きく2つあります。

1つ目が登記を促すための「相続登記申請の義務化」です。

不動産を取得した相続人に対し、相続の開始と不動産の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をすることを義務づけるもので、正当な理由のない申請漏れについては過料が科されます。

また、相続登記の申請義務の実効性を確保するべく、登記の手続き負担や費用負担の軽減、申告漏れの防止、地方公共団体と連携した相続登記の必要性に関する周知・啓発の要請といった環境整備策も併せて導入されます。

さらに登記名義人の死亡等の事実の公示についても、登記官が住基ネット(住民基本台帳ネットワークシステム)などの他の公的機関から死亡等の情報を取得し、職権でその旨を示す符号を登記に表示できるようになります。

2つ目が「住所変更未登記への対応」です。

現在、住所変更登記は義務化されておらず、個人・法人問わず、転居・本店移転等にまつわる登記についてはその負担感から放置されがちでした。

改正後は所有権の登記名義人に対し、住所等の変更日から2年以内に変更登記の申請が義務づけられ、正当な理由のない申請漏れには過料が科されます。

また、個人の場合は住基ネット、法人の場合は商業・法人登記システムから取得した情報に基づき、登記官が職権で変更登記ができる方策も導入されます。

相続等により取得した土地所有権の国庫帰属が可能に

新たに創設された「相続土地国庫帰属法」は、冒頭でも触れたように相続等により取得した土地所有権を国庫に帰属させることを可能とする制度になります。

相続または遺贈(相続人に対する遺贈に限る)により土地を取得した者が承認申請を行い、法務大臣による要件審査を経て、国庫帰属が承認されます。

ただし、建物が存在する土地、担保権が設定されている土地、土壌汚染がある土地、境界に争いがある土地などについては承認申請の却下要件に該当し、申請不可となります。

申請が認められた場合でも、通常の管理または処分にあたり過分の費用や労力を要する土地(通常の管理または処分が阻害される工作物があるなど)に該当しないなどの一定の承認要件が設定され、法務大臣が審査を行うこととなります。

また、承認申請をする際には手数料を納付しなければなりません。

承認された際には、土地の種目に応じた標準的な管理費用を考慮した10年分の土地管理費相当額の負担金が徴収されます(詳細は政令で規定)。

施行日は、原則として公布後2年以内の政令で定める日、相続登記の申請の義務化関係の改正については公布後3年以内の政令で定める日、住所等変更登記の申請の義務化関係の改正については公布後5年以内の政令で定める日とされています。

ただし、現在発生している所有者不明土地問題発生の要因を防ぐ観点からも、施行日前に相続の開始・住所等変更が発生した場合にも登記申請の義務化は適用されますので注意が必要です。

土地の利活用促進や相続の負担軽減の実現に期待

こうした関連法により、特に所有者不明土地が増加傾向にあった地方で、復興事業や土地の再開発などの妨げとなる問題の解決につながり、休眠状態だった土地の利活用が促進されることが期待できます。

望まない土地相続により管理の手間や固定資産税の負担を感じていた個人にとっても、土地所有にまつわる問題解消につながりそうです。

とはいえ、相続等により取得した土地所有権の国庫帰属は、なかなかハードルが高そうです。土地の有効活用に結び付いていけば良いのですが、人口減少を迎える我が国ですので、それもなかなか難しそうです。

今後、少子高齢化のさらなる進行により、相続にまつわる諸問題発生が増加し、流動性が低い土地の処分について課題を抱える人が増えていくことが大いに予想されます。

地域の活性化を図りつつ、なんとか土地の有効活用に結び付けていければ良いのですが。そうなることを願わずにはいられません。

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