年金額2年連続で抑制 目減りの防衛策は?
みなさん、こんにちは!「家族信託」や「遺言書」など生前の相続対策に特化した取組を行うディアパートナー行政書士事務所です。
老後の主な収入源である公的年金が、マクロ経済スライドの2年連続の発動で2024年度も年金額は実質で目減りする見通しのようです。
日本経済新聞電子版(2023年11月16日付)日経スクープの記事から、公的年金の目減りに対応する方法について考えていきます。
マクロ経済スライドが2年連続で発動
2024年度の公的年金の支給額は2年連続で引き上げ改定となる見通しです。しかし、給付を抑制する「マクロ経済スライド」が発動されるため、実質では目減りすることになります。
「マクロ経済スライド」の発動は2年連続で、試算では前年比2.6%ほど増えそうだということです。給付抑制は年金財政の安定に欠かせないものの、年金財政の健全化にはほど遠い感があります。
公的年金は物価や賃金が伸びれば、高齢世代の購買力を維持するために原則として支給額は増えます。世代間の年代構成のアンバランスにより、年金受給者が増え、年金を支える現役世代が減ると年金財政は悪化するため、年金支給額の増額幅を物価や賃金の伸びより小さくするマクロ経済スライドが2004年度に導入されました。
しかし、2004年に「マクロ経済スライド」を導入して以降、発動は4回に留まります。年金の減り過ぎを恐れた政府は、デフレ下では発動しないとの原則を盾に実施を見送るケースが多発しました。
2024年度については、物価や賃金が上がっているのを踏まえ、政府は「マクロ経済スライド」制度を発動する方針だということです。
足元の動向を踏まえて、2024年度の公的年金支給水準をニッセイ基礎研究所の中嶋邦夫さんが試算しました。
2023年度は計算方式の関係で68歳以上と67歳以下で増額幅が異なっていましたが、今回2024年度は同じ2.6%増という試算になりました。
抑制がかかる前の本来の改定率は物価変動率と名目手取り賃金変動率をもとに計算します。この試算では2023年通年の物価変動率を3.1%、名目手取り賃金変動率を3.0%、マクロ経済スライドによる調整率を0.4%と設定しました。改定率は3.0%から調整率0.4%を引いて計算しています。
厚生年金のモデルケースでは年1万円強の実質減に
厚生年金のモデルケース(67歳以下の夫婦2人の場合、月22万4482円)に改定率を当てはめてみると2024年度の支給額は23万319円になります。マクロ経済スライドを適用することで年1万770円程度、給付を抑える計算になります。
給付抑制は物価上昇や賃金増で2027年度まで続く見通し
ニッセイ基礎研究所の中嶋邦夫さんの試算では足元の物価上昇や賃金増が今後も続くと見込み、2027年度支給分まではマクロ経済スライドによる給付抑制が続くとしました。
この試算によれば、支給額は毎年増えていくものの、物価上昇率に比べると0.8〜1.0ポイント目減りする計算になります。
厚生労働省は2024年1月に2024年度の年金改定額を公表する方向です。
当初のマクロ経済スライドのねらいは?
マクロ経済スライドは年金財政を維持する柱となる仕組みです。公的年金の保険料は現役世代の負担に歯止めをかけるため上限が固定されています。その範囲内で支給を賄うためには給付を少しずつ削っていく必要がありました。
前述していますが、それにもかかわらずデフレ下では発動できないルールが維持されつづけ、実際の適用は2015年度と2019〜2020年度、2023年度の4回にとどまっています。年金給付を抑制しきれず、この20年ほどにわたって年金を「払いすぎる」状態が続いてきています。
仕組み上、この払いすぎた年金は将来世代の給付を抑えることで帳尻を合わせる必要がでてきます。2004年の見通しでは給付の調整は2023年度に終了する予定でしたが、今は基礎年金で2046年度まで抑制が続くことになります。結果として年金の目減りが長引き、給付水準も下がる見通しです。
厚労省は現在、2025年に予定する次期制度改正に向けて厚生年金から基礎年金への拠出を増やし、年金の目減りを2033年度に前倒しして終わらせる案を検討しています。
それとともに、基礎年金の給付水準を底上げするために保険料を納める期間を5年間延ばし、45年間(20~65歳)とする検討も進めています。
年金財政の立て直しと給付水準の低下抑制を同時に進めるためには、マクロ経済スライドを毎年発動できるようにルールを改めるべきだと指摘する意見が多いということですが、公的年金が実質だけでなく名目額でも減るため、政府は検討に及び腰です。
年金の支給開始年齢の引き上げは検討項目になし
前述している2025年に予定する次期制度改正で議論する16項目の中には「年金の支給開始年齢の引き上げ」は含まれていません。海外で進む「支給開始年齢引き上げ」などから、日本でも以前からに「支給開始年齢の引き上げ」が噂されていましたが、現段階では議論することはないようです。
海外の例によれば、フランスでは62歳から64歳に、イギリスでも66歳から67歳に支給開始年齢が引き上げられるようです。
防衛策は長く働き続けること?
公的年金支給額の実質目減りへの防衛策は、やはり、健康で過ごし、少しでも「長く働き続ける」ことでしょうか。働き続けることにより収入が得られ、目減り分を穴埋めすることができそうです。
また、可能であれば、会社などで働いて「厚生年金に加入し続ける」ことが「公的年金支給額の実質目減りへの防衛策」としては一番オススメかもしれません。
現在、厚生年金の加入期間は最長で70歳までとなっています。基本的に年金を受給できる65歳に達した場合に、会社勤めを70歳まで続けて厚生年金に加入し続けた場合は、公的年金を受給しながら厚生年金保険料も納めることになります。
厚生年金保険に加入した期間は、在職定時改定・退職改定により年金額の計算の基礎となる被保険者期間に追加され、受け取る年金支給額が増えます。
この増えた支給額で「目減り分を穴埋め」するのが、現時点においては一番の最適解ではないかと考えています。一人合同会社の私も、70歳まで働き続け、少額ながらも厚生年金掛金を掛け続けたいと思います。
公的年金支給額の実質目減りの対策は、人それぞれの環境によって変わると思いますが、何らかの手立てを考えておくことは必要かなと考えます。アナタはどういった手立てをしますか。