新NISAスタートと生命保険の関係性は?
みなさん、こんにちは!「家族信託」や「遺言書」など生前の相続対策に特化した取組を行うディアパートナー行政書士事務所です。
先日、私がたびたび受講しているオンラインセミナーで、2024年1月からはじまる「新NISA」と「生命保険」をテーマにした講義が行われており、受講させていただきました。
私のブログでも「新NISAとiDeCo」の関係性については、たびたび取り上げていましたが、「新NISAと生命保険」という一見関係なさそうにみえるものですので興味深く受講しました。
「イギリスのISA」と「日本のNISA」
金融庁のホームページをみるとNISAについて説明している部分に「イギリスのISA(Individual Savings Account=個人貯蓄口座)をモデルにした日本版ISAとして、NISA(ニーサ・Nippon Individual Savings Account)という愛称がついています。」という表記があります。
この表記からもわかるように、日本の NISA は英国の ISA に倣って創設されました。
「株式や投資信託を購入できること」、「配当や分配金、譲渡益などが非課税となること」などが日本の NISA と英国の ISA の共通点です。しかし、英国の ISA では預貯金や公社債も購入できたりするようです。
英国の ISA は、1999 年に、当時の英国の低い貯蓄率を改善するために、株式の非課税投資制度である PEP(Personal Equity Plan:個人持株制度)と非課税預金等の TESSA(Tax Exempt Special Savings Account: 免除特別貯蓄口座制度)を整理・統合して創設されたということです。1999年の制度開始から数度の制度改正を経て現在の形になっています。
現在の英国の ISA は、株式型 ISA と預金型 ISA の 2 種類があり、18 歳以上の英国居住者は、誰でも、株式型 ISA と預金型 ISA のいずれか 1 口座または両方の 2 口座を持つことができます。
「大人」の国内居住者ならだれでも ISA 口座を開設できて、ISA 口座内で購入した上場株式や投資信託などについて、その配当、分配金や譲渡益が非課税となるところが、英国の株式型 ISA と日本の NISA の共通点となります。
ただし、英国の株式型 ISA と日本の NISA で異なる点もいくつかみられます。その1つが運用対象商品です。
日本の NISA で運用対象となる商品は、主に上場株式と公募株式投資信託です。このほか ETF やREIT、新株予約権付社債なども運用対象に含まれますが、公社債や公社債投資信託、預貯金などは対象となっていません。
英国の株式型 ISA では、上場株式の他、投資信託、公社債、保険契約などが運用対象に含まれます。また、他の商品で運用するための待機資金としての位置づけではありますが、預貯金も株式型 ISA で運用できる商品に入っていることが特徴となっています。
イギリスにおけるISAと生命保険の関係は?
さて、ここからが「NISAと生命保険との関係性」について、イギリスの類似制度(ISA)とイギリス国内における生命保険の状況をお伝えする部分となります。
ニッセイ基礎研究所「生命保険が消滅する?低下の一途をたどる英国の生命保険加入率」によれば、イギリスの生命保険の加入率は、ISAがスタートした1999年から右肩下がりで推移しています。
実際には、ISAがスタートする前の段階から右肩下がりで推移しています。イギリスの「生命保険の加入率」ですが、1995~1996年の加入率は64%、1999~2000年の加入率は55%、2006年には39.3%、2013年には24.9%となっています。(この資料では2013年の加入率までしか出ていません)
また、イギリスの「個人年金の加入率」も同様に右肩下がりとなっていて、1995~1996年の加入率は19%、1999~2000年の加入率は16%、2006年には13.2%、2013年には8.7%となっています。
この現象はどう考えればよいのでしょうか。セミナーでは、「生命保険で「保障+資産形成」の両方を担う」というスタイルには限界があるのではないか、ということでした。
たしかに今は、「運用目的」で積立型の生命保険が数多く販売されていましたが、「新NISA」のスタートにより、「運用目的」での積立型生命保険が見直されてしまうのではないかというのです。
これからの生命保険の活用方法は?
では、生命保険は廃れていってしまうのでしょうか。
「生命保険が必要でなくなってしまうのか」というと、そうではなく「生命保険の役割」と「新NISAの役割」がはっきりしてくるということのようです。
セミナーの講師は、これからも必要とされる生命保険は「死亡保障」や「相続の非課税枠(500万円×相続人)」などを挙げ、生命保険活用の用途が明確なものは今後も必要とされ続けると語っていました。
今までの個人保険では、資産形成も視野に入れた「終身保険」+「定期保険」+「医療保険」が王道のようでしたが、これからは、「定期保険」(+医療)となり、資産運用の面では、「新NISA」が活用されるのではないかということです。
大きな期待を集める「新NISA」
現行NISAと同じく新NISAで損失が出ても、課税口座での投資のように、他の商品の利益とNISAの損をぶつけて税金を減らす「損益通算」はできません。課税口座では最長3年間できる「損失の繰越控除」ができないのも同じです。これはNISAが非課税の投資制度だからです。
したがって、NISAでは「利益が出ない限り、非課税のうま味を味わうことはできない」ことになります。であるならば、非課税メリットを最大限に生かすべく、なるべく期待リターンの高い商品に投資した方がいいということになるでしょう。
また運用効率の面からみれば、新NISA制度の活用は、生涯投資枠の1800万円を何十年もかかって埋めるより、なるべく早く埋めるようにした方が有利になります。仮に退職金などまとまった資金が手元にあり、超低金利の預貯金などで遊ばせている場合は、毎月30万円を新NISA口座に移せば最短の5年で1800万円の枠を埋めることが可能となります。
60歳代のシニア世代であっても、平均寿命が90歳近くになろうとしている昨今の状況をみれば、およそ20年間は運用の時間が残されていると考えても良いかもしれません。
世界中の株式市場に影響を与える”投資の神様”といわれている「ウォーレン・バフェットの資産の99%」は60歳以降に形成されたそうです。複利の効果が大きく出ていることはありますが、シニア層でも「新NISA制度」を活用して資産形成する可能性が十分にあるのではないでしょうか。
投入する金額の多い少ないは別としても、大前提は「とりあえず資産形成に向けて早く取り組む」ことではないでしょうか。(ただし投資判断は自己判断でお願いします!)