「新NISAへの対応」どうする?
みなさん、こんにちは!「家族信託」や「遺言書」など生前の相続対策に特化した取組を行うディアパートナー行政書士事務所です。
当職のもとにも「新NISA口座を○○銀行につくった方が良いか」という問い合わせがあるなど、「新NISA」に対する関心も高まりつつあります。
令和5年8月20日付日経ヴェリタス電子版に「新NISAへ年内に金融機関を検討 現行資産はどうする?」と題して、「新NISAへの対応」の考え方が掲載されていましたので、今回は「新NISA」をどう活用していくのかについて考えていきましょう。
新NISAが始まるまでに準備しておくことは?
2024年に新しい少額投資非課税制度(NISA)が始まるのに伴い、現行のNISAで投資できるのは2023年いっぱい、つまり今年12月末日までとなっています。
新NISAには「現行NISA」の資産は引き継がれないので、現行NISAの非課税期間が終わるまでに準備を進めておくことは案外とたくさんあります。面倒がって放置しておくことで思わぬ損失が出るリスクもあります。
「現行NISA→新NISA」への手続きの進め方やコツ、注意点などをみていきましょう。
「金融機関を変える」場合、9月に期限が迫る手続きも
2024年に始まる新NISAでは、現行のNISAの口座を保有する金融機関に新NISA口座が自動で開設されることになっています。
そこで、現行のNISAと同じ金融機関で新NISAを始めるのか、または新NISAの開始を踏まえて他の金融機関に口座を変えるのか、検討する余地があります。
まずは、手続きの流れを確認していきましょう。
NISAではひとつの金融機関で口座を開くことになります。現行のNISAの口座から金融機関を変える必要がないのであれば、特に深く考えることはなさそうです。しかし、現行のNISAの金融機関から別の金融機関へ変えたい場合は、「金融機関を変える」という手続きを進める必要がでてきます。
まず、現行NISAを開設しているものの、今年はその投資枠を使って株式や投資信託などを購入していない人の場合は、2023年のうちに別の金融機関に現行NISAの口座を移すことができますので、2024年1月には新NISA講座が移した金融機関に自動開設されます。現行NISAから別の金融機関の現行NISAへの変更の手続きは9月中が期限となっているため、早めの着手が必要です。
また、今年既に投資枠を使って株式や投資信託などを購入した人の場合は、現行NISAの口座を変更することができません。そうした場合は、10月以降に別の金融機関への変更手続きを行うことで、2024年に変更先の金融機関で新NISAの口座を開設することができます。
「金融機関のNISA口座の変更」を考えるのは、資産の投資・運用方針を見直したい人が中心になるものと考えられます。例えば銀行や大手証券会社から、投資信託の取扱商品数の多いネット証券に変えたいといったケースなどです。
私も以前、NISA口座を地元に本店のある銀行からネット証券に変更しました。私の場合も、投資先の選択肢の多さが金融機関変更のモチベーションとなりました。
現在、こうした変更希望者を取り込もうという狙いで、証券会社や銀行では現行NISAの口座開設などに対する現金プレゼントなどのキャンペーンが活発に行われています。
専門家は「まずは自分の投資方針を見つめることが大事」と指摘しています。新NISAでは、投信などを積み立てる「つみたて投資枠」と上場株などにも投資可能な「成長投資枠」があります。それぞれの枠をどう利用したいかで、選ぶべき金融機関は変わってくるといいます。
具体的には、「株式購入を検討するなら証券会社が選択肢」となりますが、積立投資(投資信託)だけなら銀行も候補に加わります。まずは各金融機関の用意する「商品ラインアップ」などを比較してみることをおススメします。
新NISAの「つみたて投資枠」は年間120万円まで、また「成長投資枠」は年間240万円までの投資が可能となります。
「成長投資枠」に関しては、今年6月から対象の投資信託が順次公表されており、今年12月19日までラインアップが更新されていく予定です。どのような商品を新NISA扱いで購入できるかを見極めながら金融機関を選んでいくという選択肢もあります。
現行NISAの資産は引き継げず、「売却か課税口座で保有か」を判断
ここで注意点です。(私自身も熟慮する必要性を強く感じています(笑))
現行NISAで投資する株式や投資信託は、新NISAに移すことはできません。このため現行NISAで運用してきた資産について、今後どのように扱っていくかが課題になります。
新NISAでは非課税期間が無期限となるのに対して、現行NISAには一般NISAの非課税期間が5年、つみたてNISAが20年という期限が設定されています。
一般NISAでみていきますと、2023年に非課税期間が終了するのは2019年に投資した分の資産となります。この資産を新NISAに移すことはできません。
また、一般NISAでは、非課税期間が終わる資産を新たに始まる非課税期間の枠に移す「ロールオーバー」という仕組みがありましたが、新NISAのスタートを機に一般NISAのロールオーバーの仕組みもなくなります。
そこで投資家は、現行NISAの一般NISAのもとで2019年に投資した資産について、年内に売却するか、課税口座に移すかを判断しなければならなくなります。
同様のことが、2020〜23年に投資した資産も非課税期間がそれぞれ5年になって順次終了するごとに出口戦略を考える必要があります。つみたてNISAは20年という比較的長い非課税期間があるため、出口戦略を練る時期はまだ先のことと考えられます。
現行NISAに含み益がでている場合は?
売却するか課税口座に移して継続保有するかを判断するためのポイントとしてはつぎのような点が挙げられています。
まずは、課税されても保有し続けるメリットがあるかどうかです。
例えば、2019年に投資した資産を非課税期間中である年内に売却すれば、利益に対して課税されることはありません。現状である程度の含み益が出ている場合は、年内に売却することも有望な選択肢となります。一方、課税口座に移して継続保有すれば株式の配当や投信の分配金に課税されることになりますが、分配金などの額に満足できれば保有も選択肢になり得ます。
次に、自分の資金に余裕があるかどうかがポイントとなります。
新NISAは「つみたて投資枠」の年間投資可能額は120万円、「成長投資枠」で240万円と計360万円まで投資商品を購入することができます。来年に新規で投資できる資金が360万円以上あって、新NISAの投資枠が埋まりそうな場合には、一般NISAの投資商品を来年以降も売却せず、課税口座で保有するという手もあります。
専門家の話として、「新NISAの年間投資枠を埋められるほどの資金を十分持っていなければ、一般NISAの非課税期間が終了する時点で売却し、新NISA用の資金に回す余地もある」としています。
現行NISAに含み損がでている場合は?
一般NISAで保有する資産に含み損が出ている場合には注意が必要となります。(悲しいかな、私もそのひとりです(´;ω;`)ウゥゥ)
そもそも値下がりした資産を売却すると、NISA本来の非課税のメリットを享受することはできません。また、非課税期間が終了して課税口座に資産が移る際にはそのときの時価が取得価格に変更されることななります。
例えば、現行の一般NISA口座で120万円で購入した株式が、5年の非課税期間が終了した際に100万円に下落していたとすると、一般NISA口座から課税口座へ移す時の取得価格は100万円に変更されることになります。その後、130万円に値上がりした場合は、30万円の利益に対して課税されていきます。もし当初から課税口座で同様の資産を購入していれば、120万円が130万円に上昇した分の10万円に対する課税で済む計算となるので、このように含み損を抱えている場合は悲しい未来になるかもしれません。
非課税期間の終了を待たずに売却するのは?
それでは、2020〜23年に投資した資産に現状で利益が出ている場合、5年の非課税期間の終了を待たずに売却する判断はしてもいいのでしょうか。
専門家は「売却益への課税を確実に避けたいなら、非課税期間の終了を待たずに売却するのも手」だと話しています。早めに売却することで非課税期間が終わる直前に大きく値下がりし、挽回できないまま課税口座に移るリスクを避けることにもつながります。そして売却して得たお金を新NISAの投資に回すことも検討することができます。
まとめ
新NISA制度の開始は、2024年1月ですが、その準備はすぐにでも始めなくてはならないものもあります。
たとえば、現行NISAから別の金融機関の現行NISAへの変更の手続きは9月中が期限となっています。また、含み益が出ている場合、含み損を抱えている場合なども、いつまで保有するか、いつ売却するかなどのタイミングが悩みのタネです。
シニアにとっては、「新NISAでは非課税期間が無期限」という点を活用して、高配当の個別株式を良いタイミングで仕入れて、配当金の非課税を利用して、より多くの株式配当金を「自分年金」として受取っていくのも良い方法かもしれませんね。
「無期限で非課税」って、言い換えれば「死ぬまで非課税」ということですので、60代だとしても20年くらいは「配当非課税の恩恵」を享受できるのではないでしょうか。
明るい未来設計のためにも「新NISA」の活用は大いにアリでは!!