来年拡充の新NISA、iDeCoとの使い分けは?
みなさん、こんにちは!「家族信託」や「遺言書」など生前の相続対策に特化した取組を行うディアパートナー行政書士事務所です。
ちょっと前の日経ヴェリタス(2023年6月6日)に「新NISAとiDeCoと使い分け」に関連する記事が掲載されていました。
新NISAのスタートまで、あと3カ月あまり。新NISAとiDeCoの使い分けについて考えてみましょう。
NISA・イデコともに利用が拡大!
ご存じの通り、iDeCo(個人型確定拠出年金)は、公的年金(国民年金・厚生年金)とは別に給付を受けられる私的年金制度の一つで、公的年金と異なり、加入は任意で、加入の申込、掛金の拠出、掛金の運用の全てを自分で行い、掛金とその運用益との合計額をもとに給付を受け取ることができます仕組みです。公的年金と組み合わせることで、より豊かな老後生活を送るための一助となります。
このiDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)の加入者が2023年4月末時点で293万人となり、300万人の大台が迫っています。
昨年10月から企業型確定拠出年金(DC)と併用できる対象が広がり、老後の資産形成手段として利用する人が増えています。
イデコはDCと併用可、手数料無料も広がる
イデコ加入者数の増加が示すとおり、その裾野が広がっています。2022年5月に要件を満たせば加入可能期間が65歳未満へと5年延び、定年再雇用で働く人などに利用が広がりました。(定年退職組の私も60代前半、イデコに加入しています!)
2022年10月には勤務先に企業型DCがある場合でもイデコに加入できる要件が緩和されました。こうした需要拡大を受け、りそな銀行が2023年4月に管理手数料を無料とするプランを始めるなど金融機関がイデコ関連のサービスを拡充。利用しやすさも加入増を後押ししています。
イデコの大きな特徴3つとは?
1つめの特徴は、イデコは国民年金(基礎年金)や厚生年金に上乗せする任意加入の私的年金のひとつだということです。
年金資産を「自分でつくる」制度だということができ、加入者は自分で掛け金を出し、運用も公的年金や確定給付企業年金(DB)のように国や企業に任せるのではなく、自分で決めた運用方針に従って商品や資金配分を決めていきます。口座を開いた金融機関が特定の投資商品を勧めることもありません。
2つめの特徴が税制上の優遇措置を受けられる点です。イデコの掛け金は全額が所得控除の対象となり所得税・住民税が軽減されます。そのうえに運用益も非課税となります。
また、イデコを年金として受給する時、一時金として受け取る場合には「退職所得控除」、年金で受ける場合は「公的年金等控除」の対象になります。
さいご、3つめの特徴としては原則60歳までは引き出せない点があげられます。税制優遇がある制度としてNISAと比較されることが多いですが、イデコはあくまで年金制度のひとつです。
イデコの加入資格と拠出限度額は?
イデコを始めるにあたって、加入資格と拠出限度額を知っておく必要があります。
イデコは20歳以上65歳未満の国民年金被保険者は原則加入できます。掛け金は月額5000円以上で、1000円単位で自由に設定が可能となっています。
掛け金の上限額は職業などによって異なり、例えば公務員は月額1万2000円、会社員であれば勤務先のDC・DBの有無によって1万2000〜2万3000円、専業主婦(夫)は2万3000円、自営業者は6万8000円などとなっています。
2022年10月からはDC加入者の中でイデコを利用できる対象が広がり、イデコの掛け金の上限は2万円で、DCと合わせ5万5000円を超えてはいけないルールになっています。
勤務先のDBにも加入している場合はイデコの掛け金は1万2000円、イデコとDCの合計は2万7500円が上限となりますが、2024年12月にはこの場合のイデコの上限額が引き上げられることになっています。
こうしたことから、老後の資産形成におけるイデコの役割はますます高まっていくことになりそうです。
イデコの商品選びはリスク許容度に応じて考える!
イデコでの資産形成を決めたなら、まず運営管理機関を選ぶことになります。加入者数の上位にはSBI証券や楽天証券などネット証券が並んでいます。私の場合も楽天証券を利用しています。
金融機関によって取扱商品が異なりますので、自分が投資したい商品があるかを確認した上で、口座管理手数料や加入者向けセミナーなどサポートがあるかなどを基準に選ぶのが常道です。
イデコの投資対象は保険など元本確保型と投資信託の大きく2種類があります。この中からどれを選べばいいのか迷う人は多いようです。ネットで検索すれば人気の投信などにたどり着けるますがそれだけで選ぶのは避けたいものです。高リスク商品であれば相場下落時に想定以上の損失が出て慌てる事態になりかねません。
一方、資産を減らしたくないからといってすべて元本確保型にするのも「期待したリターンが得られないという点で勧められない」(ニッセイ基礎研究所の熊紫云さん)といいます。一時的に損失が出ていても長期に積み立て投資をしていけば、プラスのリターンを得られるケースは多いようです。
長期積立の検証結果は?
それでは、過去の代表的な金融・経済危機時を振り返って運用商品ごとのそのパフォーマンスをみてみましょう。バブル崩壊、ITバブル崩壊、リーマン・ショック、コロナショックの株価急落前から2023年4月まで毎月2万円ずつ積み立て投資した場合、資産残高がどうなったかを国内株式、国内債券、米国株式、外国株式、内外株式、外国債券の6つを対象に比較してみました。
最も投資期間が長いバブル崩壊直前から現在までをみてみると、累積積み立て元本800万円に対して全ての投資対象でプラスのリターンが得られました。相場急落を経験しても、34年という長い時間をかけることで資産の目減りを挽回できた格好です。ITバブル崩壊とリーマン・ショック時も全対象がプラスという結果でした。
一方、コロナショック直前からの比較的短い投資期間では国内債券型がマイナスとなりました。ニッセイ基礎研の熊さんは「積立期間が長いほど資産の購入単価を平準化できる。10年以上の長期投資を心がけたい」と話しています。
もう1つ注目すべきが資産の増え方の差です。4つの危機後に最も上昇したのは米国株式で外国・内外の株式が続いきました。バブル崩壊直前からのパフォーマンスでは、米国株式と国内債券の資産額に5000万円超の差がでています。熊さんは「長期投資が可能な若い世代はある程度リスクの高い株式型などの商品も選択肢」と話しています。一方で「残りの投資期間が短い世代は安定的な投資を心がけるべき」としています。
もっともリスク許容度は個人によっても異なります。老後資金を高リスク商品に投資するのは怖いという人は、株式などは一部にとどめ、元本確保型商品を多めに設定するのも方法のひとつです。確定拠出年金アナリストの大江加代さんは「少しずつ株式の比率を増やすなどし、価格変動に慣れていくことが大事だ」と話しています。
老後にイデコ、NISAで柔軟運用
「将来に向けて自分も資産形成をしなくてはならないと考えた」。東京都内に住む会社員のAさん(31歳)は2022年、イデコを使い積み立て投資を始めました。周りでイデコやNISAを始めたという話を聞くようになり、関心が高まったといいます。まずイデコから始め、少し慣れてきたところでNISAも開始しました。2つの制度を活用し、資産を増やしていきたいと話しています。
イデコとともに、NISAの利用者も右肩上がりで増えています。2022年末の一般・つみたてNISAの口座数は1804万となりました。
現行NISAでは時限措置ですが、2024年1月に始まる新NISA制度では制度が恒久化され、投資できる金額も増えます。老後の資産形成に向けて使い勝手が増す一方で、個人からは「イデコとNISAのどちらを使えばいいのか」という声も出てきています。
イデコと新NISAを比較する前に、2024年からスタートする新NISAの内容を整理していきます。
新NISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」という2つの枠があり、1年間に投資可能な額はつみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円となります。
この2つの枠は併用が可能で生涯投資枠は1800万円(うち成長投資枠が1200万円)となります。現行制度ではつみたてNISAが40万円、一般NISAが120万円なので、金額は大幅に増えることになります。
大きなポイントは「非課税期間が無期限」になる点です。一般NISAでは非課税期間の5年を過ぎた後も非課税で保有するには、新しい年の投資枠に資産を移管する「ロールオーバー」という手続きをしなければならなりません。新NISAではこの煩雑な手続きがなくなり、長期投資しやすい環境が整うことになります。
利用者のメリットが大きくなる新NISAを、イデコとどう使い分ければいいのでしょうか。1つの考え方としては「資産形成の目的による使い分け」(確定拠出年金アナリストの大江加代さん)が挙げられます。
イデコで投資した資産は原則60歳まで引き出せないのに対し、NISAはいつでも運用資産を売却し引き出すことができます。
ファイナンシャルジャーナリストの竹川美奈子さんは、「老後資金はイデコや勤務先の企業年金制度などで積み立てをし、結婚や出産、教育、住宅購入などいつか使う資金についてはNISAで運用するなど柔軟に使い分けるといいだろう」と話しています。
2つめの考え方は、職業や収入の有無による使い分けです。
イデコの掛け金は全額所得控除の対象となるため、所得の高い人は税制上のメリットが大きくなります。一方、専業主婦(夫)など所得のない人はこのメリットを生かすことができません。老後資産を増やしたいのであれば、所得控除はないけれども投資枠が相対的に大きいNISAのつみたて投資枠を活用してもよいといえます。
自営業やフリーランスなど所得はあっても企業年金がない人、勤務先の年金制度があまり充実していないと感じる人は、まずイデコを使い税制メリットを受けながら老後資金を積み上げていくことが選択肢になります。
3つめの考え方が年齢による使い分けです。50代などこの先比較的短期間で老後資金をためなければならない人は、新NISAで資産の積み上げを急いだ方が良い場合もあります。なぜならば、イデコの年間投資枠は人によって異なりますが年間14万4000〜81万6000円で、新NISAと比較すると投資枠に限りがあるためです。
手数料や取り扱う金融機関の違いについても、ぜひ把握しておきたいものです。
イデコは加入時に国民年金基金連合会に対し2829円の手数料を払います。また、掛け金納付の都度105円を負担する必要もあります。金融機関の運営管理手数料はネット証券など無料のところから年間数千円かかる金融機関もあります。一方でNISAは口座開設や管理に手数料はかかりません。
イデコとNISA活用の注意点は?
イデコでは金融機関が運用商品について説明はできるが、勧誘することはできません。イデコの場合は、商品に関する情報はある程度自分で調べ、自ら決める必要があります。
金融機関によっては加入手続きをネット上で完結するところもあります。「心配な場合は平日夜や土日でも電話でのサポートが受けられるかなどを確認するといい」とは確定拠出年金アナリストの大江さん。
ほかにもイデコは転職時、登録事業所の変更手続きが必要になることも覚えておきましょう。
NISAにも注意点があります。現行NISAでは一度投資枠を使って金融商品を購入し売却すると、その投資枠が復活することはありませんでした。2024年スタートの新NISA制度では上限の範囲内であれば、売却しても翌年投資枠が復活します。
ファイナンシャルジャーナリストの竹川さんは「利益確定のための売買を繰り返せるようになるため、長期積み立て投資をしなくなる懸念がある」と指摘しています。老後の資産形成が目的であれば、売買のルールを決めるなどして計画的に運用することが大切になります。
まとめ
以上、2024年1月から始まる新NISA制度とイデコの使い分けについて考えてきました。
1つの考え方は「資産形成の目的による使い分け」。
老後資金はイデコや勤務先の企業年金制度などで積み立てをし、結婚や出産、教育、住宅購入などいつか使う資金についてはNISAで運用するなど柔軟に使い分けるのが良いということでした。
2つめの考え方は「職業や収入の有無による使い分け」。
所得はあっても企業年金がない人、勤務先の年金制度があまり充実していないと感じる人は、まずイデコを使って税制メリットを受けながら老後資金を積み上げていくことが選択肢ということでした。
3つめの考え方は「年齢による使い分け」
50代などこの先比較的短期間で老後資金をためなければならない人は、新NISAで資産の積み上げを急いだ方が良い場合もあるとのことでしたね。
私が考えるには、若い世代では、メリットの多い非課税制度「個人型確定拠出年金(iDeCo)」をまず活用して老後資金を準備しつつ、資産形成として少額投資非課税制度「NISA(ニーサ)」=新NISA制度を利用するのが良いのではないかと考えています。
長い間には、NISA制度も今後も改正されていくでしょうし、iDeCo制度も改正されていくことでしょう。
したがって、少なくても制度が改正の際には、iDeCoやNISAの活用方法の見直しを行うことがとても大切になります。
でも大前提は、「とりあえず資産形成に向けて早く取り組む」ことではないでしょうか。(ただし投資判断は自己判断でお願いします!)