少子高齢化による生産人口の減少でも年金は破綻しないの?

みなさん、こんにちは!「家族信託」や「遺言書」など生前の相続対策に特化した取組を行うディアパートナー行政書士事務所です。

令和5年2月17日付日本経済新聞電子版「人生100年こわくない」に「公的年金制度」についての記事が掲載されていましたので、公的年金は将来的な見通しについて考えてみましょう。

(注)記事ベースは「少子高齢化、それでも年金は破綻しない」と題した経済コラムニスト大江英樹さんのコラムです。大江さんは講演などでも同様の趣旨の主張をされています。

日本では「年金破綻」を巡る議論が絶えない!

世の中にはいわゆる「年金破綻論者」がメディアや金融機関を中心に一定数存在しているようです。最近はメディアも比較的冷静な論調になってきてはいるものの、相変わらず年金不安を煽(あお)るような報道が多いことは事実です。そんな年金破綻を唱える人達にとっての錦の御旗が「少子高齢化の進展」だというのです。

かつては若者が十数人で1人のお年寄りを支えていた「御神輿(おみこし)型」だったのが、現在は2〜3人で1人を支える「騎馬戦型」となり、あと何十年かすると1人で1人をささえなければならない「肩車型」になることが想定されています。このような状況になったら、年金制度はとてももたない――というのがその論理のようです。

この説明にはかなりの説得力があります。なぜならば現代において少子高齢化が進展していることは、まぎれもない事実ですから、誰にとっても納得しやすい論理となります。

実際に年齢を65歳以上と以下で区切ってその数字を調べて見るとそのような実態になっていることが分かります。これは長寿化に加えて出産数も減少している状況から当然の結果といえます。

65歳という年齢で区切ることが正しいのか?

「しかし、もう少し考えてみよう。」と大江さんは言っています。そして、「果たして65歳という年齢で区切ることが正しいのだろうか。」と。

公的年金制度というのは成人社会において、保険料を負担する人と、年金の給付を受ける人の2種類で成り立っているのですから、負担する人と給付を受ける人の割合がどれぐらいかで見るのが正しい見方なのではないでしょうか。

厚生年金保険料は働いている人でなければ払うことはできません。したがって、正しくは1人の就労者(働いている人)が何人の非就労者(働いていない人)を養っているのか、という観点でみなければならないはずです。

そこで大江さんは、総務省統計局の「労働力調査」から就業者と非就業者の数字を割り出し、さらに「国立社会保障・人口問題研究所」の統計から年代別の人口を割り出してみたそうです。

具体的には非就業者の中から20歳未満を除き、その数字を就業者で割ると次のような状況となります。これは、現役で働いていて保険料を払っている人達がどれぐらい多くの「無職高齢者」を支えているか、を示すことになります。

今から50年前の1970年は1人で0.39人を支えており、その20年後の1990年には1人で0.45人、そして2020年には0.57人と少しずつ支える割合は増えてきています。しかし、その比率はとても御神輿型から騎馬戦型への変化と言うにはほど遠い状況です。さらに言えば将来は肩車型になるということだが、人口予測で見る限り、2040年には0.53人ですから、今よりも状況は改善するということになります。

つまり50年前と今を比べても、そして将来を見据えても、それほど大きな変化は起きていないということが言えます。

大江さん自身も数年前までは「御神輿→騎馬戦→肩車」論を信じていたそうです。ところが慶応義塾大学の権丈善一教授の著書「ちょっと気になる社会保障」の中に就業者と非就業者の比率の推移を表す図が掲載されており、その図を見て「これは確かにその通りだ」とまさに目からウロコの思いだったということです。

大江さんは上記の「就業者と非就業者の比率の推移を表す図」からさらに非就業者の中から20歳未満を引いた数字を出したのですが、これは子供や未成年者は年金を受け取るはずもないので、厳密には働いていない高齢者と比較してみないといけないと思ったからだそうです。

なぜこうなるのか?その理由はきわめて明快です。それは働く高齢者と女性が増加したからです。

1970年当時、多くの会社では定年年齢は55歳でした。当時の男性の平均寿命が69.31歳でしたから、定年がそんな年齢であっても不思議ではありません。今と違って「高年齢者雇用安定法」もなかったから、当時定年になった人はその多くがそのまま引退していたはずに違いありまん。

一方、現代では定年こそまだ多くの会社では60歳だが、再雇用制度によって、8割以上の人は65歳まで働いていると言われている。さらに65歳を過ぎて70歳になる直前まで働いている人も51%いる(令和3年版「高齢社会白書」)。70歳になるまでは会社で働く限り、厚生年金に加入することができるので、少なくとも60〜65歳までの8割、65〜70歳までの5割は年金保険料を払って、支える側に回っているのだ。

一方、女性の場合はどうかというと、労働政策研究・研修機構によると1980年当時と比べて、現在は共働き世帯は倍増し、逆に専業主婦世帯は半減しているということです。ここでも年金保険料を払う人たちが増加していることになります。

働く高齢者&女性の増加続く

高齢者では、現在は70歳までの雇用機会の提供については企業に対して「努力義務」とされていますが、いずれこれは義務化されることになるかもしれません。そうすると65歳を過ぎても働く人は今以上に増えることが予想されます。

実際、1970年当時と比べると男性の平均寿命は当時から12年も伸びて82歳近くになっているわけですから、70歳まで働く人が増えても全然不自然なことではありません。働く女性もおそらく今後増えることはあっても減ることはないのでしょうか。

そう考えると少子高齢化が進むからその影響によって年金が破綻するというのは、必ずしも正しいと言えるかどうかは疑問になります。

もし仮に「御神輿型→騎馬戦型」というロジックで考えると、1970年当時の65歳以上1人に対して65歳未満の人数は13.1人、直近の2020年では同じく1人に対して2.6人という数字になっているから、支え手の人数は5分の1になっているはずです。

それでは、年金支給額もそれなりに減っているのかというと、決してそんなことはありません。1970年当時の厚生年金受給者の平均年金月額は1万4400円であるのに対して、2020年は15万5580円ですから、5分の1どころか10倍以上になっている状況です(出所=厚生労働省)。

年金が増えた最大の理由は物価上昇にあります。1970年代は今とは比較にならないぐらいのインフレが続いていました。

1974年の消費者物価上昇率は何と23%。年金の支給額というのは基本的に賃金・物価連動だから、物価上昇の続いた70年代は年金支給額もそれなりに増え続けていたのです。

ところが1990年当時の平均年金月額は14万2237円でした。1970年〜1990年の20年間で年金支給額は10倍近くに増えていたにもかかわらず、その後の30年間(1991年~2020年)ではほとんど増えていない状況です。その大きな理由は1990年以降、日本が長い間デフレの時代に入ってしまったからだと言われています。

数字を見据え冷静な議論を

そもそも日本が高齢化社会に入った時期は1970年のことでした。つまり50年以上も前からすでに高齢化の動きは始まっていたのです。

これまでにも高齢化に対する対策が全くとられていなかったわけではなく、厚生年金の支給開始年齢の引き上げ、年金保険料の引き上げ(2017年で終了)、そして年金支給額の抑制(マクロ経済スライド)といった策は1980年代から検討され、今までにも着実に実行されてきています。

公的年金制度が今後も盤石であり続けるかどうかはわからませんが、少なくとも「少子高齢化で破綻する」といった極端で単純な話でないことは確かだと言えそうです。

大江さんは、公的年金に関して大事なことは

①制度への参加者を増やすこと

②負担と給付の公平化

③感情的にならず、数字を見据えた上で冷静な議論を続けていく

だとし、メディアにはこれからも①~③の観点からの冷静なコメントを期待したいと結んでいます。

まとめ

今回は公的年金制度の観点からみてきましたが、「働き方改革」や「iDeCo」「NISA」の制度改正などをみても、できるだけ長い期間、働くことが求めれれているようです。

しかし、働けるうち(仮にその人の健康寿命までとします!)は「ずっとフルで働いて」というのが良いのかどうかは、疑問の残るところです。仕事と他の生きがい(趣味など)とのバランスをとりながら60代以降の生活を楽しんでいくのが良いのかもしれません。

それも大前提は「心身の健康」につきます。健康維持のためにも規則正しい生活に心掛け、定期検診も忘れずに受けることが重要になってくるでしょう。(健康を気にしすぎて、アルコールを嗜む機会が減るのはご免ですが(笑))

ビル・パーキンスの著書「DIE WITH ZERO(ゼロで死ね)~人生が豊かになりすぎる究極のルール~」の中には、

“人生は経験の合計だ。あなたが誰であるかは、経験の合計によって決まる。振り返った時、合計された経験の豊かさが、どれだけ充実した人生を送ったかを計る物差しになる。”

と書かれている部分があります。

「DIE WITH ZERO(ゼロで死ね)」の詳しくはコチラ↓

私は、仕事と趣味、家族などのバランスをうまくとれるよう努めて、今後の生活が楽しめるよう過ごしていきたいと思います。

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