財産ゼロで死ぬ?老後の幸せな生き方とは?

みなさん、こんにちは!「家族信託」や「遺言書」など生前の相続対策に特化した取組を行うディアパートナー行政書士事務所です。

前回の投稿「定年退職起業と健康寿命をTULIPラストツアーから考える」とリンクする記事が「日経ヴェリタス2022年10月2日号」に掲載されていましたので、それに関して投稿していきます。

記事の出典元は「人生100年こわくない・定年楽園への道(大江英樹)」です。

お金の面でも人生を「死」から逆算して考える!

昨年、アメリカのビル・パーキンスというファンドマネジャーが著した「Die With Zero」という本が今回のテーマです。

この本はアメリカのみならず日本でも翻訳出版されてベストセラーになりました。この本のまえがきにイソップ寓話(ぐうわ)の中のアリとキリギリスの話が登場しています。

誰もが知っている話ですが、夏の間、一生懸命働いて食物を蓄えたアリと遊んで暮らしたキリギリスが冬を迎え、アリは生き残ったが、キリギリスは悲惨な末路をたどった、というくだりです。

「Die With Zero」に書いてある部分を引用すると、「私たちはキリギリスの末路を知っている。そう、飢え死にだ。しかしアリはどうなったのか? 短い人生を奴隷のように働いて過ごし、そのまま死んでいくのだろうか? いつ、楽しいときを過ごすのか?」

大江英樹さんは、この部分に深い共感を覚え、大江さんなりのアリの末路は?と考えてみたそうです。

「アリは助けを求めて来たキリギリスを冷たく突き放した。『そんなものは自己責任だ』とつぶやき、世間から『冷たい奴だ』と言われようが気にしなかった。そしてお金(食べ物)に囲まれ、友も無いまま、1人寂しく死んでいった」多分、これがアリの末路なのではないだろうか。と大江さんは記しています。

「Die With Zero」というタイトルはゼロで死ね、つまりこのタイトルが意味するのは、「死ぬときまでにお金は全て使い切ってしまおう」ということです。

ところが日本においては、実際には、多くの人は「死ぬときに最もたくさんお金を持っている」ということになるらしいのです。金融広報中央委員会(事務局=日銀)が調査した「家計の金融行動に関する世論調査」(2021年)を見てみましょう(下の図参照)。

「家計の金融行動に関する世論調査」(2021年)

資産保有額は60・70代が突出

年代別に金融資産の保有額を中央値で見てみると、60代が1400万円、70代が1500万円と他の年代に比べて突出しているのがわかります。これはあくまでも中央値なので、これを平均値で見てみるとさらに増えます。60代では何と3000万円強にもなるというのです。

これを見る限り「死ぬときに最もたくさんお金を持っている」というのは、おおむね正しいと言えることになります。

これは日本での話ですが、米国人の著者もその本の中で「このお金を生きて元気なうちに使っていれば、どんなに幸せだったろうかということを考えるべきだ」と主張しています。

ではなぜ多くの人がやりたいことを犠牲にしてまで、お金をため、増やし続けるのでしょうか。それは「老後不安」というナラティブがあるからだそうです。

ナラティブというのは物語とかストーリーという意味で、世の中で、ある「特定のストーリー」が、それが事実かどうかは関係なく、多くの人に信じられていることによって人々が行動するという現象を表しているということなのです。

例えばバブルのような経済現象は、今後も経済成長がずっと続くと多くの人に信じられることから発生するものなのだそうで、現代の日本における最大のナラティブは「老後不安」と言っていいと大江さんは述べています。

実際、多くの人は根拠の曖昧な老後不安におびえているようです。でもそれはやむを得ないのかもしれません。なぜなら、そもそも老後というのは将来のことです。将来のことは誰もわからないのですから不安が生じるのはしごく当然のことかもしれません。

しかも最近ではメディアが「老後貧乏」だとか「老後破綻」などという言葉を使ってさらに不安を煽(あお)るために、次第に不安が恐怖に変わっていくといいます。

その上、「老後不安」というナラティブは金融機関の営業にとっても、非常に都合の良い話なので、これを武器にして金融商品の購入を積極的に勧めることになるようです。その結果、どこまで行っても拭えない不安からお金を増やすことに熱心になり、気が付けば「死ぬときに一番たくさんお金を持っている」という状態になるのだろうと大江さんは考えています。

老後への過度な不安はご無用

しかしながら、大江さんは過剰な老後不安を持つ必要はないと思っているということです。

なぜならば、日本においては自営業など国民年金のみの加入者であれば公的年金だけで生活していくのは難しいのですが、普通のサラリーマンなら、そんなに心配する必要はないということなのです。

厚生労働省が示す公的年金のモデル年金額では、妻がずっと無職であったサラリーマン家庭の場合の年金支給額は月額で約22万円。毎年海外旅行に行くとか、頻繁に豪華な外食をするということでなければ、日常生活はこの金額でも可能であると大江さんはいいます。事実、大江さんは定年後、夫婦二人で生活していますがその生活費はおよそ月に21万~23万円ぐらいでまかなえているというのがその根拠のようです。

もちろん自分が何歳まで生きるかは誰もわからないから、「死ぬときにゼロにしろ」といってもそんなにうまくはいかないこのでしょう。ただ、この著書がアメリカを前提に書かれていることには注目したいと大江さんは述べています。

なぜなら社会保険の充実度が日本よりも劣るアメリカ社会においても「ゼロで死ね」と言っていますが、日本の場合はアメリカよりもずっと社会保障は充実しているからです。仮に90歳までに持っているお金を全部使ってしまったとしても、公的年金は死ぬまで支給され続けます。

大江さんの経験では、年を取るほど生活費は少なくなるから、同じ年金額で支給されるのであれば、たとえ何歳まで長生きしようと日常生活に困ることはほとんどないとしています。そして、大江さん自身も、大江さんが現在持っているお金は90歳までにほとんど使ってしまおうと思っていると述べています。

ただし、不測の事態に備えるためにある程度の現金を持っておくべきだという考え方も必要で、それは間違いではないとも言っています。でも例えば医療や介護といった事態が起きると想定しても、それに対してどれぐらいのお金が必要かは事前にある程度推測することが可能で、必要以上に過剰なお金を蓄えたり増やしたりしておく必要はないと大江さんは考えています。

そして、むしろ人生後半に向けて考えるべきことは「お金を増やす」ことではなく「お金をどう使うか」ということだと強調しています。

人間は「死」を意識した時に、人生で本当に大切なものは何だったのかということに気が付くのだそうです。緩和ケアの介護を長年勤めて多くの人を看取ったブロニー・ウェアという人が自分の体験に基づいて書いた「死ぬ瞬間の5つの後悔」という本があるそうです。

「思い出」得るためお金を使う

「死ぬ瞬間の5つの後悔」という本には死を前にしたとき、人は何を思い、人生において何を後悔するのか、が書かれているのだそうですが、その多くは「自分のやりたいことをもっとやっておけば良かった」「もっと人とのつながりを大切にしておけばよかった」ということです。

大江さん自身も、今年70歳を迎えたので、あとどれくらい生きられるのかはわからないのですが、人生の終盤が近づくにつれて、人生で最後に残る大切なものは何だろう、と考えるようになったそうです。

そしてこの「Die With Zero」を読んでみて、それは「思い出」ではないだろうか、と大江さんなりに考えたそうです。人生の充実度を高めるのは、その時々の体験であり、それにまつわる思い出ではないのか、と。だとすればもっと「思い出」を得るためにお金を使うべきなのではないだろうか。という考えに落ち着いたようです。

シニア世代にとっては、自分のやりたいことにお金を使う、人とのつながりのためにもっとお金を使う、そういったことの方が、お金を増やすことよりもはるかに大切なことだと考える。と大江さんは述べています。

まだ「死」を考えるには早過ぎる、あるいはそんなこと考えるのは縁起でもないという人もいるでしょうが、人がいつ死ぬかは本当に誰にもわからないものです。そしてその時はいずれ必ずやってきます。であるなら、ここからの人生を「死」から逆算して考えてみてもいいのではないだろうかと大江さんは考えています。

そして最後に、シニアの多くはこれまで家族を養うため、会社に利益をもたらすために一生懸命働いてお金を増やそうとしてきた。でもここからは、どうお金を使うことで人生を幸せにできるかを考えていくべきではないだろうか。と提案しています。

まとめ

私自身も還暦を過ぎて、大江さんの考え方・提案に近い生活信条で日々の生活を過ごしています。前回投稿の「・・・TULIPラストツアーから考える」もそうした考えからブログを書きました。

しかし、水のみ百姓出身で、根っから貧乏性の私。本来は楽しいイベントに参加していても「こんなことをしていていいのかな~」と後ろめたく感じることも時々あるのは事実です。

今回の大江英樹さんの考え方・提案には大変勇気づけられました。今後も「どうお金を使うことで人生を幸せにできるか」を考え、実践していきたいと思います。

でも生前の相続対策は必要です!

人がいつ死ぬかは本当に誰にもわからないものですが、その時はいずれ必ずやってきます。その時のためには、やはり生前の相続対策は必須となります。少なくとも遺言書を残すというのは、どなたにも必要なことと考えています。

ディアパートナー行政書士事務所では、家族信託に限らず、遺言書作成や任意後見契約など生前の相続対策のご相談を承っておりますので、相続対策全般についてお気軽にご相談ください。

ご自宅への訪問やサザンガク(下のチラシを参照)でも面談に対応しています。また、土曜日・日曜日、時間外の対応も行いますのでお気軽にお問い合わせ下さい。

ディアパートナー行政書士事務所

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です