インフレに強い!「副業」ありの人生設計を考える
みなさん、こんにちは!「家族信託」や「遺言書」など生前の相続対策に特化した取組を行うディアパートナー行政書士事務所です。
私が注力する「生前の相続対策」とともにライフワークとしている「公務員の副業・兼業支援」に関係する記事がに日本経済新聞電子版「人生100年こわくない」2022年9月16日号」に掲載されていましたので、それに関して投稿していきます。(※アイキャッチ画像は7月に塩尻市役所で講師をした公務員副業研修会の様子です。)
記事の出典元は「人生100年こわくない・マネー賢者を目指そう(熊野英生)」です。
ビジネスパーソンは副業・兼業こそ本業にプラスの効果をもたらす
熊野英生さんが20歳代前半のときは、インフレリスクに備えようという指南本が存在していたそうです。そこでは決まって、複利運用して資産を殖やすことが、インフレに割り負けないための対策法と紹介されていました。
その後、長いデフレ時代に突入して、「インフレリスク」の言葉は死語となっていきました。それが2021年くらいから再び長期で考えたときのインフレリスクを頭に入れて運用しなくてはいけなくなってきたようです。
すでに消費者物価の上昇率が前年同月比2%を超えていることは周知の事実ですが、このデータは帰属家賃という架空の項目を加算していて、それが伸び率を低くみせているようなのです。
持ち家の帰属家賃を除く総合指数は、2022年7月は前年比3.1%になっっています。この伸び率は、総務省が実質消費を計算したり、厚生労働省が実質賃金を計算したりするときに用いています。もしも、年間3%で生活コストが上がるとすれば、1000万円の預金残高は「▲30万円」の実質価値の低下が起こることになります。
1990年代前半は、預金金利が高くて、その利子収入が預金残高の価値の目減りを補っていました。
私もその時代には社会人でしたので鮮明に覚えています。たしか半年複利で7%以上の預金利息がつく預金商品などもあり、自身でも活用させていただきました。
現在、そして今後数年間は預金金利が1990年代のように高まることは期待できない状況です。日銀は、巨大化する政府債務の利払い負担が発生することを恐れて、適正な利上げができないからだと熊野さんは指摘しています。
そして、預金金利が上がらないことが、インフレリスクを私たちが防衛できない理由のひとつだと言っています。
海外資産で稼ぎ日本で暮らす
コロナ禍では、リモートワークが進んで地方移住が増えました。これは東京の収入を得ながら、生活費は地方の安い物価の恩恵を享受する暮らし方で、収入と支出の場所を変える発想の転換です。
同様に、資産運用は海外で行い、暮らしは日本でするという発想も十分あり得るとしています。欧米のインフレ率は前年比8~9%まで上がり、日本はその余波を受けて輸入インフレに見舞われることが予想されます。運用資産がすべて円ベースだと、輸入インフレで海外に購買力を奪われることになります。
米連邦準備理事会(FRB)は9月、11月、12月と利上げを継続して、2022年末は政策金利を4%近辺まで上げそうな観測です。ドルで運用すると、日本のインフレ率を上回るペースで金融資産が増えるので、インフレ防衛ができることになります。
検討すべきは、為替リスクへの対処となります。運用利回りは低下するが、ドルにユーロやポンドを加えて通貨の分散投資をする手もあると熊野さんは述べています。
分散投資の手法の中で、熊野さんが最もパワフルなのは時間分散だと考えているそうです。これはそれほど難しいことではなく、いくつかの通貨に分けて一定の金額を半年間ごとに投資すればよいだけだとしています。一度に巨大な外貨投資をしないことが、時間分散の考え方になるとしています。私がたびたび当ブログで推奨している「ドルコスト平均法」の活用ですね!
新築戸建ての取得費が上昇
インフレリスクを考える時、そのコスト増が単に生活費を増やすと捉えてはいけないと熊野さんは指摘しています。人生における3大支出は教育費、住宅取得費、老後の生活費ですが、この3つは負担が大きいので、若い頃から事前に積み立てておくという準備が必要になってきます。
インフレリスクは、この住宅取得費と老後の生活費を増やすことにつながります。まず住宅取得費の場合ですが、新築戸建ての費用がかなり上昇しています。2021年初から世界的にウッドショックと呼ばれる木材不足が市況を高騰させていますし、国内産木材も、その影響から費用が増えています。
その後、鋼材、非鉄、セメントなど様々な建築資材が高騰しました。新築戸建ての費用を3000万円とすると、それが約1割ほど高騰したとされているようです。今後は、再び海外産の建築資材がさらに上がっていく可能性もあります。
若い世代は、10~15年後に新築戸建てを取得したいと考えている人もいることでしょう。彼らのライフプランを脅かすのは、住宅取得費用が輸入インフレによって大きくなってきていることです。今は、新築戸建ての価格上昇が顕著だが、10~15年間のタームでは中古戸建て、中古マンションの価格上昇にも波及していくことはほぼ間違いないとされています。
もうひとつ、熊野さんが指摘しているのが、老後の生活費がじわじわと上がっていることです。シニア世帯の家計収支の特徴は、エンゲル係数が高いことと、光熱費が多いことだそうです。最近は、食料品の価格と電気代、ガス代が高騰しています。2022年7月の食料品価格は前年同月比4.4%も増えています。これは食料の自給率が38%(カロリーベース)と低く、残りの62%は輸入品で賄わなくてはいけないことと関係しています。
地球温暖化の影響もあり、世界的な異常気象は今後も続くことが予想されます。そのことが食料費への支出増につながり、老後の生活費を増加させていく要因となります。
以前に「老後資金2000万円」が話題となりました。夫婦2人の老後生活30年間で約2000万円が足りなくなるということが、2019年に指摘されました。2022年に同じシミュレーションを行うと老後30年間に想定される生活費はもっと増えているはずです。
熊野さんは若い頃に生活設計シミュレーションのシステム開発をしたことがあるそうです。大手電機メーカーのシステムエンジニアと組んで、基本設計は自分で描いていたそうです。そのシステムでは、老後の生活資金が足りなくなったときは、自分の年収の想定上昇率の入力値を高くすると、将来収支の赤字がなくなる結果になったということです。
要するに今後の年収が増えれば退職時の準備資金も膨らみ、運用収入も増えていくと熊野さんは考えています。
ところが、現実の中で、自分の年収上昇率を毎年3~5%と設定できる人など皆無でしょう。毎年0%といった線が一般的でしょう。
いや、すでに50歳代の人は、将来年収がマイナス方向だと直感している人も多く存在しています。日本人のライフプランの危機の本質は、この将来年収の展望が描けないことに集約されているといいます。
ほとんどの人が、タイタニック号のように、このまま前進していけば氷山に衝突すると不安を抱いています。それでもタイタニック号の舵(かじ)を横に切ることができないと熊野さんは言っています。公的年金をあてにできないと思っている人は、年金不足は一生働き続けることでしか補えないだろうと、何となく自分を納得させているとも指摘しています。
一つの「解」は副業への挑戦、副業のススメ
ここで「副業・兼業」のフレーズが登場してきます。
50~70歳代になっても、インフレ率に負けないペースで年収を上げていく方法はあるのでしょうか。熊野さんは、それは副業だと考えています。勤める会社以外にも人脈をつくり、そこで新しい収入源を掘り起こしていく想定です。
政府は2018年にモデル就業規則を改定して、「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」と兼業・副業を認めました。この方針を利用して、ひとつの会社からの年収が増えなくても、別の事業からの年収を増やすことが考えられます。
副業の年収は当初は小さいかもしれませんが、経験値を積みチャンスを広げるような活動を地道に行えば、まるで利息が増えていくように増えていくといいます。冒頭の複利計算にもよく似ていると思いますが、副業は一つのチャンスが、次々に将来のチャンスに連鎖していくという特徴も併せ持ちます。
大企業の昔ながらの仕事に慣れ切った人ほど、副業を始めることで、ビジネスセンスを鋭敏にする方がよいと熊野さんは述べています。何年も同じメンバーとばかり仕事をやっていると、専門家と呼ばれている人でもセンスは必ず鈍くなるそうです。
熊野さんは、副業・兼業こそが本業にプラスになってくると考えています。なるべく社外の異なる利害関係の人達と仲良くすることで、自分の発想が大きく広がるといいます。
自分の年収が、インフレ率の上昇に応じて増えていかないと悲嘆にくれているサラリーマンは圧倒的に多いと思いますが、そうした人ほど、副業というフロンティアがあることに注意を向けて、収入を増やす方がよいと指摘しています。
熊野さんは、ご自身の年齢が55歳になって、知人・友人たちの中で第2、第3の職場に移っていく人が増えてきたそうです。元の会社からの紹介で移る人もいますが、意外にその人自身の人脈だけで新しい職場を見つける人も多いのだそうです。今さらながら、上手にやっている人たちは、前々から準備をしていたのだと気付かされているようです。
プロ野球の名監督、故・野村克也氏は、「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」という言葉を好みました。しっかり下準備している人は不思議の負けなしなのだろうと結んでします。
まとめ
冒頭でもお話ししたように、私は自身の「公務員副業・兼業」経験(長野県知事から兼業許可を頂戴しました!)を基に、「公務員の副業・兼業」のサポートを行っています。
公務員でさえ(失礼!)、副業・兼業の許可制度が制度化されている時代です。それこそ、ダブルワークの「複業(字は正しいです!)」もありうるでしょうし、本業のほかに、起業してやり始めるという手法もあるでしょう。
いずれにしても、時代は「副業・兼業」の道に入っていきそうです。そのことは、シニア層の老後の生きる生業や生きがいにもつながってきます。
私も昨年度から起業していますが、軌道に乗るまでにはまだまだ時間とたゆまぬ努力が必要みたいです(笑)。・・・とすれば、少しでも早くからチェレンジすることで与えられるアドバンテージは大きいのではないでしょうか!!早めの行動が良いかもしれませんね!