今どきの葬儀事情と準備は?
みなさん、こんにちは!「家族信託」や「遺言書」など生前の相続対策に特化した取組を行うディアパートナー行政書士事務所です。
今月の日本FP協会いまどきウォッチングに「コロナ禍で変わった?葬儀事情と準備のポイント」というタイトルの記事が掲載されましたので、昨今の葬儀業界に関して投稿していきます。
相続業界パーソンとして重要な位置を占める葬儀業界ですが、新型コロナ感染症流行の影響もあり、どういった状況などでしょうか?
今回はいまどきの葬儀事情を押さえたうえで、希望の葬儀を行うための準備方法について考察していきましょう。それに関連して、相続対策で「何もしないこと」のリスクにも言及していきます!
最近の葬儀事情、増える家族葬
「家族葬」の増加などにより、規模の縮小傾向が続いていた葬儀は、コロナ禍によってさらにその縮小に拍車がかかりました。実際の動向としては、葬儀の件数は増加、費用・規模は縮小を示しています。
経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」によると、国内の葬儀社が取り扱った2021年の葬儀1件当たりの金額(売上高)は112万5,000円、前年の2020年に比べて約4%減少しています。
2020年は2019年に比べて約13%減少しており、新型コロナウイルスの感染拡大で葬儀の小規模化や簡素化が進んだといえます。さらに長期的に見れば高齢化によって件数は増加する一方、葬儀費用はコロナ禍の前から微減傾向が続いていました。
葬儀の種類について明確な定義はなく、葬儀社などによっても異なりますが、従来からある親族や知人、職場の人など故人と縁のあった人が多数参列する「一般葬」、家族やごく親しい人のみで見送る「家族葬」、通夜をせずに葬儀・告別式、火葬まで1日で行う「1日葬」、火葬のみで済ませる「直葬・火葬式」などに分けられます。
葬儀関連のポータルサイトを運営する鎌倉新書が行った喪主を経験した40歳以上の男女を対象にした「第5回お葬式に関する全国調査」(2022年)での割合は、家族葬が55.7%、一般葬が25.9%、直葬・火葬式11.4%、1日葬6.9%でした。
2015年の同調査では一般葬が58.9%、家族葬が31.3%だったことから、家族葬の比率が高まっていることがわかります。
ただし、家族葬を選択した人もコロナ禍でなかったら一般葬をしたかったという回答が多く、ある程度は一時的な傾向のようです。
また、平均参列人数は過去最少の38人と、参列者も減少、規模が縮小していることがわかります。
なお、鎌倉新書が行った「第4回お葬式に関する全国調査」(2020年)によると、葬儀費用の平均として、直葬・火葬式は44万5,376円、1日葬は85万1,461円、家族葬は96万4,133円、一般葬は149万3,624円となっています。
コロナ禍とはいえ、家族葬の割合が急速に高まっています。静かに身内同士で故人をお見送りしたいというご親族も多いのかもしれませんね。
現在は、少子化・高齢化・少産多死が進展しています。関係する人の死を経験する機会も増えているような気がします。ニュース報道などを見ましても、昔に比べて、著名人の死を伝える場面は増えてきたような気がします。今後もこの傾向は続きそうですね。
コロナ禍、高齢社会を反映した葬儀の形
1日葬は以前からありましたが、やはりコロナ禍で急速に普及してきた葬儀スタイルです。1日で葬儀が終わるため、参列者の移動の負担も少ないということで選ばれているようです。
直葬・火葬式はその名のとおり、通夜や葬儀・告別式を行わず、火葬のみを行うものです。
従来から故人に経済的な余裕がない場合などに行われてきましたが、近年、急激に増えたスタイルです。
参列者が同じ場所に長時間とどまることがなく、飲食を伴わないケースが多いこともあり、感染予防の観点から特に緊急事態宣言下で増加しました。
新しい葬儀スタイル、オンライン葬儀
コロナ禍で新しい葬儀のスタイルも登場しました。例えばオンラインでの葬儀です。
故人の情報に加えて、通夜や告別式の日時、葬儀場の地図といった情報が画面に映し出され、ボタンをクリックすると、葬儀にオンラインで参加できます。
香典をクレジット決済したり、供花や供物を手配したりできるほか、僧侶がオンラインで読経するプランもあります。
さらに自動車に乗ったまま焼香できる「ドライブスルー葬」や祭壇を備えた「移動葬儀車」が移動し、各自希望の場所で会葬できるサービスも登場しています。
これらが登場した背景には、新型コロナウイルス感染症予防もありますが、参列者が高齢化し葬儀会場への移動が困難になっているといった事情もあるようです。ただし、これらはまだ一般的ではなく、話題作りを兼ねた一部の動きのようです。
わずかな時間で葬儀社を決めている実情
現在、7割ほどの人が病院などの施設で死を迎えます。死亡が確認されるとただちに施設内の霊安室から遺体を搬送しなければなりません。
前述の「第5回お葬式に関する全国調査」では、亡くなってから葬儀社を決めるまでの平均時間は5.3時間です。あわただしく葬儀社に搬送の依頼をして、自宅やあるいは葬儀の会場などに搬送、安置します。
その後、改めて葬儀社に見積もりを依頼し、菩提寺があれば連絡、菩提寺との打ち合わせを経て葬儀の日時を決定します。そうして、通夜、葬儀・告別式、出棺という流れになります。
また最近は火葬後、再び会場などに戻り、その日のうちに初七日法要と精進落としを済ませることも一般的になってきました(出棺、火葬の前に初七日法要と精進落としを済ませる場合もあります)。これらのやり方は、地方によっても変わってきます。
多くの遺族、とくに喪主は様々な手続きに忙殺され、十分な検討もままならず、急いで葬儀社を決めているのが実情です。ただ、最近では葬儀社の会員になって、生前に葬儀社が決まっていることも少なくないようです。
ただ、葬儀社に具体的な心当たりがない場合、多くの人が利用するのがウェブサイトの葬儀社紹介サービスではないでしょうか。2018年から2019年にかけて、葬儀社紹介サービスの3社が相次いで不当表示について消費者庁から措置命令を受けました。
後に是正されたものの、いずれも「この金額で葬儀ができます」「追加料金なし」と表示しながら、追加料金が発生することが問題とされました。
遺族は限られた時間の中、細かいチェックまでできず、慌てて依頼してしまいがち。追加料金が発生する可能性がある費用はしっかり確認しておくことが大切です。
そのためには、生前に気に入った葬儀社の会員になっておくというのも良い方法かもしれませんね。特に最近は、喪主になる子供世代が遠距離に暮らしているケースも少なくありませんので、生前に葬儀社を決めておくのは合理的かもしれません。
費用だけで葬儀社を選び思わぬトラブルも
費用面だけを考えて「近親者のみの家族葬で済ませ、あとは事後連絡」というスタイルを選択したとしましょう。
その後、葬儀に呼ばれなかった親戚と心情的なもつれになることや、故人と親しかった人が「最後のお別れがしたかったから、せめて焼香させてください」と、後日弔問に訪れることも想定されます。香典返しなども用意しなければならなくなり、それがかえって負担になることもあります。親世代と離れて暮らす子世代が喪主を務める場合はとくに大きな負担になりそうです。
そしてそのことは、遺族にとって満足できる葬儀ではなかった、と後悔につながることもあります。
また、参列者が多いほうが葬儀全体の費用はかさむものの、香典も多くなるため収支で見ればプラスになることが多いのも事実のようです。
実際に「第5回お葬式に関する全国調査」では、受け取った香典の平均費用は47.2万円で、2020年の71.1万円と比較すると23.9万円の下落となりました。これは参列者の減少が影響しているようです。
参列できない人は供花を送ることが多いため、それが祭壇の華やかさにつながるというメリットもあります。もともと参列者が少ない場合は、そうしたメリットも期待できません。
費用を抑えた結果、祭壇がみすぼらしい、葬儀スタッフが足りない、など葬儀の品質に影響するケースもあるようです。もちろん葬儀社によっては様々な工夫で費用を抑えているところも少なくありませんが、費用の比較だけではそこまではわかりません。
また葬儀社によって見積もりの表記にばらつきがあり、単純に費用だけで比較できない点も注意したいものです。例えばA社はドライアイス代を1日当たりで算出、2日目以降は追加料金になるのに対し、B社は3日間の総額で算出している、などです。
インターネットだけの比較だと、どうしてもこの差に気づきにくいでしょう。
納得できる葬儀のための準備とは
費用を抑えつつ、家族に負担をかけずに希望する葬儀にするためにはどうすればいいのでしょうか。
まずは事前に葬儀社の目星をつけておくことです。あくまでも目星であって、事前予約や、予約金の支払いまでは必要ありません。
実際の葬儀時には変更になっている事項も多いためです。A社、B社と直接対面して希望する葬儀の内容を伝え、内容を吟味し、見積もりを依頼します。そのときの葬儀社の対応、印象なども判断材料になるでしょう。できれば将来喪主になるであろう家族の代表にも同席してもらい、納得できる形を探っていきます。
同席が難しい場合でも、大切なことなので、複数の葬儀社から見積もりをもらっていることは家族に共有しておきましょう。
実際の葬儀の際は改めて見積もりを取る必要がありますが、その際には、葬儀社に以前見積もりを依頼していた旨を伝えましょう。実際に依頼する際には以前の見積もりが貴重な情報になり、スムーズに事が運ぶ可能性があります。
事前準備をしっかりと行うことが、見送られる側も見送る側も満足できる葬儀につながる第一歩といえます。
私の地域では会員制も多い
私の住む長野県では、葬儀社の会員になり、会費を積み立てる形態も多いようです。会員になることで割引などの特典を得ることができます。私は喪主として3回の葬儀を執り行っていますが、いずれも会員になっている葬儀社に依頼しました。3回のうち、いわゆる一般葬が2回、家族葬が1回を執り行っています。
私の子供が葬儀社関連グループ企業の職員だったため、具体的な構想もなく、会員になって積立をしていました。葬儀は挙式と違って、予定されているものではなく、ある日突然行わなければならなくなる場合も少なくありません。
こうした経過から有難いことに、私は葬儀社選びでは迷いは伴いませんでした。死去に至るまでは、看護や介護に追われる親族も少なくありませんので、生前のうちに葬儀社の目安を立てておくことは、喪主等の負担を少なくする方策のひとつといえます。
生前の対策が重要!
葬儀社の目安をつけておくことも重要ですが、円満で円滑な相続のため、遺言書を残しておくことは、残された家族の負担を減らすためにも最重要事項と言えます。
遺言書の中では、葬儀等を執り行う者を指定しておくことも可能ですし、何よりも相続人同士が遺産分割協議を行わなくても、相続手続きに着手できるメリットがあります。
とくに、公正証書遺言は公証人が関与するため、遺言が無効になる可能性が極めて低く、かつ、遺言執行者を指定しておくことで、スムーズな遺言執行が可能になります。
遺言執行者は、個人だと死亡リスクもあり、遺言執行ができない場合もありますので、予備的遺言執行者として法人(死亡リスクがない)を指定しておくなどの工夫が必要です。
ディアパートナー行政書士事務所では、予備的遺言執行者に地元の税理士法人を指定する準備もありますので、安心してご依頼を承ることができます。また、公正証書遺言で必要な2名の証人についても、遺言執行者及び予備的遺言執行者が立ち会う用意がありますのでご安心ください。
何もしないことのリスク
葬儀社の目安選びから遺言まで、話は大きく広がりましたが、一番やってはいけないことは何でしょうか?
それは「対策を何もしない」ということです。何も手を打っていない場合、残された家族の負担は想像を絶するものがあります。
ディアパートナー行政書士事務所では、生前の相続対策全般のご相談を承っております。
自分の行く末の「何が問題か?」を特定できていない方もいらっしゃると思います。思い当たった時には、ディアパートナー行政書士事務所にお気軽にご相談ください。