【後期高齢者医療制度】一定以上所得で医療費負担が2割に

みなさん、こんにちは!「家族信託」や「遺言書」など生前の相続対策に特化した取組を行うディアパートナー行政書士事務所です。

今回は、10月の後期高齢者医療制度の改正により、75歳以上の後期高齢者が負担増につながることについて、日本FP協会「FPいまどきウォッチング」に記事が掲載されていましたので、それに関して投稿していきます。(いまどきウォッチング 2022年08月18日)

後期高齢者医療制度の改正

後期高齢者の医療機関等での自己負担は原則1割ですが、後期高齢者医療制度の改正により10月からは新たに2割負担の区分が設けられます。2割負担の対象となる人の要件や配慮措置などを紹介します。

自己負担割合変更の概要と背景

後期高齢者医療制度には、75歳以上の人全員と65歳~74歳で寝たきり等の一定の障害がある人が加入します。

治療や投薬を受けたときの自己負担割合は原則1割(現役並み所得者は3割)となっていましたが、2022年10月より一定以上の所得がある人は2割負担と、3段階の区分に変更となります。

今回の改正で、後期高齢者医療制度の被保険者の約20%が変更対象となり、医療費の自己負担が増えることになります。

後期高齢者の医療費のうち、自己負担を除いた部分の約4割は現役世代の負担(支援金)となっており、今年度以降、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり始めることから、今後も負担が増えていく見通しとなっています。

現役世代の負担を抑え、国民皆保険制度を継続させていくという目的が今回の後期高齢者医療制度改正の背景にあります。

自己負担割合2割の対象者は?

後期高齢者の自己負担割合は世帯単位で決まります。2022年10月以降の自己負担割合は、以下の流れで判定されます。

出所:厚生労働省「後期高齢者医療制度改正の周知広報用リーフレット」

※1 後期高齢者医療の被保険者とは75歳以上の方と65~74歳で一定の障がいの状態にあると広域連合から認定を受けた方です。

※2 「課税所得」とは住民税納税通知書の「課税標準」の額(前年の収入から、給与所得控除や公的年金等控除等、所得控除(基礎控除や社会保険料控除等)等を差し引いた後の金額)です。

※3 「年金収入」には遺族年金や障害年金は含みません。

※4 課税所得145万円以上で、医療費の自己負担割合が3割の方です。

※5 「その他の合計所得金額」とは年金収入以外の事業収入や給与収入等から、必要経費や給与所得控除等を差し引いた後の金額のことです。また、給与所得がある場合は、給与所得金額から10万円を控除します。

まず、課税所得145万円以上等の「現役並み所得者」に該当する後期高齢者がいる世帯は、これまで同様、世帯全員が3割負担となります。

世帯内の後期高齢者に課税所得が28万円以上145万円未満の人がいる場合には、後期高齢者の人数と「年金収入(遺族年金・障害年金は除く)+その他の合計所得金額」によって、自己負担割合が決まります。

自己負担割合が2割となるのは以下2つの場合です。

①世帯内に後期高齢者が2人以上いる、かつ「年金収入+その他の合計所得金額」が320万円以上

②世帯内の後期高齢者が1人で、かつ「年金収入+その他の合計所得金額」が200万円以上

上記①②のいずれにも該当しない場合は、1割負担のままです。

2割負担が導入されるのは2022年10月からのため、2021年の課税所得や年金収入をもとに2割負担と判定された世帯は、2022年10月~2023年7月までの間、自己負担割合が2割となります。2023年8月以降は、前年の所得をもとに8月~翌年7月までの自己負担割合が決まります。

3年間は配慮措置あり

2割負担となる人には、施行後3年間(2025年9月まで)は、自己負担割合引き上げによる1ヵ月の負担増加額を3,000円以内に抑える配慮措置があります。ただし、入院の医療費は対象外です。

例えば、1割負担で1ヵ月に5,000円を負担していた人が2割負担になると10,000円の負担となり、5,000円の負担増となりますが、配慮措置により3,000円の増加(計8,000円の負担)に抑えられます。

同一の医療機関での受診については上限額以上窓口で支払わなくてよい取扱いとなり、そうでない場合には差額が後で払い戻しされます。

なお、高額療養費制度により1割・2割負担の場合の外来の自己負担限度額は個人ごとに月18,000円(年間144,000円)となっています(住民税非課税世帯の方を除く)。配慮措置がなくなっても、負担が必ずしも2倍になるとは限らない点を覚えておきましょう。

年金の繰下げに注意?

総務省の労働力調査によれば高齢者の就業率は年々上昇しています。

しかし、65~69歳が46.6%、70~74歳が30.2%なのに対し、75歳以上の就業率は9.8%(いずれも2018年)と低い水準になっており、後期高齢者の収入の中心は公的年金であることがわかります。

今年4月から、年金の繰下げが75歳までできるようになり、年金が最大84%増額されるようになりました。

これまでも、年金の繰下げにより所得が増えることで、毎年納める税金・保険料が増加し、結果的に手取りが減少してしまう可能性がありましたが、今後は後期高齢者医療保険の自己負担割合増加も併せて考慮に入れる必要が出てきます。

繰下げによって年金収入が320万円以上(2人以上世帯)、200万円以上(単身世帯)となることが見込まれる場合、繰下げによるメリットと医療費の増加というデメリットを考えながら、年金の受給開始時期を検討する必要があるでしょう。

自己負担割合が1割から2割へ変更となる後期高齢者世帯にとって、家計に与える影響は見過ごせません。

まとめ

公的年金の受給額が増えるから(また、年金受給しなくても生活していけているのいう前提はあるのですが・・・)という理由ののみで、年金の繰下げを選択するのは、後期高齢者医療保険の自己負担割合増加につながるリスクがでてきます。

年金の繰下げを行う予定で年金受給していない場合も、予想される年金収入の状況を見ながら、途中から年金受給を申請するのも一手です。途中からの年金受給ですので、それまでの期間は繰下げにより年金が増額されます。

これでもまだ、リスクが解消されない場合は、遡って一括請求することができますので、この方法を活用することもできます。

年金の繰下げをしている最中、今後どのように受取るかは、繰り下げしている人が自由に選択することができます。すなわち、決定権は繰り下げしている人の手中にあります。

「70歳まで繰下げ」、「75歳まで繰下げ」と心に決めたからそのまま実行するというのではなく、医療制度や他の制度の改正に合わせて弾力的に変更する必要があります。

今後も、現役世代の負担の軽減・緩和を目的とした制度改正が行われる可能性が大きいので、その都度、見直していくことが重要です。

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