中高年の味方? 改正iDeCoの活用法について
皆さん、こんにちは!「家族信託」に特化した取組を行うディアパートナー行政書士事務所です。
今回は、日経ヴェリタス2021年12月26日号に、経済コラムニストの大江英樹さんの「人生100年こわくない・定年楽園への道」を参考に改正iDeCoの活用法を考察してみます。(投稿中の専門家という記述は大江英樹氏を指します)
2022年の制度改正でiDeCoの使い勝手が向上する
2022年からiDeCo(個人型確定拠出年金)の制度が変わり、従来以上に使い勝手がよくなることが期待されます。ただし注意しておくべき点もあるため、いくつか指摘していきます。
今回の改正で最も大きな変化は「加入要件が変わる」です。もう少し具体的に言うと、
A.65歳まで加入できるようになる(2022年5月1日~)
B.企業型確定拠出年金の加入者もiDeCoに加入できるようになる(同年10月1日~)
という2点、そして
C.受取開始時期の選択肢が60~70歳だったのが75歳まで拡大される(同年4月1日~)
という点です。
Aについて言えば、加入年数が増えるため老後資金を積み増しできる期間が増えるし、掛け金の所得控除メリットも5年間延長されるのは誠に結構なことです。またiDeCoの場合、加入期間が10年以上ないと60歳からの受け取りができないため、50代に差し掛かると加入をためらう人が多かったのは事実です。(私も還暦を過ぎましたが、加入期間が足りずに受取れていません!)
ところが今では60歳以上でも8割以上の人が働いているといわれています。したがって公的年金同様、iDeCoの受け取り開始も65歳以降という人が増えるでしょうし、加入可能期間が65歳までになるのであれば、50代前半に加入しようという人も増えてくると考えられます。
65歳までの加入には諸条件
このように65歳まで加入期間が延長されるのは良いことですが、注意しておくべき点があります。それは、「全ての人が65歳まで加入できるわけではない」ということです。iDeCoの加入要件は「国民年金被保険者であること」となっています。
ご存じの通り、国民年金の加入可能年齢は60歳までが原則です。ただサラリーマンが60歳以降も厚生年金に加入して働くのであれば自動的に基礎年金に加入することになるので、iDeCoへの加入はできますが、自営業やフリーランス、あるいは専業主婦などは60歳までしか国民年金への加入ができないため、60歳以降にiDeCoに加入することは原則としてできないことになります。(私の場合、一人合同会社の代表社員になって、厚生年金に加入しているため、iDeCoにも2022年5月以降、再び加入できるようになります!)
ただし、国民年金保険料の納付期間が40年に達していない場合は、60歳以降も任意で国民年金の加入者となって保険料納付を続けることができますので、この場合は自営業などでもiDeCoには加入できることになります。
逆に60歳以降、サラリーマンが再雇用で勤務する場合であってもフルタイムの勤務でなければ、厚生年金に加入しないケースも出てきますので、この場合も60歳以降のiDeCoへの加入はできないことになります。キーワードは「国民年金加入者であるかどうか」ということになります。
Bについて言えば、従来でも企業型の加入者がiDeCoに入ることは、法律上は不可能というわけではありませんでした。ただし、それが可能となるためには会社が承認し、労使で協議の上、規約を変更することが必要でした。これがiDeCo加入の大きなネックとなっていました。
具体的な例で言うと、仮に企業型確定拠出年金の掛け金上限額が5万5000円の場合、個人型の上限は2万円なので、合計で上限の5万5000円を超えないよう企業型の上限額を3万5000円まで減らす必要がありました。
掛け金が少ない加入者の場合であれば問題ないが、仮に上限一杯の5万5000円を会社が拠出している場合、会社の掛け金部分が個人の掛け金に振り替わるだけなので、加入者個人にとってのメリットは全くないことになります。したがって法律的には可能でも現実に実施しているところはほとんどなかったのが現状でした。
ところが今回の改正では企業型の掛け金上限額を変えることが不要となるので、企業型の上限額に達していない部分だけをiDeCoを使って自分が拠出すればよいということになる。
ただしこの場合iDeCoの掛け金は上限2万円ですので、企業型との合計で5万5000円を超えることはできないことから、会社の掛け金が3万5000円までの間はiDeCoで2万円拠出できますが、昇格・昇給で会社の掛け金が3万5000円を上回るようになるとiDeCoの掛け金を減らす必要が出てきます。従来に比べると制度はシンプルになり、自由度や選択肢が広がってきたことは間違いありません。
マッチングかiDeCoか
また「マッチング拠出」といって、企業型において会社が出す掛け金に従業員が上乗せして拠出する仕組みがありますが、従来、この仕組みが導入されている企業ではiDeCoへの加入はできませんでした。ところが今回の改正では従業員によって企業型の上乗せ拠出であるマッチングか、個人型であるiDeCoへの拠出かのどちらかを選べるようになります。
この場合マッチングであれば、①会社の掛け金を超える拠出ができない ②会社の掛け金と本人の掛け金の合計額が拠出限度額を上回ることができない、というルールになっていますし、iDeCoへ加入する場合は、①iDeCoの限度額以下で、かつ②会社の掛け金とiDeCoの合計が企業型の上限以下という両方を満たさなければなりません。
少し複雑に見えるが、ごく簡単に言えば、若い従業員で会社が出す掛け金が少ない場合はiDeCoを使った方が良いでしょうし、そうでない場合はマッチングを使う方が良いということになります。具体的な金額の例や詳細は、国民年金基金連合会のサイトを参照してください。
マッチングとiDeCo、どちらが良いかは金額もさることながら、その他の条件も考える必要があります。残念ながら企業型にはあまり良質な商品がラインアップされてない場合もあるため、そういった場合はiDeCoを使って自分で選ぶ方が良いと考えられます。
逆にiDeCoの場合は口座を別に作ることになるため、その口座料は自分で負担しなければなりません。マッチングだと企業型に含まれるため、新たな口座料負担は発生しません。これらの条件を総合的に勘案し、自分にとってメリットがより大きいと思う方法を選べばよいと専門家は言っています。
Cの受取開始時期の選択肢が広がることは、確かによいことですが、気をつけなければならないのは公的年金の繰り下げとは意味が異なることです。公的年金の場合は、繰り下げることで受給額が間違いなく増えるため有力な選択肢になるものの、iDeCoの場合は運用の結果によって給付は変わってくるので、長く運用したから必ず増えるというわけではありません。
下手をすると延ばしたことで値下がりすれば受給額も減り、その間の口座料も負担しなければならないということも起こり得ます。そうしたリスクも十分に考えた上でライフプランに合わせて考えるのがよいでしょう。
新制度生かした資産形成を
最後にiDeCoの加入年齢延長で注意しておくべきことを挙げます。それは公的年金やiDeCoを受取りながらiDeCo加入はできないということです。
60歳から公的年金を繰り上げ受給したり、iDeCoの受け取りを始めたりすると、自分の意思で「受給者」になったとみなされるため、老後のための年金を準備する制度であるiDeCoに加入することはできなくなります。ただし、会社の退職金や企業年金を受け取ることは問題ないので、iDeCoを受け取る時にはうまく組み合わせを考えればよいことになります。
このように制度が改善されて使い勝手は良くなるものの、細かい点では注意すべきこともありますが、40代後半や50代からでもiDeCoの利用価値が大きく向上することは歓迎すべきことです。ぜひ有効に使って資産形成を図りたいものです。
まとめ
改正iDeCoをはじめとして、公的年金の受取り時期など、受給者自らが選択しなければならない選択の幅が大きく広がります。選択できる幅が広がることは歓迎すべきことなのでしょうが、ベストな選択をするためには「日々、勉強」なのでしょうね。
資産を形成する時期は当然ですが、受給する年齢になっても、最新の情報をもとに良く良く考えてチョイスしていきたいものです。