新紙幣発行の経済効果とキャッシュレス化は?

こんにちは!「家族信託を活用した生前相続対策」などに特化した取組を行うディアパートナー行政書士事務所です。

今回は、2024年に発行が予定される新紙幣発行の経済効果とキャッシュレス化について、日本FP協会会員Webの「エコノミストの視点」から第一生命経済研究所 経済調査部首席エコノミスト 永濱 利廣さんの記事を参考に考察してみます。

千円、5千円、1万円紙幣が2024年度上期をめどに一新されることになっています。新紙幣への移行に伴い、様々な需要が発生することが予想されています。 約20年ぶりとなる紙幣デザインの刷新の目的やこれまでの経緯、経済効果、またキャッシュレス化が進む現代で過去の刷新との相違点、等について解説していきます。

一般的な偽造防止対策に加え、改元を契機とした可能性

新紙幣の一般的な目的や動機としては、偽造防止とされています。このため、今回の刷新も最大の目的は偽造防止であることが推察されています。

しかし、前回の紙幣刷新は、発表が2002年8月に対して流通開始が2004年11月であり、発表から紙幣刷新までの期間が約2年でした。

これに対して、今回は発表が2019年に対して紙幣刷新が2024年となり、発表から刷新までの間隔が5年もあり、通常より長い印象を受けます。

この背景として市場では、恐らく改元と発表時期を合わせる意向があったものと推察されています。また、今回の紙幣刷新の別の狙いとしては、「タンス預金」のあぶり出しが隠れていることが推察されるのです。というのは、こうした現金退蔵は資金洗浄や租税回避の温床になりうるとされているからです。

そして、日本銀行の「資金循環統計」によると、2021年6月末時点で家計部門が保有する現金が、前年同期比4.9%増の102兆円と過去最高となっており、高齢者を中心に自宅で現金を保管する「タンス預金」を増やす傾向が強まっていることが挙げられます。

事実、前回の新紙幣刷新時には、新紙幣刷新の公表から流通開始までの期間に、日銀の資金循環統計における家計部門が保有する現金の増加率が低下していることが確認できました。

当時は民間銀行に公的資金投入が決まる等、金融システム不安が緩和に向かった時期と重なり、現金退蔵の動機が低下した要因も考えらますが、少なくとも政策当局側としては、紙幣刷新の要因も少なからず寄与したと考えている可能性があります。

キャッシュレス化促進の狙いも

ただ、前回の紙幣刷新後の家計部門における現金保有の伸び率を見ますと、徐々に伸びを加速させていることがわかり、紙幣刷新で「タンス預金」の保有をはじめとした紙幣を保蔵する動機を抑制する効果は限定的といわざるを得ない状況です。

となると、今回の紙幣刷新にはタンス預金のあぶり出し以外に、主要各国から遅れるキャッシュレス化を促進する狙いもあると推察されます。

実際、経済産業省が2020年に公表した「キャッシュレスの現状及び意義」によりますと、日本のキャッシュレス決済比率は2019年時点で約27%にとどまっており、最もキャッシュレス決済が普及している韓国(9割以上)を筆頭に、英国や中国(約7割)、豪州やカナダ(約6割)と比べると、圧倒的に低水準だったことがわかります。

このため、日本政府は2025年までにキャッシュレス決済比率を約4割、将来的には約8割まで拡大する目標を掲げています。そして、その大きな目的は主に3点あり、まず1点目は、コロナショックにより消滅しているが、インバウンド消費の拡大にあります。

実際、日本政策投資銀行が2019年に実施した調査によれば、中国人観光客の約2割が日本のキャッシュレス決済の普及状況を不安視しているという結果が出ています。また、コロナショックにより現金授受に伴う感染リスクに不安を感じる人が増えていることもキャッシュレス化の後押しとなると思われます。

2点目が、キャッシュレス決済に伴う人手不足緩和や生産性向上です。中でもキャッシュレス決済が有効性を示すのが、レジ現金残高の確認作業といわれています。

実際、野村総合研究所の調査によりますと、レジ1台におけるレジ現金残高の確認作業は平均25分/日となり、1店舗当たりでは平均153分/日かかっているということです。このため、こうした分野でのキャッシュレス化に伴う生産性向上が期待されています。

そして3点目が、現金決済のインフラコストの削減です。事実、現時点で現金決済インフラを維持するために、ATM設置や運用など多くの項目で年間約1.6兆円を超えるコストが発生しているという調査もあります。このため、将来キャッシュレス化が十分進めば、金融機関や小売業等を中心に、こうしたインフラコストの削減が期待されています。

こうした背景もあり、今回は2019年10月に実施された消費増税の影響を軽減する策の1つとされた中小小売店でのキャッシュレス決済を普及させる政策や、マイナンバーカードを活用して自治体ポイントを付与する政策などと連動させることで、「タンス預金」をあぶり出すとともに、キャッシュレス化を推進する狙いが政府にはあるものと推察されます。

回収特需は前回ほど大きなものは期待できず

今回の新紙幣刷新により、紙幣の図柄など仕様が変更されます。となれば、紙幣の識別には画像認識や大きさなどを読み取る必要が出てくるため、今回の新紙幣刷新に伴い、金融機関のオープン出納システムやATM、自動販売機などの特需が発生することが予想されています。

なお、今回の紙幣には3次元ホログラムなど新技術を導入する一方で、紙幣の寸法の変更は前回同様にないということです。このため、ハード面の更新需要は限定されることが予想され、ソフトウェアの更新需要が中心になりそうです。そして、財務省が新紙幣刷新発表直後の2019年4月10日に衆議院財務金融委員会で示した日本自動販売システム機械工業会の試算によれば、今回の新紙幣による現金取り扱い機器の改修特需として約7,700億円のコストがかかる見込みとしています。

ただ、金融機関向けのATMなどでは営業店舗の減少やキャッシュレス化等に伴い、貨幣流通量の減少が予想されており、関連業界の事業環境が前回の紙幣刷新時と異なる点には注意が必要だと考えられます。実際、全国銀行協会のデータに基づけば、銀行などCD・ATM設置台数は2010年の11万1,963台から2020年には9万7,895台まで減少しています。

一方、流通業やコンビニエンスストアなど小売業向けのATMは店舗数の増加などから前回よりも更新需要が拡大することが期待されています。実際、日本フランチャイズチェーン協会のデータに基づけば、コンビニの店舗数は2010年の4万3,372店から2020年には5万5,924店まで拡大している状況です。

しかし、こうした小売業向けのATMは金融機関向けよりも単価が安く、更新サイクルが短いという事情もあるようです。また、日本自動販売システム機械工業会の調査によると、自販機の普及台数は減少トレンドにあり、2010年までは520万台を維持していたが、2020年時点では404万台まで減少しています。

このため、今回の紙幣刷新に伴うATMや自販機の改修特需は前回ほど大きいものは期待されておらず、特需の出現時期も分散されることが予想されています。

まとめ

コロナ禍で進展した非接触機会の増大や仮想通貨の進展など、キャッシュレスの波は今後、ますます大きくなるものと考えられます。

リモートワーク化やキャッシュレス化、コロナ禍で大きく進展した感がありますが、コロナが収束したからといって、元に戻ることはありえないでしょうね。コロナによって、進展する時間軸が縮まったにすぎません。

私のような還暦を過ぎた者でも、オンライン会議やキャッシュレスを使いこなしいかなければ、より良い生活をしていけません。お互いに、時代に乗り遅れないようにしたいものです、ホント!!

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