ローン(抵当権)が付いている不動産は家族信託できる?
みなさん、こんにちは!「家族信託」に特化した取組を行うディアパートナー行政書士事務所です。
住宅ローンや、アパートローンを銀行等の金融機関から借りている場合、その担保として不動産に抵当権が付いています。
このようなローン(抵当権)付の不動産を家族信託したい場合、「そもそもローン(抵当権)付の不動産って信託していいの?」とか、「金融機関の手続きがいるの?」などの疑問が生じると思います。今回は、ローン付き不動産について解説していきます。(当事務所と業務提携しているトリニティグループのコラムを参考)
ローン(抵当権)が付いていても信託できるの?
民法上は、ローン(抵当権)が付いている不動産を名義変更する場合に、金融機関の承諾は不要です。
ローン(抵当権)付の不動産を名義変更した場合、抵当権は不動産の上に付いたまま移転するので、金融機関は新所有者に対しても抵当権を行使することができます。したがって、金融機関の承諾なく、勝手に名義変更することは、手続き上はできてしまいます。
しかし、金融機関との間には、ローンを借りた際に締結した取引約定書という契約書があり、勝手に名義変更をして黙っていると契約違反になります。最悪の場合、残っているローンを一括返済するように請求される可能性があります。
つまり結局、勝手にやるとまずいです。必ず金融機関に事前に相談しましょう。
ローン(抵当権)付不動産を信託する2つのパターンとは
金融機関に相談して、ローン(抵当権)付不動産を信託する場合、大きく分けて2つのパターンに分けることができます。
①ローン(抵当権)付不動産の名義変更について、承諾だけしてもらうパターン
②ローンを信託内借入れに移すパターン
以下、順に見ていきましょう。
①ローン(抵当権)付不動産の名義変更について、承諾だけしてもらうパターン
事例として、委託者兼受益者である父が、長男を受託者として信託をする場合で考えてみましょう。
父は、銀行から借入れをして建築したアパートを持っており、銀行の抵当権が付いています。借入れの債務者は、父です。
このアパートを長男に信託しようとする場合に、銀行に相談したところ、債務者はこれまでどおり父のままとして変更しないで、アパートの名義を長男に変更してもいいですよと、名義変更についての承諾だけしました。
これが①のパターンです。
借入れの債務者は父で、アパートの所有者は長男になるといういわゆる物上保証という形態です。
債務者と所有者が別になるため、金融機関によっては、念のため放棄書(抵当権消滅請求権の放棄書)といった書類に受託者である長男に一筆求めてくる場合もあります。
②ローンを信託内借入れに移すパターン
先ほどの事例で、銀行から、不動産を名義変更するなら、借入れの債務者も父から受託者である長男へ変更してもらわなければ困ると言われました。債務者を変更するには債務引受が必要となります。債務引受とは、債務をそのまま第三者(引受人)に移すという契約です。
債務を引受人に完全に移してしまい、元の債務者が支払いを免れるという免責的債務引受により、借入の債務者を父から長男へ変更し、受託者である長男の借入れとして、信託財産で返済していくこととなりました。
これが②のパターンです。
借入れを信託内借入れに移すということは、信託法上は、借入れを信託財産責任負担債務とするということです。
長男は、基本的に信託財産で返済していくこととなりますが、信託財産で足りなくなれば最終的に自分の財産からも返済しなければなりません。
借入れを信託財産責任負担債務とするには、信託契約において、借入れをすることが受託者の権限であるとされていることが必要ですから、信託契約に借入れをする権限をきちんと書いておく必要があります。
また、借入れを父から長男に変更するためには、銀行内部での審査が必要になります。金融機関によっては、審査料として数十万円かかったりする場合もあります。
審査にかかる時間も2、3か月ほどかかる場合もありますから、早急に認知症対策が必要な場合は、現実的ではないこともあります。
また、債務を父から長男へ完全に移してしまう免責的債務引受けの場合だけでなく、父と長男双方が債務を負担する併存的債務引受が必要になる場合もあります。
その他にも、委託者等を保証人とすることや、受益権に質権を設定するなど金融機関により対応は様々です。
まとめ
以上、見てきたように、ローン(抵当権)が付いている不動産であっても、家族信託はできますが、借入れ先の金融機関により対応が全く異なるので、事前に金融機関に相談してみることが大切です。