母が認知症になった場合の財産管理や相続が不安!
みなさん、こんにちは。家族信託に特化したディアパートナー行政書士事務所 代表の瀧澤です。
ディアパートナー行政書士事務所では「家族信託」や「遺言書」、「任意後見」など生前の相続対策に特化した取組を行っています。
日本FP協会の機関誌「FPジャーナル」11月号に興味深い掲載がありましたので、投稿します。
当該誌の特集「2025年、5人に1人は認知症」に備える、支えるみんなのシニア相談の5つの相談のうちの一つです。
相談内容
父の死後、母は元気がなく常にぼんやりしています。もし、母が認知症になったら、財産管理は同居している自分が行う予定ですが、別居している弟から、母の財産を勝手に使っているのではないかと疑われたり、将来遺産相続で文句を言われないか心配です。
母が父から相続した賃貸併用住宅の管理や、認知症になったときのトラブルについても不安があります。今のうちに、母の財産管理や将来の相続について準備することがあれば教えてください。
目指したいゴール(対策目標)
将来、母が認知症になった場合でも、長女が母の預貯金や不動産をしっかり管理して、長男とトラブルにならないようにしていく。
また、賃貸併用住宅の収益の配分や、相続の際に問題が生じないように対策を立てておきたい。
困ること、解決策の把握
独身のEさんは、実家で母と2人暮らしです。パート勤めですが、母には賃貸併用住宅の賃料収入があるため、生活に困ることはありません。しかし将来、母が認知症になった場合や死亡した場合、この生活を維持できるのか、また、将来弟から不満が出てこないか心配だということで相談に来られました。
まず、Eさんの母が認知症になり、判断能力が大幅に低下した場合、資産管理面でどんな支障が生じうるのかを検討しました。
①銀行口座や家計費の管理ができなくなる
母が、銀行口座から多額の預金を引き出して使ってしまう、光熱費の入金を忘れて電気やガスを止められる、キャッシュカードや通帳を何度もなくすといったトラブルは、Eさんがキャッシュカードや通帳を預かり、銀行の手続きを代わりに行えば解決しそうに思われます。
しかし、判断能力が大幅に低下した場合、銀行手続きのために委任状があっても有効性に疑問がありますし、銀行側の判断で口座が凍結されてしまう恐れがあります。
②不動産の管理ができなくなる
判断能力が低下すると、母自身が賃貸併用住宅の入居者の入退所時の契約や日常的な管理ができなくなるだけでなく、将来、建物の大規模修繕や建て替えが難しくなります。
もしEさんが母親の代わりに契約した場合、将来、契約が無効だとしてトラブルになる可能性があります。
③将来、相続でもめる恐れがある
別居する弟は、母の財産内容がよくわからないため、相続の際に異議を唱える可能性があるだけでなく、賃貸併用住宅をどう相続するかでもめる恐れもあります。
財産管理契約や任意後見制度、民事信託、遺言書の活用も
このように、母が認知症になった場合、相談を受けた者は、口座が凍結されて母やEさんが生活費に困るなど深刻な事態が予想されるため、早めに対策を立てる必要があることを伝える必要があります。
また、今後、母がどのような状態になるかを時系列に沿ってイメージ(図表1)してもらい、その際に有効となる書類を作成するようにアドバイスすることも必要です。
①財産管理等の委任契約書
骨折など身体的な理由で寝たきりになったような場合に、本人の指示により、銀行の振り込みや役所の戸籍謄本の取得など、様々な場面で使える包括的な委任状です。
現在でも事実上、Eさんは母の預金を管理していますが、もし弟からその根拠となる権限を問われたときに、この契約書があれば立証しやすくなります。
②任意後見契約書
将来、母の判断能力が大幅に低下した際に、Eさんが後見人として財産管理をするための契約書です。財産管理だけでなく、介護保険の申請や施設の入退所など生活全般に関する支援(身上監護)も可能です。
③遺言書
母の死後、残された預金や不動産をどのようにEさんと弟(法定相続人)に惣佐臆させるのかを指示するために、遺言書を作成します。最低限、弟には遺留分(相続人に最低限残された権利)を相続させることで、大きなトラブルにならずに済むはずです。
ただ、本件では、賃貸併用住宅をEさん、預貯金を弟に相続させると考えた場合、弟の遺留分(1/4)を侵害する可能性があるため、母が加入する生命保険の死亡保険金をEさんが受取り、そこから弟に代償金を支払う方法があります。
民事信託は他士業とのネットワークが不可欠
④民事信託(=家族信託です)
今回のように、親が賃貸物件を所有していて、相続人が2人以上いる場合は、家族間での民事信託(いわゆる「家族信託」)の利用も検討しましょう。
これは簡単にいえば、本人の財産を家族に一定目的で管理・運用してもらい、本人が生きているうちは本人が収益を受取り、死後は財産を家族のものにできるという仕組みです(図表2)。
たとえば、今回の例では、母の生活を守るために、母が委託者となり、賃貸併用住宅と金融資産の一部を、受託者であるEさん(長女)に信託して管理・運用してもらいます。
不動産の名義はEさんになりますが、賃料を母が受益者として受取るようにすれば、贈与税はかかりません。こうすれば、たとえ母が認知症になった場合でも、Eさんが賃貸併用住宅を管理するのに支障はなく、また、母の死後はそのままEさんが不動産を承継することができます。
イメージ的には、成年後見制度(判断能力が低下したときの財産管理)と遺言書(死後の財産承継)を兼ね備えたようなものと考えていただければ結構です。したがって、「家族信託=民事信託」は認知症対策と遺言の機能を有しているといえます。
今回は、母の死後は信託を終了させることにしましたが、終了させずに賃料をEさんと弟が均等に受け取れるようにしたり、最終的には弟の子どもに不動産を取得させるなど、様々な応用が考えられます。
成年後見制度と違って、すべての財産を信託するわけではないことや、民事信託では身上監護を行えないことから、民事信託のほかに遺言書や任意後見契約書の作成も必要になります。
民事信託の仕組みは複雑で、信託口口座(信託用の専用口座)の開設も必要となり、FP単独での提案は難しい場面もあるため、必ず民事信託に詳しい士業と提携するようにしてください。
認知症が原因で第三者に損害を与えた場合は
Eさんは、母が認知症になり、万一、電車の線路内に立ち入るなどして第三者に損害を与えた場合に、自分も賠償責任を問われるのではないかと不安をいだいていました。
鉄道会社と裁判になったケースでは、最高裁で、家族が防ぎきれない場合にまで責任を負わなくて良いという判断がなされましたが、どんなケースでも家族が責任を負わなくて済むわけではありません。
そのような場合に備えて、認知症の人が事故を起こした場合の損害保険商品が開発され、自治体が保険料を負担するケースもあることをEさんに伝えました。
最終的にEさんは、図表1の書類を作成するように決めて、専門家立会いの下、公証役場で書類を作り、その後、無事信託口口座も開設することができました。
Eさんの母も、これで将来の不安が和らいだと安心した様子でした。
注目される(家族信託=民事信託)
今回の相談では、家族信託や任意後見制度、遺言書などを有機的に組み合わせて対応していました。
こうした家族信託を活用した相続対策の組成は、実績豊富な専門家のネットワークが不可欠です。
私たちディアパートナー行政書士事務所では、全国トップクラスの「家族信託」組成実績を有するグループ企業「トリニティ・テクノロジー株式会社」と業務提携しながら取り組んでいますので、安全安心なサービスをご提供できます。(トリニティーグループには、弁護士法人、司法書士法人、行政書士法人の各士業法人も属していますので安心してお任せください。)
まずは、お気軽にご相談ください。