「下がりましたね~」個人が知るべき投資心得
こんにちは、ディアパートナー行政書士・FP事務所 代表の瀧澤です。今回は株式相場についての投稿です。
世界の株式市場が荒れていますね。新型コロナウイルス対策で世界の中央銀行がばらまいたおカネの回収が始まるのでは、という懸念などを背景に世界の金融市場に動揺が走りました。コロナ禍中から新規参戦し、コロナ後の上げ相場しか知らない新人投資家のなかには驚いた方もいらっしゃるでしょう。しかし、慌てる必要はありません。マーケットとはこういうもので、過去もこういったことの繰り返しです。
1000円下がる日もあれば1000円上がる日もあります。つみたてNISA(積み立て型の少額投資非課税制度)やiDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)など非課税の器を使ってコツコツ長期投資の航海に出た人であれば特に、今慌てて、とってはいけない行動はただ一つ。慌てて売却することです。
慌てて売るべきでない理由①~個人には決算期がない
大きな下落を目の当たりにすると「大損した」と思いがちになりますが、それは「含み損」でしかありません。元値と現値の差は単なる机上の数字です。個人にとっては、今すぐ対処しなくてはならない損失ではありません。そこに四半期ごとに運用成績を査定されるプロの投資家との大きな違いがあります。
こういう局面でいわゆる「売りが売りを呼ぶ」展開になるのは、人のお金を預かっているプロが損失を最少化するために売らざるを得ないからです。投資期間を自由に決められる個人投資家であればその特権を生かすためにも、反対売買の期限のあるようなレバレッジ取引からは適切な距離を置いておきましょう。そうすれば売却しない限り損失は確定しませんし、待てば海路の日和はあります。明けない夜はないということです。(ただし、何十年も塩漬けになっているのはいかがかとは思いますが・・・。私も今年、10数年来の塩漬け株を売却することができました!)
慌てて売るべきでない理由②~下げは積み立て投資の養分
とはいえ、バブル崩壊後の日本株の長期低迷を見るにつけこんな反論もありますよね。「30年かかってようやく以前の水準を回復したばかりじゃないか」「30年も待てない」「高値で投資していたらまだ3割も含み損がある水準だし」……。
確かに、高値で一括で投資した場合はその通りですね。しかし、長期投資の心強いお供「積み立て」で投資をしている場合はかなり様相が違ってきます。
つみたてNISAやiDeCo以外に会社員の人の確定拠出年金(DC)もそうだし、100円から可能な投資信託の購入なども積み立て型の一例です。値動きのある金融商品に対し、毎月など一定の間隔を設定して決まった額で買い続ける「ドルコスト平均法」なら下げ局面は貴重な養分となります。
「ドルコスト平均法」は、価格が下がれば買える量が多くなります。1000円の予算でリンゴを仕入れる時、1個100円なら10個しか買えませんが、翌月同じリンゴが半額に下がれば20個買えます。翌々月は逆に500円に値上がりすれば2個しか買えません。3カ月合計では投下資本3000円に対し手にしたリンゴは32個で単価は94円弱となります。1個100円に比べ仕入れコストは引き下げられていることになります。簡単な算数だが、積み立て投資とは自動的にこの「コスト引き下げ効果」を発揮してくれるシステムです。
いまや投資信託だけでなく、仮想通貨でも、この「ドルコスト平均法」を活用した積立ができます。私もビットコインを毎週、一定金額購入し始めました。(仮に無くなってしまっても悔しくない金額にとどめています!)
バブルの最高値で投資していても積み立てなら利益
「ドルコスト平均法」の効果を日経平均の値動きで検証することができます。
出発点はその年の年末にバブル最高値を付けた1989年とします。以来390カ月、毎月1万円を投じると仮定するので元本は390万円。これを一括投資していれば2万8000円割れの水準では当然3割近い損失になります。ところが積み立て投資の場合、下げ局面で増やした購入量の増加がモノを言ってきます。今でも評価額は700万円以上と大幅な含み益を持つ計算になります。このメカニズムに納得がいけば、時折訪れる荒れ相場は貴重な仕入れ機会と思えるはずです。今、慌てて売るのはその機会損失となります。
一方、アタマでは納得しても、荒れる相場のさなかで投資を始めるのは怖い、ちょっと落ち着いてからにしよう、そう思うかもしれませんね。しかし、その考えにはあまり意味はありません。何せ長期積み立て投資の場合、10年なら120分の1、20年なら240分の1のインパクトしかないのですから。いくらで投資を始めるか、「始値」にはあまり意味はありません。
「強制退出」にならないために
一方、出口の「終値」は大きなインパクトを持つことになります。一括投資でも同様だが、特に積み立て投資の場合、それまでせっせと仕込んだ量の増加があるだけに、決定的に重要な事項です。だからこそ暴落時にマーケットから退出するのが最悪の選択となります。
そうならないようにできることは何でしょうか? それは自分のリスク許容度との相談につきます。急いで現金化する必要がなければ、投資はいったん休止して相場の回復を待つ選択肢を持つことも可能です。投資に振り向ける額は途中退出しないですむ金額に設定することにしましょう。もしも、今回の下落で耐えられないほどの痛みを感じたとしたら、それは投資金額見直しのサインです。
見直しをしたなら、その後は日々の値動きに一喜一憂せず目線を高く保つことにしましょう。
投資の目的はなにか? 投資で何を実現したいのか? どんな投資家になりたいか? それを考えることが途中で退場せずに投資を続けられる秘訣のようです。
まとめ
時間を味方につける「ドルコスト平均法」。年齢が若いほどチャンスが広がっています。「売り時」の決定は大変難しいものですが、利益が出れば御の字と考えて、あまり欲をかかないことが賢明かもしれません。なにごともホドホドがちょうどよいのではないでしょうか。