自宅を担保に融資を受ける「リバースモーゲージ」とは?

 こんにちは、ディアパートナー行政書士・FP事務所 代表の瀧澤です。

 今回は、自宅を担保に融資を受けて老後資金を確保する仕組み「リバースモーゲージ」について投稿します。(出展:日本経済新聞 マネーのまなび 2021.8.14から)

注目されるリバースモーゲージ

 最近、自宅を担保に融資を受ける「リバースモーゲージ」に注目する人が増えてきています。この仕組みを活用すると、長寿化でリタイア後の生活が長くなるなか、自宅に住み続けながら一定の老後資金を確保できるためです。

 また、商品の多様化に伴って、利用のハードルが下がった面もあります。ただし資金の使い道に制限があったり、金利変動のリスクがあったりするなど注意すべきことも多いのが実情です。

 「年金生活を控えて住宅費の負担を減らしたかった」。都内に住む60代前半の男性は今年3月、残っていた住宅ローン約1,100万円を一括返済しました。この返済の元手は、自宅を担保にリバースモーゲージで借り入れた資金でした。

 この男性は今後、亡くなるまで毎月約27,000円の利息を払う必要はありますが、ローン完済前は月十数万円を払っていたのに比べて負担は約1/5に縮小しました。

リバースモーゲージとは?

リバースモーゲージの仕組みは?

 それではさっそく、リバースモーゲージの仕組みをみていきましょう。

1)お金を借りるためには、まず利用者が自宅を担保に差し入れ、金融機関は担保評価額の一定割合を融資限度額として決めます。

2)利用者は資金が必要になったときは、限度額内で一定の融資を受けたり、限度額を一括で借りたりします。

3)利用者が生きている間は、自宅に住みながら毎月の利息部分のみを払い、死亡時に相続人が家を売却するなどして現金で元本を返済する。

この 1)~3)までの流れが一般的です。

リバースモーゲージの仕組み

利用者は拡大している!

 利用する人は着実に広がっているようです。東京スター銀行の融資残額は2020年12月末時点で1,271億円となり、5年前に比べて約90%の増加となりました。増加の背景には老後資金への不安が根強いことがあるようです。

 国民年金や厚生年金などの公的年金は、原則として65歳から受け取ることができますが、高齢世帯では公的年金だけでは生活費を賄えず、貯蓄を取り崩す傾向があるとされています。

 一方、家計の資産の内訳をみると2019年末で住宅・土地などの非金融資産が占める比率は約38%と現預金を上回っているのが現状です。

 専門家は「自宅の資産価値を現金化することで、老後の資金計画を立てやすくなる」と指摘します。

 利用者が増えている裏には、リバースモーゲージを扱う金融機関が増え、商品が多様化していることも利用を後押ししているようです。

 楽天銀行は今年1月、ネット銀行で初めて本格的に参入しました。住宅金融支援機構が民間金融機関と提携する「リ・バース60」は、2017年に「ノンリコース型」というタイプを導入し、融資に弾みがついたということです。2020年度の融資実行額は、約141億円と2017年度の約16倍になりました。

ノンリコース型とは?

 リバースモーゲージは契約者が死亡した時点で住宅価格が大幅に下がっていると、自宅を売っても元本を返済できない恐れが出てきます。こうした場合は相続人が残りの返済を求められるケースが多いのですが、ノンリコース型は担保の売却代金を超える返済義務は生じないという点が特徴になります。

 リ・バース60を扱う金融機関は、住宅金融支援機構に保険料を支払っていて、債務が残っても機構から保険金を受け取れるために負担がありません。

利息元加方式とは?

 また、利用者が生前に金利を払うことを不要にした商品も増えています。「利息元加方式」と呼ばれ、金利は死後に元本に上乗せして支払います。

 みずほ銀行が2013年から手掛けたのに続き、東京スター銀行が2020年に70歳以上84歳以下の人を対象として参入しました。

親世代の意識の変化

 家の相続で、親の意識が変化していることも見逃せません。かつては、自分の住む家を子どもに資産として残すことを優先するのが一般的でしたが、最近は子どもが親と離れて住み、自分の家を持つことは少なくありません。自宅という不動産ではなく、現金を子どもに残したいという人も目立つと話す不動産事業者もいます。リバースモーゲージでは、自宅を残さないことや売却手続きの負担がかかることをあらかじめ子どもに説明するよう助言しているそうです。

民間金融機関独自の融資リ・バース60(※1)
資金使途
□幅広い
□住宅関連に限定
対象者
□おおむね50代以上
□50歳以上
対象物件
□担保評価額や地域などで条件も
□全国
融資限度額□担保評価額の10~80%程度

□限度額の範囲で必要なときに借りる方式が多い       
□担保評価額の50~60%以下(※2)で最大8,000万円までの必要額

□借り入れ時に全額を一括融資
返済方法□生存中は金利のみで死後に元本を一括返済

□死後に金利と元本を一括返済
□生存中は金利のみで死後に元本を一括返済
リバースモーゲージの主な特徴

※1)住宅金融支援機構の基本条件。実際の融資条件は取扱い金融機関が決める。

※2)50代は30%以下

リバースモーゲージの留意点は?

 実際にリバースモーゲージを利用するなら、どんな点に気を付ければよいのでしょうか。

資金の使途

 まず押さえておきたいのが資金の使途です。民間金融機関が独自に展開する融資商品は、一般に使い道が幅広く、生活に関する支出なら制限がありません。契約時に55歳以上84歳以下を対象にする東京スター銀行の利用者調査によりますと、最も多い目的は生活費や旅行費用などの「余裕資金」(29%)で、「住宅ローン以外の借り入れ返済」(20%)、医療・介護など「万一の備え」(16%)が続きます。

 一方、リ・バース60は使途が、建て替えやリフォーム、住宅ローンの借り換えなど住宅費用に限られ、借りた金額は即座に支払いに充てる必要があります。しかし、これら住宅資金をリ・バース60で賄えば、その分の現金を手元に残せるために老後資金に余裕ができるという考え方もできます。

 リ・バース60の詳細な融資条件は金融機関によって異なりますが、60歳以上の人が利用する場合、一般的な住宅は担保評価額の50~60%以下で金融機関が決める上限額まで借りられます。住宅金融支援機構の調査によりますと利用者の年齢は、2021年1~3月の平均で69歳で、53%が年金受給者でした。融資額の平均は1,415万円で、毎月の金利返済は平均3万円となっています。

金利リスク

 金利リスクにも留意をしたいところです。リバースモーゲージの金利は基本的に変動金利で、一般に年3%前後と住宅ローンよりも高く設定されています。金利が上昇すれば、支払いの負担が増えます。利息の返済が長期間にわたると、利息の支払い総額も膨らむことになります。

幅広く考える

 老後資金の計画として、長く働いたり、ある程度の資産運用をしたりするなど幅広く考える必要があります。生活費など支出を見直すことも大切になってきます。

 また、「リバースモーゲージを利用する必要があるかどうか慎重に考えるべき」と指摘する専門家もいます。

条件は厳しい

資産価値や収入など条件厳しく

 リバースモーゲージを利用する際は、自宅の担保評価や利用者の収入などで条件があることも知っておきたいところです。

 ある大手銀行では担保評価額について「大都市の好立地のマンションではおおむね実際の売買価格に近くなるが、一般的な住宅ローンよりは厳しく評価することになる」と話しています。

 東京スター銀行の商品は全国の住宅で利用できますが、担保評価額が戸建てで1,000万円以上、マンションは2,000万円以上という条件があります。金利の支払いが生涯続くため、年金などの収入が年120万円以上あることも条件になっています。

 利息元加方式では年収条件はないものの、戸建てで2,000万円以上、マンションで3,000万円以上とかなり厳しく設定されています。

 みずほ銀行の利息元加方式は対象地域が、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県に限られ、マンションは担保評価額が5,000万円以上となっています。

 このようにかなり条件は厳しそうです!

今後の課題

 一戸建ては築年数がたつと建物の資産価値があまり評価されないことも少なくありません。専門家は「欧米では中古住宅が資産として評価されるが、中古住宅市場が発展していない日本では担保と認められないことも多い」と指摘しています。

 リバースモーゲージが日本でさらに拡大するには、中古住宅市場の整備が重要となってきます。

まとめ

 リバースモーゲージの活用を考えられるのは、今の状況のままですと、大都市圏にある担保評価額が一定以上の不動産物件に限られる感じがしますね。地方は土地価格が安いですことから、中古住宅市場の発展を期待したいと思います。

 リバースモーゲージに限らず、今後いろいろな手法が考えられて、整備されてくる可能性もありますね。今後に期待です!

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