副業・兼業の現状と今後は?2017年統計調査から考える!
こんにちは、ディアパートナー行政書士・FP事務所代表の瀧澤です。
先だって「企業の従業員に対する創業支援制度」(日本経済新聞信越版から)をご紹介しましたが、それにヒントを得たような「副業・兼業」についての記事掲載がありましたので、考察してみます。
総務省の2017年の調査では、副業を希望する有業者は424万4千人で、25年前より5割近く増えました。政府は2018年1月に「モデル就業規則」を改定し、企業に副業の解禁を促しています。
コロナ禍で在宅ワークが広がった昨年以降は副業労働者が急増しています。人材仲介のランサーズ(東京都)の推計では、国内の副業・復業人材は、2020年から2021年で約15%増えたとされています。
副業・兼業の現状は?
総務省の2017年「就業構造基本調査」によりますと、近年、副業・兼業を希望する者が雇用者の実数・割合ともに増加傾向にあります。
この調査は5年ごとに実施されるので、最新もものが2017年のデータになりますが、コロナ禍により、在宅勤務やテレワークが進展した、ここ最近では、もっと増えているものと考えられます。
そして、実際に副業をしている雇用者(雇用者×雇用者)も、希望者同様に着実に増加しており、2017年時点で雇用者全体の2.2%の人が副業をしています。
(雇用×雇用だけでなく、)全体の副業者比率(有業者に占める副業がある者の割合)についてみますと、4.0%となっており、平成24 年に比べ 0.4 ポイント上昇しています。
雇用形態別にみてみますと「正規の職員・従業員」は 2.0%(0.2 ポイント上昇)、「非正規の職員・従業員」は 5.9%(0.6 ポイント上昇)となっています。やはり、「非正規」の人の方が副業者が多いようです。
一方、追加就業希望者比率(有業者に占める追加就業希望者の割合)についてみますと、6.4%となっていて、平成 24 年に比べ 0.7 ポイント上昇しています。
雇用形態別にみてみますと、「正規の職員・従業員」は 5.4%(1.1 ポイント上昇)、「非正規の職員・従業員」は 8.5%(0.4 ポイント上昇)となっています。やはり、こちらも「非正規」の人の方が多いようですね。
下のグラフは、副業者数(雇用×雇用)の本業ベースの雇用形態別の総人数の推移を示したものです。本業ベースで「パート・アルバイト」の人の人数が多いですし、伸び率も高くなっています。
下のグラフは、本業の所得階層別の副業者数です。本業の所得が200万円未満の人数が多くなっていることがわかります。また、所得階層別でみた雇用者総数に対する割合は、100万円未満と1,000万円以上が高くなっています。
副業・兼業している理由
副業・兼業をしている理由として、副業・兼業をしている者の半数以上が「収入を増やしたいから」としており、金銭的な理由が多くみられる中、「自分で活躍できる場を広げたいから」、「様々な分野の人とつながりができるから」、「現在の仕事で必要な能力を活用・向上させるため」といったキャリア形成や自己啓発のために行う層も存在しています。
また、足下では新型コロナウイルス感染症の感染拡大によるリモートワークの普及や休業・失業に伴う余暇の増加によって、副業・兼業を始めた者が増加したと考えられます。
企業側の副業への容認は
副業・兼業を希望する者が増加している一方で、内閣府の調査によりますと、企業が副業を許容している割合は全体の3割程度と、企業側が副業・兼業を認めていないケースが多くなっています。
上のグラフを見ていただいてもわかるように、企業規模が大きいほど「副業禁止」という傾向が強くなっており、「生産性や売上が落ちると考えているから」、「利益相反や情報漏洩を懸念しているから」、「労務管理が困難だから」などが主な理由となっています。
従来のように、OJTを通じた従業員教育だけではなく、最近では特に規模が大きい企業において、働き手が自ら能力開発を行う傾向が強まっていますので、こうした動きは、副業・兼業による能力の有効活用や、それを通じた働き手のスキルアップが今後重要になっていく可能性を示唆しているかもしれません。
そうはいっても、企業にとって副業の容認は、従業員の本業に対する意識の減退や、企業への帰属意識の希薄化を招きかねないという懸念もつきまといます。
日本型雇用の変容
最近の傾向として、副業・兼業を希望する者が増加している背景に、急激な産業構造の変化や人生100年時代に伴う日本型雇用の変容が要因として考えられています。
「日本型雇用システム」は、長期雇用を前提とした新卒一括採用・年功序列型賃金・人事配置や労働時間管理に関する雇主側の広範な裁量性等の特徴を持ち、労働者は一つの企業で職務転換や転勤といった配置転換を繰り返し経験し、長く勤めることが一般的でした。
しかし、近年ではグローバル化やデジタル化の進展に伴う産業構造の変化や労働力人口の高齢化等に起因して、賃金カーブのフラット化や企業がジョブ型雇用を取り入れる動きがみられています。
下の表は、大手企業のジョブ型雇用導入例をまとめていますが、潮流がみえてきているような気がします。
そうした結果、副業・兼業を通じた、収入源の多様化、新たなスキルの獲得、スキルのアップデート等に労働者が積極的になっていると考えらます。
副業・兼業の促進に関するガイドライン
副業を禁止している企業の懸念事項に関して、厚生労働省は昨年「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を改定し、副業・兼業の場合における企業と労働者の一般的な対応を示しました。
それによりますと、「使用者側の安全配慮義務」、「労働者の秘密保持義務」、「労働者の競業避止義務」、「労働者の誠実義務」を留意点に挙げています。
雇用保険法等の一部を改正する法律
さらに、「雇用保険法等の一部を改正する法律」が成立しており、「副業・兼業」に関する環境は着々と整備されています。今後は、フリーランスとして働く人に対する労災保険の特別加入制度の適用拡大など、副業・兼業をする労働者全体をどのように保護するべきか検討していく必要があります。
雇用者が副業・兼業をしない理由は?
雇用者が副業・兼業をしない理由として「体力的に余裕がないから」、「時間がないから」が多いことから、企業は副業・兼業に限らず、例えば時短正社員や週休3日制などの新しい働き方にも柔軟に対応することが重要となってきます。
まとめ(多様な働き方の容認へ)
副業・兼業は、従業員の能力開発の機能があり、また、雇う企業にとってみれば、副業・兼業をする労働者は新たな知見をもたらし、イノベーションの萌芽となり得る存在です。
多様な働き方を許容することが、結果として副業・兼業を容易にし、中長期的には多くの企業にとってメリットを生む可能性があります。
今、先行している企業は「多様な働き方」を許容し始めているという流れなのかもしれません。
これからの働き方は多様性に満ちたものになっていくことは間違いないようです!!