公的・私的年金は「長生きリスク」に備える制度!
こんにちは、ディアパートナー行政書士・FP事務所代表の瀧澤です。
厚生労働省は、7月31日に「令和元年簡易生命表」の概況を公表しました。
簡易生命表とは?
「令和元年簡易生命表」は、日本にいる日本人について、昨年1年間の死亡状況が今後変化しないと仮定したときに、各年齢の人が1年以内に死亡する確率や、平均してあと何年生きられるかという期待値などを、死亡率や平均余命などの指標によって表したものです。
0歳の平均余命である「平均寿命」は、すべての年齢の死亡状況を集約したものとなっており、保健福祉水準を総合的に示す指標です。
平均寿命は男女とも過去最高を更新
この令和元年簡易生命表によると、男の平均寿命は 81.41 年、女の平均寿命は 87.45 年となり、前年と比較して男は 0.16 年、女は 0.13 年上回っています。平均寿命の男女差は、6.03 年で前年より 0.03 年減少しています。また、主な年齢の平均余命をみると、男女とも全年齢で前年を上回っています。
〇男の平均寿命は 81.41 年となり、過去最高(平成 30 年の 81.25 年)を更新
〇女の平均寿命は 87.45 年となり、過去最高(平成 30 年の 87.32 年)を更新
平均寿命の前年との差を死因別に分解すると、男女とも悪性新生物<腫瘍>、心疾患(高血圧性を除く、以下同じ)、脳血管疾患、肺炎及び不慮の事故などの死亡率の変化が平均寿命を延ばす方向に働いています(図5は男女別の死因別グラフ)。
女性は世界1位、男性は世界2位の長寿国
世界の平均寿命の順位を見ますと、男性は1位がスイス(81.9歳)、2位が日本81.64歳、3位がシンガポール(81.5歳)となっています。女性は1位が日本(87.74歳)、2位が韓国(86.3歳)、3位がシンガポール(86.4歳)でした。
このように、日本は世界でも有数の長寿を誇っています。「長寿」になることは、とてもお目出く有難いことですが、老後にかかる資金の増加というが課題になってきます。
年金は長生きリスクに備える制度
「年金」は長生きリスクに備える制度ですので、「公的年金」、「私的年金(=自分年金)」ともに今まで以上に重要になってきます。
このうち「公的年金」は国の制度によって決まられていますので(とくにサラリーマンは)選択の余地はあまりありませんが、年金受給の際には「年金受給繰下げ」などで工夫ができそうです。
・・・とはいえ、現在、年金の給付水準の抑制が進められているため、将来の所得代替率は当面の間は徐々に低下していきます。 2019年の財政検証結果に基づき、厚生年金世帯の将来世代の給付水準を確認すると、現役時代の収入が低いほど給付水準抑制の影響が大きく、現在より年金格差が拡大する見通しということです(みずほ総合研究所)。
公的年金の給付水準が低下していくということになりますと、今後、頼りにしたいのは「私的年金(=自分年金)」です。
換金が容易な金融資産をたくさん保有していれば、別段、問題はありませんが、今の時代、多くの金融資産を築き上げていくのは大変なことです。
コツコツと着実に「長い年月」を利用して、「老後の生活」に向けた金融資産を築き上げるには、私的年金・自分年金づくりが欠かせません。
自分年金作りの主役は「確定拠出年金」
50歳代になると、住宅ローンの支払いを終えたり、子供が独立するなどして家計に余裕が出やすくなる一方、老後をどう過ごすかを具体的に考え始めるために資産運用に関心を持つ人が多くなります。
すでに50歳を迎え、60歳の定年退職まで10年しかなく、投資期間が短いと感じる人もいると思いますが、平均寿命の延伸により、女性の4人に1人は95歳まで、男性の4人に1人は90歳位まで生きる時代になっています。
手厚い税制優遇制度のある確定拠出年金を生かして、長い老後期間に備えたいものです。
確定拠出年金(DC)は、自分の運用次第で将来の受給額が変わり、会社が原則として掛金を負担する企業型DCと、自分で掛金を出す個人型(iDeCo)があります。
確定拠出年金の改正予定
ここで今後の確定拠出年金の主な改正予定を整理してみます。
〇 2022年4月 受給開始年齢の上限が70歳から75歳に
〇 2022年5月 企業型DCの加入年齢上限が65歳未満から70歳未満に(労使協議で規約変更する場合)
〇 2022年5月 iDeCoは加入年齢上限が60歳未満から65歳未満に(国民年金への加入が必要)
〇 2022年10月 企業型とiDeCoの併用が規約変更なしで可能に
50歳代にとっては上記の制度改正で確定拠出年金が使いやすくなることは間違いなさそうです。
まずは企業型を最大限生かす
確定拠出年金の活用でまず考えたいのは、企業型DCを最大限に生かすことです。企業型は会社が掛金を出すほか、iDeCoの場合は年数千円を自己負担しなければならない口座手数料も会社が負担してくれます。
掛金が会社負担のために拠出時の所得控除はないものの、運用時には非課税で増やすことができ、受給する時も退職所得控除や公的年金等控除といった税優遇の対象になります。
企業型DCが用意されていない会社もありますので、企業型DCがあるかどうかを勤務先に確認してみましょう。
企業型DCには自分で掛金を積み増す「マッチング拠出」という仕組みを用意されており、通常型と同じように口座手数料は会社負担が一般的で、掛金の積み増し分は全額が所得控除の対象になります。(企業型DCのある会社のうち約3割がマッチング拠出を導入)
今後の制度改正によって企業型DCとiDeCoの併用が容易になりますので、企業型DCに加入している会社員もiDeCoを利用できるようになります。
企業型DCがない場合は「iDeCo」を
勤務先に企業型DCの制度そのものがない場合は、iDeCoで掛金の所得控除を受けながら運用することをお薦めします。
50歳代は若い世代よりも一般的に給与も多く、所得税の税率が高いので、「所得控除」という税制優遇を受けて節税効果を高めることが欠かせません。
確定拠出年金の次は
企業型DCやiDeCoなど確定拠出年金を利用しても資金に余裕があるようであれば、「つみたてNISA(積立型の少額投資非課税制度)」の利用をお薦めします。「つみたてNISA」には所得控除はありませんが、運用益に係る税率約20%が非課税となります。
税制優遇を最大限に活用
今まで記述してきたように、自分年金作りには、企業DC制度がある勤務先の場合は「会社負担」の制度を最大限につつ、「掛金の所得控除」や「運用益の非課税」、「受給時の退職所得控除や公的年金等控除」を活用できる「iDeCo」を、まずはお薦めしたいと思います。
そして、まだ資金に余裕があるようであれば、「運用益の非課税」が活用できる「つみたてNISA」の活用を検討してみてください。
まとめ
今後も年金関連制度は見直されていくことが予想されますが、改正される時点でその都度「運用の見直し」をしていく必要があります。税制も見直されていきますから、こまめな見直し作業は欠かせません。