保健所・病院を国が調整するようになる?
ディアパートナー行政書士・FP事務所 代表 瀧澤です。
骨太の方針
政府の経済財政諮問会議は先日、経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)の原案をとりまとめました。
新型コロナウイルス対応を契機に再検討すべき課題に、「国と地方の新たな役割分担」を掲げました。保健所への指揮系統を明確にし、病床も国が地域を越えて融通できるように法整備が図られます。
「骨太の方針」の原案では、コロナ禍での「医療提供体制の広域的対応の遅れ」を指摘しました。今回の反省を生かし、医療機関の病床確保で国の権限を強め、検査や入院が滞らないようにしていきます。
また、緊急時における保健所を巡る権限の曖昧さの解消にもつなげていきます。
「保健所」は都道府県、政令市(中核市)、東京都特別区が設置する地域公衆衛生活動の中心となる公的機関です。新型コロナウイルス感染症対策拡大防止の最前線として、PCR検査や治療などの調整の多くを担っていた行政機関です。
長野県内には3月末では、県設置が10カ所、中核市である長野市保健所と合計11カ所の保健所がありました。(長野県の場合は、10保健福祉事務所の中に「保健所」と「郡福祉事務所」が存在する形になっています)。
この4月に中核市への移行した松本市は、移行とともに市単独の松本市保健所を設置しました。
「保健所」は都道府県、政令市(中核市)、東京都特別区が設置する地域公衆衛生活動の中心となる公的機関です。新型コロナウイルス感染症対策拡大防止の最前線として、PCR検査や治療などの調整の多くを担っていた行政機関です。
長野県内には3月末では、県設置が10カ所、中核市である長野市保健所と合計11カ所の保健所がありました。(長野県の場合は、10保健福祉事務所の中に「保健所」と「郡福祉事務所」が存在する形になっています)。
この4月に中核市への移行した松本市は、移行とともに市単独の松本市保健所を設置しました。
「保健所」は都道府県、政令市(中核市)、東京都特別区が設置する地域公衆衛生活動の中心となる公的機関です。新型コロナウイルス感染症対策拡大防止の最前線として、PCR検査や治療などの調整の多くを担っている行政機関です。
保健所は、国と地方で交錯する指揮系統を象徴しています。運営主体は、上でも述べていますが、都道府県、政令指定都市、中核市、東京23区など地域によって異なり、国ではなくそれぞれの首長が任命権を持ち、業務を指示しています。
一連のコロナ対応では、厚生労働省からも多数の通知が発出され、保健所に対応を迫りました。検査方法や治療法の見直しなどで通知をしたものの保健所への直接的な指示権限はありません。
保健所長は原則、医師が務めています。所属する自治体の指示に従うか、医療の専門家として厚生労働省の指示を優先するか、保健所長は板挟みになって権限の空白が生じやすくなります。
実際、感染初期には積極的疫学調査を重視する厚生労働省がクラスター対策を促し、保健所の人出が必要な検査に回りにくい状況を生みました。
PCR検査でも地域差があり、和歌山県は国の基準よりも幅広く検査して感染拡大を封じた実績がありました。
それと対照的なのは、自衛隊が運営する国のワクチン大規模接種センターです。政府は、国の指示が地方に伝わりにくいとみて、国が直接指揮できる自衛隊の活用を決めました。
長野県の場合
長野県内には現在、県設置が10カ所、中核市である長野市保健所、松本市保健所と合計12カ所の保健所があります。(長野県の場合は、10保健福祉事務所の中に「保健所」と「郡福祉事務所」が存在する形になっています)。
コロナ関連業務で多忙な上、食品衛生管理のHACCP制度がこの6月から本格的導入になります(保健所は食品衛生などの分野も担っています!)ので、保健所の全体的な業務は多忙を極めていると思います。
おそらく、今急いでいない業務(例えば予防業務など)が後回しになっているのではないかと思います。アフターコロナを迎えたころに、後回しにした問題が顕在化してくるのではないでしょうか。
さて、長野県の場合では、県による保健所が10、市による保健所が2となっています。現在、コロナ感染者の発表などは、長野県、長野市、松本市がそれぞれ発表しています。
・・・が、長野市、松本市が中核市に移行したのが最近であり、2つの市保健所のトップである保健所長は、それぞれ長野県職員OB(長野県健康福祉部に所属していた医師)が務めていますので、県、両市の連携はよくとられていると考えられます。
東京都の場合だと、特別区が成立した時点から区保健所になりますので、東京都と区保健所の連携は行っているとは思いますが、「阿吽の呼吸」というわけにはいかないのではないかと思います。
指揮命令系統の整理
骨太の方針では、状況を改善するため、緊急時の医療体制を巡って複雑に絡む指揮系統を整理します。
一方、現在はPCR検査や入院先を調整する人手が不足しても、国や都道府県が保健所の人員を自治体の境界を越えて融通するのは難しい状況になっています。権限が細分化されて明確な調整役を定めづらくなっています。
骨太の方針の原案は、「広域的なマネジメントや自治体間の役割分担の明確化」を進めるとしています。それにより、医療従事者や病床など地域の資源を自治体の枠を超えて有効活用できるようにしていきます。
現状では権限が自治体にありながらも、指揮系統が明確でなく、地域が柔軟に決めにくい状況が生じています。
また、病床確保においても国の調整力を強めていき、国や都道府県知事が民間病院を含めて病床や人員確保への協力を「迅速に要請・指示」できる法整備を早急に検討するとしています。
地域の独自性
コロナ禍に生じた課題に対して「自治体の枠を超えて融通しあう」ことは、緊急時には必要になりますが、あまりに国の権限(指揮系統)が協力になり過ぎて、平常時に「地域の独自性」を出しにくくなってしまうことへの懸念があります。その辺の「さじ加減」が大事になってくるのではないでしょうか。