銀行の紙通帳有料化の流れは止められない!

 ディアパートナー行政書士/FP事務所 代表の瀧澤です。

 もともと銀行の預金口座は無料で開設でき、口座を維持する手数料もかからないのが当たり前でした。

 しかし、最近は紙通帳の発行や未利用の口座への手数料を導入する銀行が増えてきています。今回は、これからの銀行口座の管理方法について、個人の普通預金口座に関して考えていきます。

 最近、預金口座開設時の紙通帳発行を有料化する銀行が出てきました。みずほ銀行では2021年1月18日以降、開設時に紙通帳の発行を希望すると手数料1,100円(税込、以下同じ)がかかるようになりました(ただし、申込時点で70歳以上の人は無料で発行可能)。

 また、三井住友銀行では、2021年4月1日以降に開設した口座で紙通帳を利用する場合、手数料として550円が毎年口座から引き落とされることになりました(18歳未満または75歳以上は対象外)。

 三菱UFJ銀行は現時点で紙通帳を有料化していませんが、紙通帳のないEco通帳に切り替えると現金をプレゼントするキャンペーンを実施していました。

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 大手地方銀行の横浜銀行や千葉銀行でもそれぞれ今年の2月と3月から有料化されています。

 あおぞら銀行も今年2月から、新規口座の開設で紙の通帳の発行をやめました。紙でやりとりするコストや事務負担を軽くし、資産運用相談などニーズの見込める分野に経営資源を振り向けるのが狙いです。新型コロナウイルス禍でデジタル通帳など非対面サービスの利用が広がっており、顧客の理解も得られるとみられています。

 私が住んでいる長野県内に本店のある地方銀行「八十二銀行」は、今年2月に長期間使用されていない普通預金口座などを対象に手数料を導入すると発表しました。不正利用などにつながりうる未利用口座の削減が目的で、制度開始の今年4月以降に開設した新規口座のほか、既存の口座も対象とします。

 こうした紙通帳不発行の促進に合わせ、ネットバンキングで入出金明細を確認できる期間の長期化も図られています。

 例えば、みずほ銀行のみずほe-口座(みずほダイレクト通帳)や三菱UFJ銀行のEco通帳は最長10年間、三井住友銀行のWeb通帳は最大30年間(※)閲覧可能としています。(※2019年10月1日以降の入出金。それ以前は最大25ヵ月。未利用口座への手数料導入)

 りそな銀行は未利用口座に対する管理手数料を早くから導入していました。2004年4月1日以降開設の新規口座から適用されています。最後の入出金から2年以上預け入れまたは払戻しがなく、銀行からの連絡後も一定期間取引がない場合は、年1,320円の手数料がかかります。また、口座残高が未利用口座管理手数料未満の場合は口座残高全額が引き落とされ、口座は自動的に解約されます。

 同様の手数料を導入する銀行は増えています。例えば三井住友銀行では、2021年4月1日以降に開設する口座のうち、 Web通帳の選択とパスワードカードの有効化がされず、2年以上入金・振込・払戻し等がなく残高が1万円未満の口座からは年1,100円の手数料が引き落とされます。そして、口座の残高が手数料額に満たない場合は、残高全額が手数料の一部として引落され、当該口座は自動的に解約されます。なお、18 歳未満の人、75 歳以上の人、同じ支店に定期性預金・外貨預金などを保有している人は対象外です。

 三菱UFJ銀行も、2021年7月1日以降に開設され、2年以上預入・引出しのない口座を対象に、口座の維持・管理に係る費用の一部に充当するための手数料を新設すると発表しました。年1,320円が口座から引き落とされ、残高が手数料未満の場合は残高が手数料として引き落とされた後に口座が解約されます。ただし、他の預かり金融資産(定期預金、外貨預金、投資信託等)が1円以上ある場合や借入れがある場合は対象外です。 上記の銀行以外でも多くの地方銀行や信用金庫で、このような未利用口座に対する管理手数料の導入が増えています。

 銀行は紙通帳1口座あたり年200円の印紙税を納める必要があります。また、未利用口座であっても口座情報を管理しておく必要があり、そこにもコストがかかっています。 紙通帳の有料化や未利用口座手数料の導入には、このような銀行の負担を軽減するという背景もあります。

 今のところ、通帳有料化も口座管理手数料も、新規口座開設者だけが対象とされていることがほとんどですが、将来的に対象が広がる可能性を考えておく必要があります。 また、銀行店舗やATMの統廃合が続いているため、顧客側の通帳記帳に要する負担も増えつつあります。

 そこで、「銀行口座有料化への対策」、「銀行口座の管理の仕方」として、

1)紙通帳をやめる

 まずはシンプルに紙通帳を持たない、という方法が考えられます。「e-口座」(みずほ銀行)、「Web通帳」(三井住友銀行)、「Eco通帳」(三菱UFJ銀行)など各銀行で名前は様々ですが、オンライン取引のみの口座が用意され、前述の三菱UFJ銀行のように、紙通帳から切り替えると優遇される場合もあります。また、元々紙通帳を発行しないネット専業銀行を使うという方法もあります。

 実店舗やATMに行かなくてもインターネットバンキングや銀行アプリで残高や入出金明細を確認でき、振込もできる利便性はオンライン取引ならではです。さらに、銀行アプリはスマートフォンでいつでも口座のデータが見られるほか、生体認証を利用することもでき、セキュリティ面でも有効です。新型コロナウイルス感染症対策の観点からも、このようなサービスの利用も検討の余地がありそうです。

2)休眠口座は解約する

 口座管理手数料の対象は今のところ未利用口座に限られるため、何年も使っていない休眠口座を解約しておけば手数料はとられません。毎年手数料を引かれて自動解約される前に自分で解約手続きを行い、残高を引き出しておきましょう。

 また、相続になった場合も預金口座が多いと手間がかかることがあります。使わない口座の整理は、終活の1つとしてぜひ、お考え下さい。

 私も、亡妻の独身時代の銀行口座(若干の残高あり)を解約しようと試みましたが、銀行が遠隔地にあり、必要な書類も膨大だったことから、銀行担当者とも話をして、結局、手続きをあきらめました。相続になった場合は本当に後処理が大変です。ぜひ、ご自身がご元気なうちに終活の一環として、ご自分で解約手続きを行うことが賢明です!

3)一定の金額を口座に入れておく

 口座管理手数料を導入している銀行の多くは、手数料徴収の対象を残高1万円未満の口座としています。今は使っていないが解約はしたくないという場合には、一定の金額を口座に入れるようにしましょう。

 インターネットバンキングの安全性の面で、紙通帳がないことに抵抗がある方も多いかもしれません。しかし、最近ではオンライン上の口座データと連携して自動で家計簿を作成してくれるアプリなども登場し、利便性がさらに向上しています。定期的なパスワードの変更などは手間がかかりますが、セキュリティ対策をしっかり行い安全に利用することで、得られるメリットは多くあります。

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 紙通帳の預金口座を多数持っていることで費用がかかる時代をむかえ、デジタルデータを活用して記帳の手間を省き、家計管理を簡単に行えるチャンスとして紙通帳を持たないという選択もこれからの時代は大いにありうることだと思います。

【出典:日本FP協会「いまどきウォチング」から】

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