50代、シニアの心得とは?
みなさん、こんにちは!「家族信託」や「遺言書」など生前の相続対策に特化した取組を行うディアパートナー行政書士事務所です。
2022年11月4日付日本経済新聞電子版「人生100年こわくない・定年楽園への道」に経済コラムニスト 大江英樹さんの記事「50代、「会社人間」から「仕事人間」になろう」が掲載されていました。今回はシニア層の心得としてその記事に関して投稿していきます。
定年後長く働くためには、専門性を磨いておくことが欠かせない
大江さんは常々、「50代になったら成仏すべし」と主張しています。ここで言う「成仏」とは会社の中における地位や立場にこだわることをやめて、定年後の新しい人生に向けて気持ちを切り替えようという意味で使っています。
実際、50代になってくると、そこからの昇格やキャリアパスが考慮された上での新しい部署への異動というのもほぼなくなってきます。そうであるならば、いつまでも会社の中での位置に執着しても、それはあまり意味のないことと考えるべきでしょう。大江さん自身も50歳手前でいわゆる「”窓際”的な部署」への異動を命じられたことで成仏することができたのだそうです。
だからといって、仕事もほどほどに、手抜きでやれば良いかというと決してそんなことはないようです。むしろ成仏したからこそ、現在の仕事を頑張った方がいいということです。
シニアも転職・起業する時代
50代に入って、そこから昇進の可能性がなくなったとしても仕事を頑張る理由、それはひと言でいえば「定年後も長く働けるようにするため」なのだそうです。昨今は60歳で定年になったとしても、その後はほとんどの場合65歳までは再雇用で働くことができます。国は70歳までの雇用確保を推奨し努力義務としていますが、実際には65歳以降は難しいというのが実際のところです。
そこで、長く働こうというのであれば、定年後に転職したり、自分で事業を始めたりすることが必要になってきます。実はそのために最も重要なことが、「今の仕事を頑張る」ことなのだそうです。
これは意外に思うかもしれませんが事実だと大江さんは記しています。多くの人は「仕事を頑張る」のは今の会社で昇格することを念頭に置いているはずです。だから50代になって出世コースから外れてしまうと「頑張っても仕方ない」と思ってしまうようです。
ところがシニアの転職で最も重視されるのは「専門性」なのです。それが何かの技術であれ、営業であれ、庶務業務であれ、どんな種類の仕事でも高い専門性を持っていることがとても重要になってきます。
特に昨今は若い人が興したスタートアップ企業も増えてきています。そういう企業は、自分たちの本業については優れたノウハウや技術、サービスを持っていたとしても、経理や営業や法務といった部分はまだそれほど充実していないことも多いでしょう。そこでそういった分野の仕事に専門性を持つシニアには強いニーズがあるようです。
したがって、長年企業で働いてひとつの業務に専門性を持っている人は、そうしたスタートアップ企業などに求められる可能性が高いようです。大江さんの知人の中には、上場企業に勤めていて、定年後、あるいは50代後半で求められてそんな企業に行った人は何人もいるそうです。
ただ、そうやって定年後に転職した人には一つの特徴があるというのです。それは社内で出世することよりも自分の専門性に磨きをかけてきた、いわばある種の職人気質のタイプだというです。中小企業やスタートアップ企業が求めるのは経営者でも管理者でもなく、その分野に特化した技術や知識を持っている人となるからです。
もちろん、多くのサラリーマンはスペシャリストではなくゼネラリストとして仕事をさせられてきたわけなので、ある特定の業務に専門性を持っている人ばかりとは限りません。
そんな中にあっては自分で「この仕事のプロだ」と言い切れる人はなかなかいないかもしれません。しかし50代に入ったら、そこからは社内でのキャリアパスが重視されて部門を超えた異動が増えるというケースはまずないと言えます。だとすれば、50歳から自分の仕事の専門性に磨きをかけていけばいいと大江さんは述べています。
大江さん自身、50歳手前まではずっと営業の仕事でしたが、50歳を前にして「年金部門」への異動を命じられ、その後は定年までずっと同じ部署だったということです。証券会社にとっての花形は営業部門なので、年金部門への異動というのはいわば戦力外通告を受けたようなものだったそうです。
「戦力外通告」はチャンス
ところが大江さんにとっては、それまで全く経験のなかった「年金」に関する仕事は、やってみると意外と面白く、結構熱心に取り組むことになったようです。
結果的には証券会社としてはあまり経験することのない外部の人たちとの接触、具体的には同業の証券会社ではなく、生保や信託といった異なるカルチャーの人たち、そして厚生労働省や企業年金連合会といったほとんど証券ビジネスとは縁のない分野の人たちと知り合うことができたそうです。
もちろん年金部門に異動して以降は昇格も昇給もなかったそうですし、ボーナスも目減りしたようですが、その代わり、得難い経験をすることができたということです。その時の経験と人脈が、定年退職後に起業するにあたって、非常に大きく役に立ったというのです。
さらに、担当した企業年金だけでなく、公的年金の知識を学ぶことができたのも大江さんの現在の仕事に好影響を与えているそうです。これは年金部門に異動し、そこでそれまで経験したことのない仕事に取り組むことで専門性を磨いた結果だろうと大江さんは思っているそうです。もしあの時、戦力外通告を受けていなければ今の立場はなかっただろうとも述べています。
発想を変え、出世するためではなく、自分の専門性を磨くために今の仕事を頑張るというのはとても重要なことなのですが、それに気付く人は少ないようです。特に50代も半ばになり、それまで管理職だった人が「役職定年」でラインの長を外れると、途端に気力を失ってしまうというのもよくある光景です。
しかしながら役職定年というのは実は、またとないチャンスだということなのです。管理職というのは自分自身の仕事よりも部下への指示や相談事への対応、トラブルの解決、そして人事上の問題といった組織運営上の仕事が中心になります。これは必然的に専門性とはほど遠い状態で仕事をこなさざるを得ない状況です。
ところが、役職を外れて一兵卒になれば、会社で働く時間は全て自分の仕事に充てることができます。今までのように部下や上司の面倒を見る必要はなくなるのです。それに加えて役職定年後はまず残業もないですし、休日出勤ということもほとんどなくなるわけですから、自分の仕事を通じて専門性や技術を高めるのに大いに役立つことになります。だからこそ役職定年は、自分の専門性を見出し、それに磨きをかけるチャンスになる、と考えるべきだと大江さんは強調しています。
そしてこの「自分の専門性を見いだしてそれに磨きをかける」ことは60歳以降の転職だけではなく、大江さんや当職のように定年後にフリーランスとして起業する場合にもおおいに役立つというのです。
2020年版「中小企業白書」を見ると、フリーランスとして起業している人のうち、50代と60代で半数近くを占めているというのが実情です。(この中には私も含まれていますが・・・(笑))
そして起業の目的は「自由に仕事をしたい」「好きな仕事をしたい」、そして「仕事の経験やスキルを生かすため」というのが最も多いベスト3となっています。
この統計結果を見ても、定年後に自分の能力を生かしてやりたい仕事をするために独立するという人が増えてきているということがよくわかります。
資格取得や社外人脈づくり
もっと言えば、役職定年後の時間を有効に使って資格を取るのも良いでしょうし、社外の人との交流を図ることで確実に人脈を作ることもできます。
大江さんの場合、定年後に半年間だけ再雇用で働きましたが、その間は正規の勤務時間以外は全て自分のために使うことができたため、わずか半年ではあったものの、かなり有効にそれを利用することができたといいます。
よって、50代からは会社のために頑張るのではなく、自分のために頑張るということを考えるべきだろうと結んでします。
まとめ
企業の役員に就任するなどごくわずかな人を除いて、シニアで雇用される人の多くが「役職定年」、いわゆる戦力外通告を受けることになります。そうした時に、チャンスと考えれれるか、気力を失ってしまうかで、その後の展開は大きく変わってきます。
シニアで迎えるそうした転機に、どのように考えるか、対応していくかで、人生後半の充実度も変わってくるでしょう。50歳代から人生終焉までには、まだまだ長い時間が残されています。
ぜひ、ご自分で後悔しない心構えやチョイスをしていきたいものですね。私自身も人生の終わりに後悔しないような人生終盤を歩みたいと考えています。たとえそれが成功でなかったとしても、そのチョイスに後悔しない心構えを常に備えていたいと思います。