高齢層 退職後は資産形成から消費へ

みなさん、こんにちは!「家族信託」や「遺言書」など生前の相続対策に特化した取組を行うディアパートナー行政書士事務所です。

私は長野県松本市内において、家族信託や遺言書など相続対策の業務をメインにしている特定行政書士です。

また、「一般社団法人法人顧問FP協会」の一員として、中小企業のパートナーとして 『法人財務と個人資産を両輪で考えたアドバイス』 ができるファイナンシャルプランナーの取組みを行っています。

75歳以上の独居世帯が2050年に46都道府県で2割超す

2024年11月13日付けの新聞各紙によれば、2050年に向けて高齢者の一人暮らしが全国で一段と増えることが報道されています。
国の研究機関が11月12日に公表した世帯数の将来推計によりますと、2050年には山形を除く46の都道府県で、75歳以上人口に占める一人暮らしの割合が2割を超えるという推計が公表されました。今後、在宅医療や介護の体制拡充など、高齢者の生活を支える仕組みづくりを急ぐ必要がでてきます。(なぜ、山形県は2割を超えていないのか不思議ではありますが・・・)

全国では75歳以上の単独世帯が2050年の時点で704万人と、2020年の1.7倍に増えるという推計がされています。都道府県別では都市部ほど多く、全国最多の東京は2020年の50万人から、2050年には90万人に増えるとされています。次いで多いのが神奈川(56.9万人)で、大阪(56.5万人)、愛知(41.1万人)が続いています。

75歳以上に占める一人暮らしの割合の全国平均は2020年の22.4%から、2050年には28.9%に上昇するとされており、この間に都道府県別も全て上昇し、2050年時点では山形(18.4%)を除く全都道府県で20%を上回り、東京(35.7%)など8都府県では30%を超えると見込まれています。

この公表値は、国立社会保障・人口問題研究所が2020年の国勢調査を用いて、2050年までの都道府県別の世帯数を5年ごとに推計したもので、推計は5年ごとに実施しされています。2050年までには1971〜74年生まれの団塊ジュニア世代が全て75歳以上の後期高齢者となります。世帯の単身化と高齢化がさらに進むと見込まれています。

こうした状況が今後見込まれる中、シニア層の資産活用について、日経ヴェリタス2024年11月17日号の記事(合同会社フィンウェル研究所代表 野尻哲史さん)からです。

退職後は「資産形成から消費へ」 老老相続で滞留多く

「貯蓄から投資へ」が金融業界の最近のキャッチフレーズになっています。少額投資非課税制度(NISA)は、2024年1月から制度が大幅に拡充されて一気に人気が出てきました。企業型DC(確定拠出年金)、iDeCo(個人型確定拠出年金)も加入者が増えるなか、現在、制度拡充の議論が行われています。

これだけ資産形成が盛り上がってきたときだからこそ、あえて考えてほしいのが「資産形成のあと、その資産はどうするの?」という点です。皆さんはどう考え、どう答えるでしょうか。退職後の生活のための資産であれば、退職したらその資金は使ってこそ意味があります。まだまだ先のことだと考えている人も含め、改めてしっかり考えて欲しいのが、出来上がった資産をどう使うかを考えないで闇雲に「貯蓄から資産形成へ」を進めることの是非です。

個人の生活では、退職後の資産はできるだけ使わないようにすると考える人が多いのですが、それはやはり寂しいものです。それに少し日本経済全体をみる視点に立つと、これからの超高齢社会では現役層が大幅に減少していきますから、内需における高齢者の貢献はこれまで以上に重要になるはずです。資産は使うことが求められるのです。

高齢層の資産、休眠化

今年8月に内閣府が発表した2024年度「経済財政白書」の「家計の金融資産投資構造の現状と課題」の章では、高齢者の経済活動に関して「蓄積された金融資産が、老後の経済活動に使われる程度は限定的」と指摘しています。

そしてその背景として、①生活への不安から長生きリスクを強く意識していること、②子ども世代の生活が自分たちよりも悪くなると思う人が増え、相対的に少ないとはいえ遺産として残したいと考える人が増加傾向にあること、の2つを挙げています。

長生きリスクを否定することはできません。しかし、それを過剰に意識して消費に後ろ向きになるのは残念なことです。退職後の生活のために資産を作り上げてきたわけですから、退職したらそれを使っていくべきです。本来の姿は、保有資産のピークが退職時点となるはずです。

しかし、長生きリスクを心配してその資産を使わない結果、「亡くなる時の資産が最も多い」などと指摘されることになります。さらにその資産は、老老相続で高齢者となった子ども世代に相続され、再び長生きリスクを懸念して抱え込まれたままになります。

ちなみに被相続人(亡くなった方)の年齢構成をみると、80歳以上は1989年の4割弱から2019年には72%にまで高まっています。一方で、相続人の年齢構成は22年で60歳以上が52%強と半数を超えています。この流れが続くと高齢者が抱える資産は、老老相続により、いつまで経っても高齢者の中で滞留し続け、動き出さないことで休眠化してしまいます。その結果、高齢層への資産の更なる集中が起きることになります。

国税庁の相続税に関する統計によれば、相続の課税価格の総額は2022年で20.7兆円と初めて20兆円台に乗せました。非課税対象の資産も含めると50兆円程度に達するとの推計もあります。この多くが老老相続ですから、高齢者の資産として休眠化してしまうのは、本当にもったいないと思います。

高齢者消費のチカラ

そのうちの1割、5兆円が消費に漏れ出すだけで、その乗数効果も考えるとGDPを1%以上押し上げる力になります。国民経済計算によると2022年の個人が保有する金融資産、非金融資産、土地を合計すると3200兆円強に達しています。また全国家計構造調査のデータを使って60歳以上の保有比率を推計すると、約6割になりますから、総額は2000兆円の規模になります。消費に漏れ出す5兆円といっても、高齢者の保有する資産総額のわずか0.25%にすぎませんから、過剰に消費するというほどの規模ではないはずです。

資産の取り崩しとか、デキュムレーション(資産の取り崩し作業)の考え方からすると、高齢層の消費を喚起させる余地は大きいとみています。退職後に一定期間の「使いながら運用する時代」を設定することがその柱となります。その時代には「率」を意識した引き出しを行い、目標の資産残高を確保しながら、その年に「使い切っていい資産を引き出すプラン」を作り上げます。毎年計算される引出額が「使い切っていいお金」と認識できると、それを消費に使いやすくなります。こうしたマインドセットの切り替えができれば、高齢者は長生きリスクを意識してもなお、消費に前向きになるはずです。高齢者もその課題に気づいているからこそ、消費を怖がって資産を残してしまうことに警鐘を鳴らす「Die with Zero(ゼロで死ね)」(ビル・パーキンス、ダイヤモンド社)といった書籍が売れているのではないでしょうか。

高齢層の消費、課題解決に

相続の発生に伴うもうひとつの課題は、地方から都会に資産を送り出してしまうことです。これは遺贈寄付を推進する団体も指摘しており、今後も大きな課題になると考えられます。

なぜならば、被相続人の多くは地方に居住し、相続人の多くは都会に住んでいますから、相続が発生すると資金は地方から都会に流れ出します。世代を越えて行われる贈与においても同じことが言えます。

これからの超高齢社会は多死社会でもありますから、毎年、死亡者は増え続けると推計されています。国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(令和5年推計)」によると、死亡者数(中位)は2021年で144.5万人ですが、2040年には166.5万人に増加します。被相続人が年々増加し、相続する資産が大きくなるほど、地方から都会への資産の移転は深刻さを増すことになります。

高齢者がその地で消費にほんの少し前向きになることは、相続に伴う地方からの資金流出を抑制するという点だけでなく、地方経済そのものにもプラスになります。さらに高齢者の資産が消費に回ることで経済へのプラスの効果があれば、子ども世代の生活が自分たちよりも悪くなると思う高齢者が少なくなるでしょう。それは遺産動機に影響を与え、高齢者が消費に前向きになる力にもなるはずです。

退職金や相続資産を持った退職世代が地方都市に移住することで、物理的に都会から地方に資金を逆流させることも可能です。退職世代の地方都市移住は、個人の生活費を抑えるという視点で言及することが多いのですが、日本経済の抱える地方経済の活性化という視点でも大きな可能性を秘めているといえます。

現役時代は「貯蓄から資産形成へ」ですが、退職したら「資産形成から消費へ」を心掛けたいものです。・・・このように合同会社フィンウェル研究所代表 野尻哲史さんは締めくくっています。

シニアである私自身が高齢層の方々に伝えたいこと!

11月が誕生月の私は、今月満64歳を迎えました。私は「厚生年金の報酬比例部分の特別支給」を受けれる最後の学年の男性です。実は今週、年金事務所に出向いて年金請求の手続きをしてきました。亡くなった妻の遺族厚生年金は4年前から受給していたものの、自分の年金はこれから初めて受給することになります。

以下の考え方は、そんな年金世代の私が常々思っていることです。

人生の最晩年に振り返った時、どれだけの物質的な財産を持っていたかよりも、どれだけ豊かな経験と思い出を積み重ねてきたかが、人生の満足度を大きく左右するのではないかと考えています。お金を貯めることも大切ですが、それを使って人生を豊かにすることも同じくらい重要なことです。

公的機関が発表している統計でも表れていますが、日本人は人生最期の時に一番資産を有しているのだそうです。早い話が「貯めて死んでいく」ということでしょうか。

高齢層の皆様、今こそ、健康で足腰がしっかりしているうちに、お金を使って素晴らしい経験と思い出を作ることを考えてみてください。その経験は、あなた自身の人生をより豊かにし、後々まで心に残る宝物となるでしょう。

また、不幸にしてすでに身体が衰えてしまった方々は、自分の孫世代へ生前贈与するなどして、若い世代へ資産の移転を図ることも有効ではないかと思います。

シニアのひとりである私は、これからもお金を有効に使って、自分の人生にとって素晴らしい体験と思い出を作ることを最優先に日々暮らしていきたいと思います。

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