長く働くことの優位、シニア定年後は好きな仕事を!

みなさん、こんにちは!「家族信託」や「遺言書」など生前の相続対策に特化した取組を行うディアパートナー行政書士事務所です。

ピンピンコロリ、元気で長生きが幸せ?

年始から1ヵ月、この間、知り合いの方々が相次いでお亡くなりになりました。最近はニュースでも芸能人や元スポーツ選手などいわゆる”有名人”の訃報を伝えることが多くなったと感じるのは私だけでしょうか。

やはり、確実に多死時代に入っていることを実感しますし、地方でも火葬場が混雑していてすぐに葬儀にならない場合も珍しくありません。とくに冬季は亡くなる人が多いのではないでしょうか。

人間の死亡率は100%ですので、生まれた以上いつかは死ぬ時がきます。でも、それまではなるべく元気で過ごしていたいですよね。そう、ピンピンコロリ、これが私の理想です。

日本経済新聞電子版(2024年1月26日付)「人生100年こわくない」に「生涯現役、定年後は「好き」を仕事に」と題して、生涯の働き方についての考え方が掲載されていました。75歳以上の後期高齢者であっても働き続ける人が結構いる昨今、定年退職後の働き方について考えてみましょう。

働ける限りずっと働いていたい人が多い日本

日本では「働ける限りずっと働いていたい」という人が多いということが調査結果から示されています。

内閣府が60歳以上の男女3000人を対象に調査したところ、25%の人が75歳を超えても働いていたいと答えました。更に調査対象者を60歳以上で収入がある仕事をしている人に絞り込むと、44%が75歳を超えても働いていたいと回答していました(いずれも出典は「令和5年版高齢社会白書」)。

若者の間ではFIRE(経済的な自立による早期リタイア)を目指す人もいる一方、60歳以上を対象とした調査では、いつまでも働き続けることを望む人が多いのが実態です。一見したところ正反対とも言えるこの現象をどう解したら良いのでしょうか。

FIREを目指す若い人は労働を自分の時間を奪うもの、よって早く自由になりたいと考えるのに対して、多くの60歳以上は、仕事を収入が得られるだけでなく、健康など他のメリットも享受できるものと捉えているようです。

別の内閣府調査では、60歳以上の人が仕事をしている理由を聞いています。いちばん多かったのは「収入が欲しいから」(45%)でしたが、次に多かった答えは「働くのは体に良いから、老化を防ぐから」(24%)でした。

この記事を書いた岩崎日出俊さんの周りの具体例をいくつか挙げています。80歳を超えても働いている人たちが何人かいるそうで、証券会社の元社長などだといいますが、いずれも元勤務先の会社とは完全に離れて、自分で小さな会社を作って働き続けているということです。収入的には、彼らは働かなくてもまったく困ることはなく、「収入が欲しいから」ということではないようです。中には休みの日に子どもや孫たちを連れ、100万円かけてディズニーリゾート・プライベートVIPツアーを楽しむ人もいるそうですから。

それなのになぜ働くのでしょうか。働くのを止めて、温泉巡りをしたり、ゴルフ三昧の毎日を送ったりして余生を楽しんだ方が良いのでは?

この疑問をぶつけると、返って来た答えは「温泉やゴルフはたまの休みに行くから楽しいんだ。毎日行っていたら飽きるよ」「働いている方が健康でいられる。学生時代の同窓会に出席しても級友から若いと言われる」というものだったそうです。

働けるなら働き続けた方が健康に良い?

働き続けることは本当に健康に良いのでしょうか。いくつかのデータや調査リポートにあたってみます。

公益社団法人「国民健康保険中央会」は要介護度2以上の認定者数等から健康寿命を推計しました。推計結果は、長野県が男性(81.4歳)、女性(85.1歳)ともに全国で第1位でした。一方、65歳以上の高齢者の有業率を見ると、同じく長野県が男性(41.6%)、女性(21.6%)ともに全国第1位(総務省統計局)となっています。

高齢者の有業率については、農業従事者の多い土地柄である長野県が男女とも1位というのは頷けますね。私の両親も85歳くらいまでは「畑仕事」をしていましたので。

この2つのデータをもって「高齢者の有業率が高いと健康寿命は長くなる」と主張する識者もいますが、長野県の例だけで、働き続けることが健康に良いと結論付けるにはやや無理があるのではないでしょうか。

別の資料(2018年の第6回経済財政諮問会議に提出された厚生労働省作成資料)によれば、都道府県ごとに「1人当たりの医療・介護費」と「65歳以上の就業率」の相関関係を算出しています。それによれば、65歳以上の就業率が高い地域ほど1人当たりの医療・介護費が低い(=恐らくは健康寿命が長い)ということのようです。

働くことは身体を動かし、頭を使います。働くことで過大なストレスを抱えてしまうと健康には悪影響でしょうが、適度のストレスであれば、むしろ脳の活性化に役立つという研究結果も存在します。

カリフォルニア大学バークレー校のダニエラ・カウファー准教授たちはマウスの実験により、適度なストレスは注意深さを引き出し、行動・認知能力のパフォーマンスを引き上げるのに役立つことを2013年に発見しました。働く理由として多くの人が挙げた「体に良いから、老化を防ぐから」という答えを肯定するような結果です。

では、生涯現役を貫くことは可能なのでしょうか

ずっと働くことが健康に良いわかっていても、実際問題として75歳を過ぎた人を雇ってくれる企業などあるのでしょうか?しかも、その仕事が過度なストレスにはならずに、適度なストレスで済むという、そんな条件の仕事があるのでしょうか?

65歳で大手企業を定年退職したAさんが昨年末自費出版し、岩崎日出俊さんに本を送ってくれた(『LINEブログに綴った「65歳の歩き方」』)そうです。その中にはハローワークに行った時の体験談がつづられていました。いわく「高齢者に求職があるのは頭文字Kの仕事ばかり。警備、(マンションの)管理人、片付け、交通整理などなど」。結局、Aさんは希望する職種を見つけられなかったといいます。

生涯現役を希望するのであれば、ハローワークによる斡旋(あっせん)には期待できないでしょう。また、現在勤務している企業に期待してもダメでしょう。

企業には65歳まで雇用する義務が課せられていますが、65〜70歳は努力義務にとどまります。とても75歳を超えても働きたいというニーズには応えられないというのが現状です。

企業への勤務が期待できないのなら

ではどうしたら良いのでしょうか。ひとつの手法としては、勤務先企業やハローワークなどの機関に頼ることなく、自分で道を切り開くことです。

マスコミでよく取り上げられている若宮正子さん(88歳)の例を見てみましょう。彼女は「メカにはめっぽう弱い」と言いますが、10年前のTEDxTokyoでこんな話をしていたそうです。

「高校を卒業してからずっと銀行勤めをしていました。定年が近づく60歳くらいになりますと、なんだかちょっと憂鬱な気分になってきたのです。退職後は90歳になる母の介護をしなければならず(中略)なんだかうんざりしていました」

家で母親の介護をしながらでも、外の世界と接点を持てるということで、彼女はパソコンを手に取ります。最初は悪戦苦闘して3カ月かけてパソコンをようやく立ち上げるところまで漕ぎつけたそうです。やがてパソコンが好きになり、81歳の時にスマホアプリを開発するまでになりました。アップルの開発者向けイベントに招待され、ティム・クック最高経営責任者(CEO)から「世界最高齢のアプリ開発者」と紹介されたといいます。

若宮さんがパソコンを習い始めた頃とは違って、現在は国を挙げて社会人による学び直しを後押ししています。各種の給付金や補助金などのサポートもあります。マイクロソフトは機械学習などの無料のオンラインコースを提供していますし、スタンフォード大学などの多くの授業はコーセラ(※)などで受講することができ、多くは無料です。

※:『 Coursera(コーセラ)』はオンラインで大学や企業が提供するコースが受けられる学習サイト。

定年後は自分の好きな仕事を!

ソニーを創業した井深大氏は「人生でいちばんの幸福は、仕事と趣味が一致すること」と述べていました。また、スティーブ・ジョブズ氏は、「仕事は人生の大部分を占める。満足する唯一の方法は、自分の行っていることが素晴らしい仕事だと思えること。つまり好きなことを仕事にすることだ」と語っていました。

井深氏もジョブズ氏も起業家であり創業者ですから、好きなことを自分の仕事とすることが出来ましたが、ふつうのサラリーマンはそうはいきません。「本当は小説家になりたかったが、食べていく自信がなかったので、やむなく出版社に勤めた。」そんな人もいるかもしれません。

しかし定年退職後はどうでしょう。日本では、65歳を過ぎれば原則公的年金を受給することができます。そのことは、仕事から得る収入が減少しても生活が成り立つということでもあります。

そうだとすると、60歳時なり65歳以降は、今までとは違って、好きを優先させて仕事を選んでもいいはずですし、必要あれば学び直しで自分の能力を開発してから、新しい分野に挑んでもいいはずです。

日本では、現在65歳以上の人は3600万人で、日本の全人口の3割近くを占めます。こうしたいわゆるシニア層の人たちが収入を生み出す仕事に再び就くことで、価値創造の一翼を担うようになれば、日本の経済も明るさを増すかもしれません。

好きなことをして健康で働き続ける。そんな第二の人生があってもいいはずです。

自分で道を切り開くことの大切さ

1月1日に経済コラムニストの大江英樹さんが亡くなりましたが、生前、大江さんは「シニア層の積極的なお金の使い方」についても提案していました。

日本人のほとんどが死亡する時が、人生のなかで一番資産を有しているときなのだそうです。だからこそ、健康なうちに、今までためた資産を、旅行など人生を楽しむことに使って消費していく必要があるといえます。

今回の「健康で長く働くこと」、そして「シニアになってからは好きな仕事をすること」ということは、人生を楽しむという点ではとても大事な視点だと感じました。

しかし、シニア層の多くが働き続けたら、お金がどんどん蓄積されていくでしょう(笑)ですから、仕事が休みの日には「しっかりとお金を使って人生を楽しむ」という姿勢も大事かもしれません。

好きなことを仕事にしていれば、それが一番幸福で「旅行などに行っている暇はない」かもしれませんね。でも「好きな仕事」に就くということは「自分で道を切り開く」ことでもあるでしょう。雇われの身であれば「好きでないこと」もやらざるをえない場合もきっと出てきます。

私の今の感覚としては、「起業するのであれば60歳まで」が良いのではないかと思っています。新しいことを始めて、事業がある程度軌道に乗るのには「3~5年くらい」はかかるのではないでしょうか。だとすれば、65歳から起業というのはちょっと遅いような気がするのです。

私は現在63歳ですが、年々フットワークや根気などが悪くなってくるのを実感していますので、65歳から新しいことを始めるというのは、多くのエネルギーを必要とするのではないでしょうか。

出口戦略も考えておく必要あり!

「健康で長く働きつづける」ことは、多くのシニアの願望でもあると思いますが、いかんせん、人間の死亡率は100%です。いつかはこの世を去る時が来るはずです。そうした時に起業していた場合では、周りの多くの人たちに迷惑をかけてしまう可能性もありますので、出口戦略を常に考えながら行動していくことも大切になります。

でも、「やれる時にやりきっておくこと」は、充実した人生を形成する上で重要なファクターですので、シニアであっても果敢に挑戦していく姿勢も必要だと考えます。

私は今年、新しい事業に着手していきますが、ちょっと今、ワクワクした自分がいます。残りの人生が少ない私ですから、新しいものにチャレンジする際には、「これ、やっておかないと死ぬとき後悔するかな」という観点で「後悔する」と思ったものには「首を突っ込む」ようにしています(笑)。でもワクワクしたシニア人生を過ごしたいですよね。

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