自分年金づくりの動向は今、どうなっているか?
ディアパートナー行政書士・FP事務所 代表の瀧澤です。
確定拠出年金の加入者増加
自分年金づくりのメインになるであろう個人型のiDeCoなど、個人が自ら運用する確定拠出年金の加入者が増えています。2021年6月27日付の日本経済新聞によりますと、2021年3月末時点の加入者は延べ約941万人となり、企業が運用する確定給付年金を初めて上回りました。拠出年金の掛け金への税制優遇をテコに裾野を広げたとのことです。個人の運用力が老後の安心を左右する時代になってきましたが、運用商品には定期預金の利用がなお多く、貯蓄から投資の流れは道半ばのようです。
確定給付企業年金の加入者は、2021年3月末時点で1年前に比べて7万人減り、933万人でした。他方、確定拠出年金は1年で61万人が増えました。会社員をはじめ20~60歳未満の人口の約15%が加入している計算となり、2021年内にも加入者が1000万人になりそうです。
確定拠出年金は
確定拠出年金は、投資信託や預金などのラインナップから自分自らが故人で運用商品を選んで運用するものです。掛け金についても、企業と個人で拠出する2種類があり、自営業者の場合で最高限度額は月6万8千円になります。
60歳になるまで原則引き出すことができないデメリットがある一方、掛金や運用益などが非課税となる大きな恩恵があります。
私が若い世代の皆さんにお勧めしたいのは、まず、確定拠出年金を限度額一杯まで掛金とし、「掛金や運用益などが非課税」と「社会保険料控除の活用」というメリットを十分に生かして運用したうえで、残りの資金の運用方法を考えることです。税制面での恩恵を考えれば、優先順位の一番には「iDeCoを含めた確定拠出年金」が挙げられると思います。
確定拠出年金は米国の制度を手本に2021年に始まりました。
確定給付年金は
それまで大企業で多かった確定給付型の場合は、一定の利回りを従業員に約束して企業が運用し、目標に届かなければ企業が穴埋めを行います。こうした財務・会計上の負担の重さを敬遠して企業年金改革を各企業が進めた結果、給付型から拠出型へ移行する企業が増えました。
一定の利回りを約束する給付型は、従業員の老後まで会社が一定の責任を持つ終身雇用の考え方を保管する意味合いもあったようです。ですが、終身雇用制は崩れつつあります。また、働き方改革などで転職し、勤め先が変わっても持ち運びができる確定拠出年金に資金が向かう流れはさらに強まりそうです。
老後の生活を支えるのは、本来公的年金の役割かもしれませんが、少子高齢化や経済の停滞などで将来の給付の先細りは避けられそうにもありません。
私的年金=自分年金の重要性
現役会社員の手取りに対する高齢夫婦世帯の年金額の割合を示す「所得代替率」は、2019年で61.7%です。約30年後には50%程度まで低下する見込みで、公的年金を補う「私的年金=自分年金」の重要性が高まっています。
自分年金作りの代表格である、確定拠出年金の現状にも改善余地と課題が多いようです。
運用商品の偏り
その一つは、運用商品が元本確保型に偏っている点です。掛金を企業が拠出する場合でも、定期預金と保険商品が半分以上を占めているのが現状です。日本銀行の大規模金融緩和と超低金利が長引く中、利息収入は期待できません。
拠出限度額の低さ
もう一つの課題は拠出限度額の低さにあります。米国では最大で年640万円が限度額になっているようです。日本でも生涯の上限額を決めて、多く拠出できる年を認めるなど柔軟な仕組みづくりが望まれるところです。
確定拠出年金制度を所管する厚生労働省は、使い勝手を良くする取り組みを行っており、2022年以降に確定給付と併用する場合には、併せて月5万5千円まで拠出可能となります。個人型の確定拠出年金iDeCoでも、確定給付型に加入する会社員だと月1万2千円の上限額を月2万円にあげる方向です。
まとめ
繰り返しになりますが、私が現役世代の皆さんにお勧めしたいのは、まず、確定拠出年金を限度額一杯まで掛金とし、「掛金や運用益などが非課税」と「社会保険料控除の活用」というメリットを十分に生かして運用したうえで、残りの資金の運用方法を考えて運用していくということです。税制面での恩恵を考えれば、「iDeCoを含めた確定拠出年金」が優先順位一番に挙げられます。