老後費用の捻出は?①自己資金、②年金繰り下げ

みなさん、こんにちは!「家族信託」や「遺言書」など生前の相続対策に特化した取組を行うディアパートナー行政書士事務所です。

令和5年6月5日付日本経済新聞電子版「老後費用、まず自己資金で 年金は長生き視野に繰り下げ」と題して、「老後資金」についての記事が掲載されていました。

最近は20歳代、30歳代の人でも自分の老後資金のことを真剣に考えている人も多いと聞きます。経済の低成長の時期が長く続き、将来訪れる老後の生活を支えるためにも早くから準備をしておくという風潮になってきたのでしょう。

また平均寿命の延伸などによっても、「長生きするリスク」=「多くの老後資金が必要」ということが強く意識されているのかもしれませんね。

公的年金は繰り下げて増額を

「老後の支出はどう賄えばいいのでしょうか」。社会保険労務士の岩城みずほさんは、老後資金の相談に訪れた都内の男性会社員Aさん(45)にこう質問されたそうです。Aさんは公的年金だけでは生活費が不足しかねないため自己資金を準備し、少しずつ取り崩すことを考えています。ただ長生きすると自己資金が途中でなくなる可能性があり、どれくらいの額を用意すればいいのか不安だといいます。

岩城さんがAさんに助言した選択肢は自己資金を優先的に使い、公的年金は受給開始を繰り下げて増額しておくという案でした。自己資金を年金の受給までのいわば「継投資金」にする考え方です。公的年金は原則65歳からの受給開始を1カ月遅らせるごとに0.7%増額されます。最大で75歳まで遅らせることができ、その場合は84%増となります。

公的年金の強みは終身受給することができることです。繰り下げで増額した金額を亡くなるまで受け取れるため、「長生きへの不安が小さくなる」と岩城さんは指摘しています。

しかし、年金受給がない繰り下げ待機中の生活は自己資金で賄う必要がでてきます。基本的には生活費に一定の余裕資金を加えた金額を用意すればよいので、必要な金額のめどを考えやすくなります。

具体例で考えてみましょう。

65歳から働かず年金繰下げする場合

まずは健康上の理由などで65歳で働くことをやめ、繰り下げだけで年金を増やすケースです。

65歳受給開始の場合の夫婦の年金額が厚生労働省のモデル年金(会社員と専業主婦世帯)の22万円とし、これを月30万円に増やすことを目指します。

2019年の年金財政検証で厳しい経済前提(実質経済成長率0%)の場合、2019年で45歳の人の65歳以降100歳までの総受給額は、2019年の物価に換算して1割減る予測となりました。家計調査の夫婦高齢者世帯の平均的な支出額は27万円ですが、将来の実質減額などに備えて余裕を持たせ30万円としました。

30万円は22万円の36.4%増にあたりますので、年金受け取りを1カ月遅らせると0.7%増なので52カ月(4年4カ月)の繰り下げで可能になります。遅らせる無年金期間の生活費も同額の30万円とすると、1560万円が必要になります。

ただ「医療・介護費などが予想外に膨らむ場合に備え、余裕資金を少なくとも800万円程度はみておきたい」(社会保険労務士の井戸美枝さん)ということです。それを考慮すると65歳時点での必要自己資金は2360万円になります。

退職金のうち、例えば住宅ローンの返済後に残るお金として1000万円を見込めるのであれば、少額投資非課税制度(NISA)や個人型確定拠出年金(iDeCo、イデコ)、企業年金、預貯金などの自己資金で1360万円を作れば良いことになります。

就労継続が有効

さらに豊かな老後のために月35万円を目指すのならばどうなるのでしょうか。月35万円は月22万円の59.1%増になるので85カ月(7年1カ月)遅らせることが必要になります。待機期間の生活費もやはり35万円とし、予備費800万円を加えると必要自己資金は3775万円とかなり増えます。

この金額を抑えるためには、厚生年金加入で長く働くことによる年金増額を組み合わせることが有効になります。厚生年金は概算で、加入中の総収入が180万円増えるごとに年約1万円増えます。例えば年6万円(月5000円)を増やすためには65歳以降、夫婦のどちらかが年360万円で3年間働けば良いことになります。

この場合、月5000円の年金増額が見込めますので、年金の目標である月35万円のためには繰り下げで34万5000円に増やす必要があります。もとの22万円からは56.9%増ですので、繰り下げ待機期間は82カ月(6年10カ月)にやや縮むことになります。(3カ月短縮)

その期間も月35万円支出するとして82カ月分の生活費に予備費800万円を足すと3670万円。3年分の収入1080万円を引くと、65歳時点の資金は2590万円となります。退職金のうち老後に回せる資金が1000万円あるのであれば、残りは1590万円になります。

ちなみに月30万円の年金を目指すケースでやはりどちらかが年収360万円で3年間働く場合であれば、同様の計算をすると65歳の必要自己資金は退職金1000万円以外では190万円にまで圧縮できます。

年金繰り下げに加えて、長く働くことを組み合わせると「就労期間中の収入増、繰り下げ待機期間の短縮、厚生年金増額という3つの面で老後の安心感が増す」(第一生命経済研究所の谷内陽一主席研究員)ことになります。

これらはあくまで一例であり、生活費や夫婦の年金額、予備費を勘案して計画を作ることが重要となります。特に予備費は老後の安心感を高めるためにできれば多く見積もりたいところです。そして、使わなくてすんだ予備費は堅実に運用を続けることで、老後の安心感はさらに高まることになります。

まとめ

長生きリスクへの対応として、①なるべく長く働き続けて収入を得る、②年金受け取りの繰下げによる年金の増額、③長く厚生年金へ加入することによる厚生年金の増額 などの方策が考えられます。

長く働き続けるためには、心身ともに健康であることが非常に大切になってきます。また、たとえ健康であっても何らかの事情(親族の介護など)で長く働き続けることができないといった場合もあり得ますので、その都度、戦略を見直していく必要もありそうです。

老後の幸せな生き方とは?

いつまで働くかは悩ましいところ

ライフプラン上では、老後の安心感を得るために長く働きつづけることの効果が強調されますが、「いつまで働きつづけるか」という問いの答えは悩ましいところがあります。

「働けるだけ長く働きたい」という希望を持つシニア層も多くなっていますが、長く働くことによって、自分の人生でやってみたかったことができなくなるリスクも生じるかもしれません。

現在の健康寿命(男性72.68歳、女性75.38歳)を考えると、働けるだけ長く働いた結果、働かなくなった時が「健康上の問題で日常生活が制限されるようになった時」だとしたら、ちょっと切ないかもしれません。日常生活に不自由を感じていては、人生で自分がやってみたかったことに大きな支障があるかもしれません。

こうした身体機能、実際には個人差も大きいので、平均値としての健康寿命はあまり参考にならないかもしれませんが、支障がないうちに「自分がやりたかったこと」をやっておきたいものです。

そう考えると「自分がいつまで働くか」を決めるのは、なかなか勇気がいる決断になるのではないでしょうか。あまり老後の不安を感じることなく、自分がやりたかったことも実行できるというのが一番望ましいところですが、現実には難しいかもしれません。

自由な時間をしっかり確保しながら長く働く!

働き方にもよりますが、人生でやりたかったことをやりながらも、なるべく働き続けることができたら、これは幸せなことではないでしょうか。

雇用される場合には自由な時間を確保しにくい場合も想定されますが、個人事業(とくに一人だけの事業)であれば、自分の日程に合わせて勤務する日を調整することも容易いのではないでしょうか。十分な収入が得られないというリスクも出てきますが、自由な時間を確保するという点では大いにアリではないでしょうか。

いずれにしても、出口戦略(※この場合の出口戦略とは「この世からの出口=死亡した時」を指しています(笑))を考えながら、老後の生活設計を考えていくことが非常に大事になってきます。誰しも自分が死んだときのことなど考えたくはないのですが、「充実した人生を送った」と思えるためには、人生の出口戦略をしっかりと考えて過ごしていきたいものです。

生前の相続対策は必須

人がいつ死ぬかは誰にもわからないものですが、その時はいずれ必ずやってきます。

ディアパートナー行政書士事務所では、家族信託に限らず、遺言書作成や任意後見契約など生前の相続対策のご相談を承っておりますので、相続対策全般についてお気軽にご相談ください。

ご自宅への訪問やサザンガク(下のチラシを参照)でも面談に対応しています。また、土曜日・日曜日、時間外の対応も行いますのでお気軽にお問い合わせ下さい。

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