知らなきゃ損する!急病や老後のお金の制度
みなさん、こんにちは。認知症対策の強い味方となる”家族信託”を活用した相続対策を専門にしているディアパートナー行政書士事務所 代表の瀧澤です。
今回は、11月6日付日本経済新聞の「何でもランキング」から急病や老後のためのお金の制度のランキングです。こういった制度はセーフティネットであることも多いので、ランキング付けがなじむのかどうかは疑問ですが、進めていきましょう!
急病、老後……様々な場面で生活の支えとなる「お金の制度」がある。身近なようでいて、実は意外に見落としや誤解が多い。「知らないままでは損をする」ものは? 専門家に選んでもらった。・・・というものです。
1位 高額療養費制度
(毎月の医療費負担に上限、健保組合で「付加給付」の例も)
毎月の医療費に上限を決めておき、これを超える負担が生じた場合に払い戻してくれる制度です。もともと健康保険によって医療費の自己負担は現役世代で3割となっているが、この制度でさらに支出が抑えられます。
その人の収入などによって上限額は違うが、医療費が月に合計100万円かかっても、健康保険で30万円になり、さらにこの制度で最終的な負担が9万円弱で済む例があります。勤め先の健康保険組合が「付加給付」というもう一段の上乗せを用意していて、2万円程度に抑えられる場合も。
上限を超えた額は通常3~4カ月後に払い戻してもらうことになるが、「事前に入院などが分かっている場合は『限度額適用認定証』という書類をとっておけば、立て替えも要らない」(竹下さくらさん)といいます。
入院や手術などに備える民間の医療保険は本来「この高額療養費制度の対象外の費用に備えるもの」(馬養雅子さん)。ところが「制度の説明が不足していると感じる。加入している健保組合の制度で月の上限医療費が数万円で済むと恵まれているのに、高額な医療保険にバッチリ加入していた例があった」(深野康彦さん)という指摘が多いようです。まずは高額療養費制度の仕組みをしっかりと確認しておきましょう。
2位 年金受給の繰り上げ・繰り下げ
(2022年4月以降は「75歳から」選択肢)
公的年金は原則65歳からもらいますが、60~70歳からの受け取りも選べます。早くもらえば繰り上げ、遅くもらえば繰り下げといいまます。繰り上げると1カ月ごとに年金は0.5%(2022年4月以降は0.4%)減り、繰り下げると1カ月ごとに0.7%増えます。計算すると、年金は60歳に繰り上げれば30%減、70歳まで繰り下げると42%増になります。
この制度は最近、よく耳にするのではないでしょうか。
「来年4月から繰り下げが75歳まで延長されることで注目テーマのひとつになった」(藤川太さん)。延長後に75歳まで繰り下げたとすると年金は84%増額とほぼ2倍になります。
ただし実際に受け取る総額はどれほど長生きするかなどで変わります。目先の増減よりも「繰り上げた場合に長生きすると、普通にもらう場合より年金総額は少ない」(森本幸人さん)点は見落とせないといいます。想定よりも長生きしたとき、年金が少ない不安は大きいでしょう。「公的年金は『保険』。損得で考えず、長生きしたときの安心感を優先すべきだ」(大江英樹さん)
大江さんの言葉ではないですが、「公的年金は長生きの保険」は格言ですね。人の寿命は分からないので、損得勘定に走りすぎても、あまり意味のあるものではありませんね。
3位 年金保険料の免除・猶予
(受給資格期間に算入、追納で受け取り増)
20歳以上60歳未満が加入する国民年金(基礎年金)。学生で収入が十分ない、社会に出た後でも失業などで保険料を払う余裕がない場合は保険料の全額または一部の免除、納付猶予の手続きがあります。
「手続きが承認されれば、年金受給資格期間に算入される」(平野敦之さん)。つまり免除・猶予期間も年金をもらうのに必要な加入期間(10年以上)と扱われます。重い障害を負う、亡くなるといった万が一のときに障害・遺族年金の対象となり得るのも大きいといいます。免除・猶予とも10年以内であれば後から保険料を納め(追納)、受け取る年金を増やすこともできます。
何も手続きせず、ただ保険料を払わない「未納」に恩恵はありません。「若い学生も重要性を知り、きちんと対応したい。手続き忘れは損しかない」(竹下さん)と専門家は指摘しています。
4位 iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)
(税優遇 加入年齢に注目)
出ました!iDeCo!公的年金に上乗せして個人が任意で加入する私的年金です。
掛け金、運用益、給付を受け取るときに税優遇があります。掛け金が全額所得控除、運用益も非課税となるのは「収入が高い人や長期運用できる若い人の資産形成に強い味方」(和泉昭子さん)となります。
受け取るときの税優遇はやや複雑で、「一時金で受け取るか年金で受け取るか、ほかの退職金や年金も併せて考える必要がある」(大江さん)といいます。
「(条件を満たせば)22年には加入できる年齢が60歳未満から65歳未満になるほか、受け取り開始年齢は75歳まで拡大される」(井戸美枝さん)のも知っておきたいですね。
5位 傷病手当金
(業務外の病気やケガが対象)
健康保険組合などに加入する会社員らが業務外の病気やケガで働けないときに受け取れます。給与の3分の2程度が最長1年半支給。「退職前から受給しているなど一定要件を満たすと、退職後も受給が続くので長期の保障になる」(上野香織さん)
現在は途中出勤などで不支給期間があっても開始から1年半までですが、法改正で22年からその間は含まずに通算1年半まで受け取れるようになります。「傷病手当金があるのに民間保険に手厚く入る例が多い。一方で傷病手当金が基本的にない自営業者らで働けないときの備えがおろそかな例もある」(深野さん)ので注意したいものです。
こういった制度の存在を理解した上で民間保険の加入を考えたいものです。
6位 遺族年金
(働き方や家族構成を確認)
国民年金や厚生年金の被保険者が亡くなったとき、その人によって生計を維持されていた遺族が受け取る年金です。基礎と厚生の2種類あり、「一家の大黒柱が亡くなったときに請求できると思われがちだが、共働きで収入が少ない方の配偶者が先に亡くなった場合なども要件を満たせば請求可能」(望月厚子さん)となります。一定の条件を満たせば、男性でも遺族厚生年金を受給できるようになったのは画期てきかもしれません(私も亡妻の遺族厚生年金が支給されています!)
もらうことができるか否か、金額はどうかは子どもの有無、会社員か自営業かなどの条件によって変わるので専門家に相談して確認してみましょう。「遺族年金の額を知らないと不必要に高額な民間の生命保険に加入することになりかねない」(藤川さん)という声もありました。
遺族年金は課税されないのも大きなメリットですね!
7位 厚生年金の適用範囲
(対象拡大 「扶養」の働き方に影響)
パートやアルバイトなどで働く人も一定の基準を超えると、厚生年金など社会保険に加入することになります。「以前は正社員の4分の3以上の労働時間など(条件がより)厳しかったが、現在では(従業員501人以上の会社などで)週20時間以上働くといった基準を満たせば加入となっている」(森本さん)
配偶者の扶養範囲内にいた人は新たに保険料を払うことになる一方、将来受け取る年金は基本的に増えます。「22年10月からは従業員101人以上の会社にまで適用が拡大される」(上野さん)ので、検討が必要になる人は一段と増えそうです。
8位 NISA(少額投資非課税制度)
(売却益や配当に税金かからず)
出ました!NISA!意外とランキングが低かったですね。
株などの売却益や配当には通常約20%の税金がかかってきますが、NISA(ニーサ)口座で毎年一定額の範囲で購入した金融商品の利益に対しては税金がかかりません。「運用の経験がない人はそもそも約20%の税金を知らず、優遇といわれてもピンとこない」(馬養さん)かもしれませんが、実際は大きな差になり得ます。
基本は一般NISA、つみたてNISAの2種類。同じ年に両方は使えず、どちらかを選ぶことになります。24年に一般NISAは仕組みの異なる新NISAになり、「もし金融所得課税が将来強化されるようであれば重要性はより高まる」(平野さん)との意見もありました。
9位 副業(複業)時の確定申告
(所得20万円意識、税還付も)
新型コロナウイルス禍で働き方が変わるなか、改めて注目が集まった副業(複業)。会社員がフリーランスの立場で副業をして、その所得が年間20万円を超えるなどすると確定申告が必要になります。一方、副業先でも雇われて給与をもらっている場合にはその給与収入が20万円を超すかが基準になります。
ただし20万円を超えなくても「2か所以上から給与をもらっていると、多くの場合、確定申告によって税が還付される」(市川恭子さん)。所得税が申告不要なケースであっても「住民税は申告が必要なので忘れないように」(井戸さん)したいものです。
10位 教育訓練給付制度
(社会人の「学び直し」支援)
働くためのスキルアップ費用の一部を出してもらうことができる制度。いくつかの種類に分かれている。例えば専門実践教育訓練は最大で受講費用の70%(年間上限56万円、最長4年)が支給されるので、「仕事に直結できる資格をリーズナブルに取得することができる」(柴原一さん)といいます。
一定の要件を満たす必要はあるが、「非正規社員でも支給される」(吉野一也さん)、「退職した人も利用できる」(望月さん)など、対象となる人は一般に思われているより広いようです。社会人にとって学び直しの重要性が高まっていることもあり、注目が集まりそうです。
番外編 医療費や退職金 「控除」に要注意
10位までに入らなかった制度についても専門家から注意点が寄せられました。
例えば医療費控除。年10万円(総所得金額が200万円未満の場合はその5%)を超えると使えるのは知っていても、見過ごしがちな点がある。「(健康保険が適用されない)自費治療はすべて対象外と思う人がいるが、誤解」(市川さん)。一定の条件を満たせば保険外の歯科治療などでも対象になります。
「介護サービスにも対象となる費用があると知らなかったり、逆に全額対象になると思っていたりする人がいる」(柴原さん)。セルフメディケーション税制にも注意したいものです。対象の医薬品購入額が年1万2000円を超えた分が対象となるが、医療費控除とどちらか一方しか適用されません。
また、退職所得控除も気をつけなければなりません。退職金やイデコの一時金などはいずれも退職所得とみなされます。「受け取りは一時金か年金か、一時金の場合はいつ受け取るかなどにより、手取り額や医療・介護の負担割合が変わってくる」(和泉さん)。老後の生活設計に影響するので、慎重に検討したいものです。