相続空き家の維持コストは大きな足かせに!
こんにちは、ディアパートナー行政書士・FP事務所代表の瀧澤です。
空き家解消セミナーを開催
今月初めに、相続専門の行政書士さんと一緒に「空き家解消セミナー」を開催しました。第2部で私が話をさせていただいたのは、「相続空き家の実際」をテーマに、自分が体験した相続空き家2軒の「賃貸」と「売却」の顛末を整理し、具体的な数字(かかった費用や収入見込み額など)を例示しながら分かりやすく(と自分では思っている・・・)解説しました。
空き家の全国的な状況
空き家が全国的に増加しています。総務省が5年ごとに発表する「住宅・土地統計調査」によりますと2018年に848万9000戸と、2013年に比べて3.6%増えて、住宅総数に占める割合は13.6%と過去最高になりました。おおむね7戸に1戸に当たる計算になります。
相続で引き継いだ家に誰も住まず、空き家になるケースが多いとされています。
先月の日本経済新聞「マネーのまなび」の中で、「相続空き家、かさむコスト~ずさん管理で税負担増も~」と題して特集されていますのでご紹介しますね。
相続空き家の事例
東京都の60代男性会社員Aさんは、年間20万円もの相続空き家の維持費がかかることにため息をついています。
Aさんは、千葉県西北部で一人暮らしだった母が昨年亡くなり、母の家を相続しました。Aさん自身は東京都内に持ち家があり、相続した家は現在空き家となっています。周囲は住宅地でベッドタウンになっていますが、最寄り駅まで歩いて30分程度かかるため簡単には売却できそうにないということです。
そこで、数年間はこの空き家を持ち続けようと維持費を計算したところ、年間20万円もの金額がかかることがわかりました。
Aさんのケースでの「空き家にかかる年間維持費の例」は以下のとおりです。
〇固定資産税・都市計画税 68,000円
〇水道光熱費 55,000円
〇庭木剪定・除草費 50,000円
〇火災保険料 22,000円
〇その他 5,000円 合計20万円
空き家のその後
手入れをするために、水道光熱費をゼロにするわけにもいきませんし、火災保険も掛けなければ心配です。しかし、時々、換気や掃除、除草など手入れをしても、住んでいる時と比べると、空き家の場合は傷みが激しくなります。とくに給排水関係はすぐにダメになってきます。
また、火災保険にしても空き家の場合は、加入できない火災保険も多いので注意が必要です。
一般的に空き家でも一定の維持管理の経費が必要になります。
土地や建物などを所有するとかかる固定資産税、掃除など定期的な手入れをする際に必要な水道光熱費、万が一の火事に備える火災保険料などの費用が発生するのが一般的です。ほかに戸建て住宅の場合は、庭木の剪定や除草の費用が必要になります。放置して庭が荒れると近所から苦情が出ることが少なくありません。
また、自然災害や経年劣化で壁や屋根が壊れたりすれば、臨時の修繕費も発生してきます。
特定空き家「税制も大きく影響」
こうした費用のうち特に注意したいものは、固定資産税と原則として市街化区域に不動産を所有している場合にかかる都市計画税です。維持管理費用に占める割合が大きいうえ、空き家の管理を怠って一定の条件(特定空き家)に当てはめると、住宅用地に適用する税軽減の特例の対象から外れる可能性があります。
固定資産税や都市計画税の税額は、税計算の基となる課税標準額に税率をかけて算出します。家屋は経年劣化を考慮した建物の評価額がそのまま課税標準額になります。一方、住宅用地は公示地価の約7割をメドに決める評価額を引き下げる特例が存在します。具体的には、土地の200平米以下の部分について、固定資産税では1/6に、都市計画税では1/3になります。
しかし家を放置し、市区町村から「特定空き家」に指定されると特例を受けることができない場合があります。
この特定空き家は2015年施行の「空き家対策特別措置法」などで導入された制度で、所有者に適切な空き家の管理を促すのが狙いです。
特定空き家の措置の流れ
特定空き家の措置の具体的な流れは以下のとおりです。
1)自治体が空き家を調査し、倒壊など保安上危険になる恐れがあったり、衛生上著しく有害となる恐れがあったりする場合には「特定空き家」と指定します。
2)空き家所有者は、家屋の修繕や取り壊し・撤去などを求められる「助言・指導」を受けて、これに従わない場合は「勧告」に進みます。
3)勧告を受けても必要な対応をしなければ、税軽減の特例が適用外となり、税負担が大幅に増える可能性があります。
たとえば、さきほどのAさんは特例を受けているため、固定資産税と都市計画税の負担は約68,000円で済んでいますが、特例から外れると、税負担は約25万円と4倍弱に跳ね上がる計算になります。都市計画税がなく固定資産税だけの区域にある宅地ですと、税負担は約6倍になる可能性もあります。
市区町村の要請を拒み続けると、50万円以下の過料を科す「命令」、さらには、市区町村が家屋などを強制撤去する「行政代執行」に進んでいきます。「行政代執行」の解体費用は原則として空き家所有者の負担になります。
特定空き家の現状
所管する国土交通省によりますと、特定空き家の指定を受けたのは、2019年度までの5年間で19,029件でした。このうちで固定資産税などの特例が適用されない勧告処分を受けたのは、1,351件と全体の7%に過ぎず、現時点では空き家の一部にとどまります。ただし楽観視するのは禁物と専門家は指摘しています。
相続した家を売却する予定でも、物件の条件によっては難航するケースも少なくありません。保有期間が長引き、管理を怠ると誰にでも勧告の対象になる可能性があります。自治体の一部には、特定空き家の条件に該当しなくても、税負担を引き上げるべきだとの声も出ています。
空き家予備軍の対応は?
空き家になりそうな親の自宅がある人はどうすれば良いのでしょうか?肝心なのは相続人の間で早めに対策を話し合うことです。誰も住まないのであれば、まずは売却や賃貸を検討したいところです。売却や賃貸が難しいのであれば、誰が親の家を継ぐのかを決める必要があります。それには税負担も含めて維持管理費を早めに見積もることも重要になります。専門家は、「家を相続した人が全額負担するのか、相続人の間で分担をするかなどを決めておくこと」が大事と指摘しています。
まとめ
コロナ禍ではありますが、お盆の時期に「相続空き家」の対応について、相続人間で話をするきっかけになれば良いかもしれません。「このままで」という時間延ばしが一番ダメなことかもしれません。まずは一歩踏み出すことが大事です!