目指せ、年金増額 今こそ「WPP」に注目

みなさん、こんにちは!「家族信託」に特化した取組を行うディアパートナー行政書士事務所です。
今回は、日本経済新聞「Life is MONEY」ねんきん月間に考える(3)に年金増額についての記事が掲載されていましたので、それに関して投稿していきます。

60歳以降の生き方として「WPP」という考え方が注目されている

今回は繰り下げ受給によって増額された年金を生涯受け取るために、公的年金「以外」を活用するという視点を考えてみます。

増額された年金を終身でもらうためのWPP戦略

本来の受給開始年齢である65歳ではなく、66歳以降に年金を受け取り始めることで年金額を増やす選択肢「繰り下げ」を選びたいのなら、繰り下げている期間のお金をどうやりくりするかという問題を片付ける必要があります。

長い目で考えれば、増額された年金を人生100年時代に受け取れるメリットのほうが勝るとしても、その数年間の資金繰りにメドがたたなければそもそも選択の余地がありません。

そこで今、その解決策として提唱されているのがWPP理論です。Wは「長く働く(Work Longer)」、次のPは「私的年金(Private Pensions)」を意味しています。この2つを活用し、2つめのPすなわち「公的年金(Public Pensions)」の受け取りを最大限に遅らせるようにする、という考え方です。

かつては(W:60歳定年)→(P:私的年金+P:公的年金)というモデルが一般的でした。私的年金は公的年金に上乗せするという考え方です。また仕事をやめる引退年齢は公的年金の受給開始とセットでした。

WPP理論はこうした固定観念を個人の働き方や資産状況に応じて変化させることを提案しています。

今回は「おすすめWPP」を3つほど提案してみたいと思います。あなたが採用できる年金繰り下げ受給プランはあるでしょうか。

WPP1 働く期間を純粋に延ばす

今までは60歳代前半といえば公的年金を部分的にもらいつつ、大きく減額された賃金に加え、雇用保険の高年齢雇用継続給付を合計してやりくりすることが前提となっていました。むしろ公的給付をもらうことを前提に賃金を引き下げていた実情すらあります。

これからの「完全65歳年金世代」においては、同一労働同一賃金の取り組みによる賃金水準の引き上げや65歳以降に雇用を延長する動きなどを背景に、65歳まで、あるいはそれ以降もしっかり稼ぐ仕事ができる環境が少しずつ整いつつあります。

もし、65歳以降も働いて家計のやりくりができる稼ぎが確保できるのであれば、公的年金をまったくもらわずに65歳以降も働き続けるのが第1の選択肢です。

これは手元の老後資産を取り崩すこともなく、引退年齢を60歳代後半にシフトさせることで年金増額を勝ち取る、シンプルな方法です。

ただし、日々の生活やライフスタイルを維持できる程度の年収が必要となるため、65歳以降も会社から必要とされるだけのビジネススキルを有することが前提となります。

WPP2 働かずに老後資金を取り崩す

2つめの方法は逆に「仕事を辞めて無収入になっても、あえて公的年金の受給を繰り下げる」という方法です。つまり手元の資産を取り崩しながら何年か生活をし、繰り下げ受給による年金増額を選ぶやり方です。

仮に夫婦の年金額が月22万円もらえる予定で、預金残高が2500万円あったとします。老後の生活水準は年300万円とします。5年間、公的年金をもらわなければ1320万円の年金をガマンすることになり、1500万円分の預金残高を減らすことになります。

しかし、5年後には42%増の公的年金つまり31.24万円相当をもらい始めることになり、この増額された年金を一生涯もらい続けることができます。概算にはなりますが、約12年でガマンした年金額相当を回収し、それ以降はプラスとなりますし、余裕のある定期収入が100歳でも110歳でも長生きする限り保証されることになります。

最初の数年間、預金残高が減り続けるのは恐怖です。これをしっかり計画して乗り越えることができれば、100歳の人生も怖くなくなります。

繰り下げに伴う増額割合は1年ごとに8.4%です。66歳以降の受取時期については正確に月換算して増額する仕組みなので、「5年は我慢と思ったが、これ以上預金残高が減るのはつらいので3年と4カ月で年金の受け取りを始めよう」というような軌道修正もできます。

個人型確定拠出年金(iDeCo)や個人年金のような私的な年金制度、企業型確定拠出年金や確定給付企業年金といった会社の企業年金制度などがあり、「5年有期年金」「10年有期年金」のような給付を受けられるなら、これを活用する方法も考えられます。

例えばiDeCoに1200万円あるので300万円ずつ4年にわたって取り崩し、69歳から33.6%増額された公的年金を受ける、というような選択肢もあるわけです。

WPP3 長く働きつつ老後資金の取り崩しも使う

ここまでの方法は「働くか、取り崩すか」という二者択一で説明しましたが、組み合わせる方法も考えられます。

65歳以降はのんびり仕事を継続し、年収が下がった分、iDeCoや企業年金の受取額を組み合わせて生活費をまかないます。

ここで「仕事の収入+公的年金収入」としないのがWPPのポイントです。65歳以降は賃金と年金の合計が月47万円までは在職老齢年金がカットされないのですが(2022年4月からは60~64歳も同様になる)、あえて「仕事の収入+私的年金などの取り崩し」とします。

これにより、公的年金の増額を目指そうというわけです。

WPPにはシミュレーションやアドバイザーの力が必要に

ここでは基本的な考え方を3つ提示しましたが、個々の事情による部分が大きいことがおわかりだと思います。検討する前提条件を考えてみても、雇用の条件(何歳まで、いくらの賃金で働けるか)、私的年金の給付条件(何年間、いくらの年金受け取りが可能か)、個人資産の状況(退職一時金を含む資産がどのくらいで、どこまで取り崩しができるか)などがあり、まさに百人百様です。

これからは、働き方や私的年金、取り崩しを組み合わせつつ繰り下げ受給の提案ができる、高度なアドバイザーが求められるようになっていくでしょう。

年金受け取りのアドバイザーというと今までは主に「手続き」の面に焦点が当たっていました。書類を整えて裁定請求(年金を受け取る手続き)を無事終わらせるお手伝いをするイメージですが、WPP時代にはそれでは力不足になります。

あるいは資産管理ソフトなどの機能強化にも期待が寄せられます。ソフトでいくつかシミュレーションをしつつ、最終的に決断できるようサポートするようなツールです。

WPPという3つのキーワードをどう組み合わせるかで、私たちの老後が大きく左右される時代が近づいているのです。

まとめ

年金受給の方法も、まさに多様化の時代に突入してきた感があります。それぞれの御事情に合わせて、しっかりと考えて決断したいものです。

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