晩婚化で顕著!40代の家計に「三重苦のリスク」

みなさん、こんにちは!「家族信託」や「遺言書」など生前の相続対策に特化した取組を行うディアパートナー行政書士事務所です。

2022年6月7日付け日本経済新聞電子版に、「子育て・住宅・自分と親の老いが重なり、人生の正念場」となる40歳代の家計のリスクの記事が掲載されていましたので、それに関して投稿していきます。この記事によれば、40代からの家計は「三重苦」に直面しやすいといいます。家計のかじ取り次第では、長い老後に資金が底をつくリスクもありえるようです。こうしたリスクを回避するためには、家計収支の先行きを考えて備えることが欠かせないということです。

家計のかじとり難しく

子ども、住宅、老後準備――人生の三大支出が40代からの家計で重なってきます。標準的な家族像の人生を統計から見てみます。

まず最初に、子どもにかかる費用からです。厚生労働省の2021年人口動態統計月報年計(概数)では、2021年の平均初婚年齢は夫が31歳、妻が29.5歳。第1子出生時の母の平均年齢は約31歳でした。

一般的に教育費が本格的に増えるのは中学や高校に進学するころからで、ピークは大学入学時になります。私立学校に進む場合を想定すると教育費は子どもの成長と共に膨らみ、夫、妻ともに50歳ごろの頂点に向けて増えていきます。

日本政策金融公庫が2021年末に公表した調査では、私立大学文系に進学した場合の入学費用は約82万円、在学費用は年152万円でした。

一方、住宅費用はどうなっているでしょうか。国土交通省の2021年度の住宅市場動向調査で、初めて住宅を取得した世帯主の平均年齢をみると、分譲マンションや注文住宅は約40歳、分譲戸建て住宅は約37歳でした。購入資金の平均は分譲マンションで約4700万円で、そのうち約3300万円を借入金で賄っているのが現状です。

40歳から返済期間35年、年1.4%の固定金利で住宅ローンを組むと毎月返済額は10万円弱。先ほどの出産と重ねると、40~50代で教育費と住宅ローン返済が合わせて年300万円程度になる年もあります。

今の40代は、親世代に比べて家計のかじ取りが難しくなってきています。まず第一に、老後が長くなっってきています。厚生労働省の簡易生命表によると1995年の平均寿命は男性が約76歳、女性が約83歳でしたが、2020年には男性約82歳、女性が約88歳と5年程度延び、老後に必要なお金は必然的に多くなってきています。長い老後に向けて40代は正に準備を始めなければならない時期となってきます。

40代の親世代より住宅費や教育費も膨らみがちになっています。不動産経済研究所によると2021年度の首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)の新築分譲マンションの平均価格は6360万円と、31年ぶりに過去最高を更新しています。
三井住友信託銀行「三井住友トラスト・資産のミライ研究所」の調査では、今の40代で1992~2001年に住宅を購入した人の借入額は平均2412万円でしたが、2012~2021年に購入した人の借入額は平均2725万円と約300万円増えています。金利低下で利息負担が減ったとはいえ借入増は家計のリスクに直結します。

私立中学に進学で老後資金に危機

教育費も上昇傾向が続いています。文部科学省の2018年度子供の学習費調査では、小学校から高校まで公立の学校に進学した場合の学習費総額は、約480万円、中学から私立なら約900万円。2002年度の同じ調査と比べると、中学から私立の場合で約50万円増えています。特に都市部では受験競争も過熱し、首都圏模試センターの推定では今春の首都圏の私立・国立の中学入試は過去最多の受験者数だったといいます。

ファイナンシャルプランナーの竹下さくらさんは「住居費や教育費のかけ過ぎは老後の費用に影響する」と話しています。首都圏で中学受験に備えるには小学4年生ごろからの塾通いが一般的で、塾の費用は受験までに合計250万円程度かかると試算しています。仮に世帯年収800万円でも2人の子を中学から私立に進学させると、老後資金が80代半ばで底をつく計算になる場合もあるといいます。竹下さんは「人生100年時代には問題になる」と話しています。

結婚と出産が遅くなればリスクはさらに増します。フィンウェル研究所の野尻哲史代表は、母親が35歳以上の新生児の比率が2019年に29%に達したと分析しています。第1子を30代前半で出産すると、弟妹をもうけるのは母親が35歳以上となるケースも珍しくありません。この場合、父親は40歳前後が多いと考えられます。

晩産で「三重苦世代」に

子どもが大学生で教育費がピークとなる時に、子どもから見れば祖父母にあたる親が80代後半以上となれば介護のリスクが高まる時期が重なります。ところが、自身は定年退職の時期でもあり、自らの老後資金も必要になってくる時期です。

膨らむ支出のリスクに備えるには40代から将来の収支を見通すことが重要になってきます。竹下さんは「子どもの教育費をどこまでかけるか、教育費をかけた場合に自分たちの老後は大丈夫か、住宅ローンは支払っていけるかなどを、子どもの進路を決める前によく点検すべきだ」と話しています。中学受験に迷うなら、塾通いが始まる小学4年生、つまり30代後半から40代の時期に夫婦で教育費と老後資金の見通しを話し合うべきだと指摘しています。

野尻代表は「この世代は子どもが産まれた段階で、3世代が20年後に何歳になるか書き出してみよう」と助言します。自分の老後資金は個人型確定拠出年金(イデコ)などで備えた上で、親の介護費用について早めに親と話し合うことが重要な「三重苦」対策になります。

住宅ローンは家計のバランスシートで管理

今は「頭金ゼロ」で家を買う人が増えています。三井住友トラスト・資産のミライ研究所の2022年1月の調査では「頭金ゼロ」または「1割くらい」で住宅ローンを組んで買った人が全体の44%を占めていました。30代では65.5%に上っています。同研究所所長の丸岡知夫さんは「頭金をためる時間がない、住宅ローン減税の利点を生かしたいなどの理由が考えられる」と話しています。

夫婦がそれぞれ住宅ローンを借りる「ペアローン」を組む人も目立ち、同調査では20代で2割、30・40代で1割ほどいました。ペアローンの借入額は中央値で約2800万円と単独ローンより約450万円多くなっています。

こうした資金計画の背景は低金利が要因と考えられています。しかし、住宅は人生最大の買い物といわれています。住宅ローンで家計が危機に陥るのを防ぐには、リスクを把握するため「資産と負債を突き合わせて管理することが欠かせない」(三井住友信託銀行の井戸照喜・執行役員)といいます。

資産と負債の管理に役立つのが、家計の貸借対照表(バランスシート)です。左側が「資産」、右側が「負債」で、資産と負債の差が「純資産」になります。左右それぞれの合計が等しくなるはずです。公認会計士で住宅ローンのコンサルティングも行う中村岳広さんは、無理のない資金計画を立てるため住宅購入前に家計のバランスシート作りを勧めています。
資産の欄には現預金の金額をまず記入し「投資などの資産」の項目に投資信託や個人年金を書きます。自家用車などはすぐに換金できない固定資産で、大体の市場価格とします。負債の欄には自動車ローンなどを記載します。

住宅資金は純資産がベースとな、購入可能額の上限は「純資産に無理なく返済できる住宅ローンを足し諸費用などを引いた金額」(中村さん)となります。

無理なく返済できる借入額はどう考えればよいのでしょうか。中村さんによれば、返済条件をボーナス払いなし・元利均等返済・固定金利として、毎月返済額が手取り月収の4割以下になる金額が目安だとしています。定年時の残債が1000万円以下になるのも条件となってきます。

家計の安全性を保つには、純資産をなるべくマイナスにしないことが大切になります。新築住宅は広告費などが価格に含まれるため、頭金ゼロで購入すると家の資産評価がローン残高を下回ることもありえます。それは家を売却しても残債を返しきれない状態を意味します。そのまま定年となり、収入が減って返済が滞れば危機に陥る可能性もあります。

中村さんは、定年時の理想のバランスシートも作ることを勧めています。定年時の理想像から逆算すると、必要な貯蓄額が見えてきます。まず定年時の残債予定額を負債欄に記入。収入が減る定年後に自宅に住みつつ返済を続けるには残債以上の現預金が必要となります。現在の現預金との差額を定年までの年数で割れば毎年必要な貯蓄が計算できるという寸法です。

この場合、資産の欄の「投資など」の項目が老後資金の原資となります。退職金予定額はここに記入することになります。つまり退職金をローン返済に充てないのが理想的な姿です。

自宅の資産価値は「定年まで20~30年あるなら購入価格の5~7割を目安とするとよい」(中村さん)。定年時に純資産をプラスにするには資産価値が維持できる物件を選び、自宅の価値が残債を上回る状態になるのが望ましい状況です。

家計の安全性を保つには、繰り上げ返済をあまり急がない方がいい場合もあります。住宅ローンには債務者の死亡時などに返済を免除する団体信用生命保険(団信)が付くのが一般的です。教育費がかかる期間は繰り上げ返済しない方が安全な場合もあります。

教育費、総額知り「ため時」探る

教育費は子供の進路によりかかる金額が変わっています。文部科学省の2018年度の子供の学習費調査結果をみると、小学校から高校まですべて公立なら12年間の教育費は500万円弱ですが、中学・高校が私立なら約900万円、小学校から私立なら1700万円弱となります。

FPの峰尾茂克さんは「教育費は先に総額を把握すべきだ」と話しています。文科省の調査では、公立小6年間の費用は計200万円弱、中学校は3年間で約150万円、高校は同約140万円。一方私立は、小学校が1000万円弱、中学校が約420万円、高校が300万円弱。希望する進路に合わせてそれぞれの金額を足し「大学はその時点で志望校の学費を調べて足すとよい」と話します。

大学卒業までの総額が把握出来たら、今後にかかる年平均の額を計算します。例えば現時点で子供が小学1年生の場合、小学校は公立、中学から私立に進学し大学は私立文系に進むなら、年平均額は約100万円になります。親の退職が子どもの卒業より早ければ退職までの年数で割ります。

峰尾さんが勧めるのは年平均の金額とその年の教育費との差をためていくことです。先ほどの例では年平均の教育費100万円まで余裕がある小学校在学中がため時となります。中学生以降は教育費が年100万円を超える年が多く、小学生の時にためた教育費を取り崩すことになります。

「子ども1人ずつ教育費を別の口座で管理すれば、途中で足りなくなるのを防げる」(峰尾さん)。教育費を専用口座に置いておけば住宅購入など他の目的で使ってしまう恐れもなくなります。

私立中学を受験する場合は小学4年生ごろから塾の費用がかかることが多くなります。峰尾さんは、塾代など受験費用として計200万円程度を総額に上乗せして計算するよう助言しています。

親の介護準備は「貯金簿」から

親の介護は早めに心の準備をしておきたいものです。FPの畠中雅子さんは「準備がないまま介護が始まると、親のお金で賄えない高額な施設に入ることになりがち。仕送りで子ども自身の老後資金がなくなりかねない」と言います。
畠中さんは「準備の第一歩は親の財産の把握」として、取引先の金融機関ごとの「貯金簿」のひな型を子どもが作り、親に記入してもらうことを勧めています。「介護が必要になったらどんなサポートができるか考えたいから」と支援の意志を明確に伝えて親に頼むのがコツといいます。

金額と同時に在宅介護の希望も聞いておきます。「最期まで自宅で過ごす」、「自分で家事ができなくなったら施設に住み替える」、「要介護認定を受けたら施設に住み替える」などの選択肢をひな型に書き、親に「はい・いいえ」を選んでもらうとよいといいます。希望がわかれば施設を見学に行くなど具体策を検討することができます。

子世代の準備の優先順位が高いのは、自分の老後や介護資金です。自分に必要な資金を確保した上で親の介護に払える額を判断していきたいものです。

生命保険文化センターの2021年度の調査では、平均介護期間は61.1カ月で、その費用は月額平均8.3万円、一時費用が平均74万円。合計で平均約600万円に上ります。実際の費用は希望する施設や介護の形態で大きく異なります。畠中さんは「親が75歳の後期高齢者になる前に介護の具体的な対策を話し合いたい」と話しています。

まとめ

冒頭にも述べていますが、記事によれば、40代からの家計は「三重苦」に直面しやすいとしています。家計のかじ取り次第では、長い老後に資金が底をつくリスクも大いにありえるようです。こうしたリスクを回避するためには、家計収支の先行きを考えて備えることが欠かせないということです。

また、周りの環境や家族の状況が変化したり、大きな制度改正があった場合などにも、家計収支の見直しが必要になる場合もあるでしょうから、時々の家計収支チェックは欠かすことができません。

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