昨年の家族信託利用者数は、コロナの逆風下でも増加傾向を維持
みなさん、こんにちは!「家族信託」や「遺言書」、「任意後見」など生前の相続対策に特化した取組を行うディアパートナー行政書士事務所です。
今回は、昨年2021年の家族信託利用者数について考えていきます。(当事務所と業務提携しているトリニティグループのコラムを参考)
トリニティ・テクノロジー株式会社が運営する「スマート家族信託」⇒ https://sma-shin.com/
今、認知症患者の方の財産管理の問題が社会問題化しています。主に高齢者の資産凍結防止対策として利用される家族信託の利用者数は、昨年2021年、コロナの逆風下にもかかわらず力強く増加傾向を維持しました。
家族信託は私人間の契約行為によって成立するため、その数を直接正確に把握する術はありませんが、不動産を信託した際に必須となる不動産登記の件数および「家族信託」というキーワードのウェブ上における検索件数から、2021年の家族信託の利用状況の動向をトリニティグループが調査・分析しました。
不動産を信託した場合には、当該不動産についてその旨の登記手続きを経由する必要があります。信託の登記は、商事信託等家族信託以外の信託においても発生するため、当該件数がそのまま家族信託の件数と連動するものではありませんが、後述する家族信託の認知拡大(ウェブ上の検索件数の増加)の時期と信託登記件数の増加時期が連動していることから、信託登記件数の増加が家族信託利用者の増加と一定の相関関係にあると考えることには合理性があります。
昨年対比143%のエリアも。2021年の信託登記件数の動向
土地に関する信託登記の件数は、2017年には7054件でしたが、毎年、前年対比110~120%の伸び率で件数が増加し、2021年の件数は、約13000件に上ります(ただし、2021年11月および12月の件数は現時点において統計が未発表であるため、予想値(2020年同月の数値に1.1を乗じた数値)を算出の上で計算した)。
2021年の登記件数の前年対比をエリア別に見ると、埼玉エリアで143%、千葉エリアで124%、大阪エリア121%、横浜エリアで114%と、首都圏、大阪での伸び率が大きくなっています。全国の件数合計における前年対比は110%と、全国的にも件数は伸びています。
一方、不動産登記全体の件数を見ると、コロナ禍の影響で、2018年に約1250万件だったものが、2020年、2021年においては約1050万件にとどまり、比率にして16%の減少となっています。
家族信託も、主に70歳を超える高齢者が当事者となるため、コロナ禍による外出自粛や高齢者施設の出入り制限の影響でその組成件数は相当抑制されたと考えられます。 このような背景においても昨年対比10%の増加を見せていることから、コロナ禍の影響が去った後は、増加傾向により拍車がかかることが見込まれます。
インターネット検索回数から見る家族信託の認知度
家族信託というキーワードのインターネットでの検索回数のデータを確認すると、その認知度が年々増加していることが分かります。
はじめて家族信託というキーワードが検索されたのは、信託法が改正された2006年。 この年は、信託法が改正されたことにより一般家庭での財産管理についての信託活用の道が開かれ、一部の専門家の中でそれまで無かった「家族信託」という活用方法が見出された年にあたります。 そこから8年ほど、ほとんど日の目をみることが無かった家族信託だが、2014年ごろから徐々にその認知度を増しはじめ、2017年にNHKなどのマスメディアに取り上げられたことで、一気に認知度が上昇しました。
2020年には、コロナ禍の影響によってか、検索回数の低下が見られましたが、翌2021年には元の水準に戻しています。
家族信託の普及の要因
家族信託の普及の要因として、認知症患者数の増加、マスメディアによる認知度の向上、金融機関の対応の広がりが考えられます。
厚生労働省の推計によれば、2012年に450万人だった全国の認知症患者数は、2025年には700万人を突破し、高齢者の5人に1人が認知症の時代に突入するとされています。
家族信託は、主に高齢者の認知症による財産凍結の対策として利用されるため、高齢者や認知症患者の数が増加すればそれに伴って家族信託の利用者数も増加するものと考えられます。
マスメディアによる認知度の向上
ここ数年、家族信託を特集した雑誌やテレビ番組などがかなり頻繁にみられるようになりました。
【テレビ番組放映例】
① 2017年11月20日
あさイチ(NHK)にて「どうする?実家の始末」として家族信託が特集
② 2018年1月18日
とくダネ!(フジテレビ)にて、「親の財産“凍結”からどう守る?」として家族信託が特集
③ 2019年4月16日
クローズアップ現代+(NHK)にて「親の“おカネ”が使えない!?」として家族信託が特集
テレビで取り上げられた時期と、先に提示したインターネットでの検索回数が跳ね上がった時期は重複しており、テレビで家族信託が初めて特集された2017年以降、一段と認知を獲得していることがわかります。
金融機関の対応の広がり
家族信託を利用するためには、信託財産を管理するための専用口座の開設が必要となります。
専用口座に対応している金融機関は2016年時点においては三井住友信託銀行などごく一部の金融機関に限られていましたが、家族信託の利用者数増加を受けて、家族信託用の口座開設に対応する金融機関も増加してきました。
【家族信託の口座開設に対応している銀行例】
2016年 三井住友信託銀行が信託口口座開設に対応開始
2016年 広島銀行が民事信託に対応したローン商品の取り扱い開始
2018年 四国銀行が民事信託コンサルティング業務の取り扱い開始
2018年 オリックス銀行が、家族信託の契約支援業務開始
2019年 京葉銀行が民事信託の手続き支援サービスを開始
2019年 千葉興銀が民事信託関連商品の取次開始
2019年 十六銀行が民事信託に対応した口座の開設に取り組むことを発表
2020年 長野銀行で家族信託の取り扱い開始
2020年 第四銀行が家族信託の利用支援業務開始
【家族信託の口座開設に対応している証券会社例】
2017年 野村証券が家族信託による証券口座開設に対応
2019年 大和証券が民事信託(家族信託)サポートを開始
2020年 楽天証券が、IFAを通じた家族信託サービスを開始
2021年 東海東京フィナンシャル・ホールディングス 民事信託による投資を受け付け開始
2021年 マネックス証券 認知症や相続に備える株式管理サービス「たくす株」を開始
上記の通り、家族信託の利用に対応するサービスを提供する金融機関は年々加速度的に増加しています。 このことも、家族信託の普及が進む一因となっていると考えられます。
成年後見制度の利用件数との比較
最後に、家族信託と同様、認知症による財産凍結問題に対応する制度である成年後見制度の利用件数の推移から家族信託の普及について考察してみます。
政府は、認知症を発症し財産の管理に問題が生じた場合には成年後見制度を利用することを推奨しているが、成年後見制度の利用には後見人報酬など一定の費用を要しますし、自由な財産管理ができなくなるといった問題点が存在することから、その普及は進んでいないと考えられます。
その証拠に成年後見制度の利用件数は、2017年に34,249件であったものが、2020年においても35,959件と、その増加率は5%にも満たない状況です。
家族信託が10%~20%の水準で増加しているのに対して、成年後見制度は伸び悩んでいることが分かります。
そして、今後も高齢者の増加に伴う財産管理対策の手段としては、成年後見制度よりも家族信託が選択されていくものと推測ができます。
なお政府は、成年後見制度の利用者数の伸び悩みを問題視しており、後見人に対して支払われる報酬体系の見直しや、柔軟な制度運用を可能にするなど、その制度の抜本的な見直しが検討されています。
まとめ
この記事でご紹介した通り、認知症対策の切り札となされる「家族信託」は、認知度の上昇とともに、ますまるその利用が活発になっていくことが見込めれます。
認知症になってしまった後にできることは非常に限られています。(法定後見制度の利用ぐらいしか選択の余地がありません!)
今後も利用者が伸びることが予測される「家族信託」ですが、全国的にみても実績のある専門家が少ない状況が続いています。こうした家族信託を活用した相続対策の組成は、実績豊富な専門家のネットワークが必要不可欠です。
ディアパートナー行政書士事務所では、知識・実績とも豊富な、国内有数の家族信託実績を有する企業(トリニティグループ/トリニティ・テクノロジー株式会社)と業務提携しながら作業を進めますので、安全安心な全国トップ水準のサービスをご提供することが可能です。また、アフターサポートも業務提携と連携し、スマートフォンに連動した「スマート家族信託」を今年から本格稼働させるなど、万全な体制で対応することが可能です。
とくに、受託者候補(子供など)が首都圏に在住している場合は、長野県(当事務所)と首都圏(トリニティG)の連携が極めて有効になります。お問い合わせや初回相談は無料ですのでお気軽にお問い合わせ下さい。