日本の起業の連鎖が始まる予感?

 こんにちは、ディアパートナー行政書士・FP事務所 代表の瀧澤です。

 今回は、9月8日付日本経済新聞電子版の有料会員掲載記事から日本の起業のこれからについて投稿します。

停滞感の日本

 デジタル化や産業構造の転換のスピードが遅く、停滞感を否めない日本ですが、課題は山積するものの、日経記者は変化の兆しも感じてきたということです。

 それは、さまざまな経歴の起業家が増え、人材の流動化を促しているのではないか、ということだそうです。

 「実際、どうなのだろう。」ということで、日経記者が調べています。主要ベンチャーキャピタルのひとつ、ANRIの協力で、同社が投資するスタートアップ企業のうち集計が可能な起業家143人について、その歩みを調べたということです。

 最多は、急成長したネット企業などメガベンチャーを含む「大企業出身」で全体の36%をしめていました。「大企業とスタートアップ両方を経験」を足すと、過半数が大企業で働いたことのある人材となっています。伝統的に起業の主役だった「学生・研究者出身」の28%を上回っている状況です。

 かつて、結婚して子供もいるような人が起業に踏み切る例はまれだったが、いまは普通にあるようです。もはや起業は特殊な選択肢ではなく、やりたいことを実現する手段、キャリア設計の一部だとして進路にする人が目立っています。

出典:日本経済新聞電子版

起業に気負いなし、人生の賭けでもない

 記者は、起業者の代表的な声を聞いています。

 流通業者がネットスーパーを始めるのを支援する10X(テンエックス、東京・中央)を興した矢本真丈氏。丸紅を振り出しにNPO、スタートアップ、メルカリを経て2017年に起業しました。「解きたい社会的課題に自分のリソース(能力)を100%投入できる」

 起業したころ、2人目の子供が生まれたということで、家族のために多くの時間を割きたいと仕事は夕方5時までと決めたそうです。それでも十分に成果を出せたということです。「家庭を捨てなくていい働き方だ」。起業の決断は軽くないが、悲壮感漂う決死の覚悟で、というものでもないようです。

 もうひとり、テクノロジーを活用した学習塾を運営するコノセル(東京・新宿)を20年に創業した田辺理氏は言っています。「自分が起業するとは考えもしなかったが、多くの起業家を見て身近に感じ、特別なことではないと思った」とのコメントです。

 コノセルの田辺氏は政投銀やBCGを経て起業した日本政策投資銀行などで働いてきたが「いまもほぼ同じスキルを使う」ということです。起業した途端に仕事の本質が一変するわけではないということのようです。

 もちろん起業で成功する保証はどこにもありません。しかし、いちかばちかの賭けでもないようです。

 10Xの矢本氏は起業について「崖から飛び降りる感覚ではなく、着実に階段を上っていくような意思決定をするのが大事」と訴えています。それには「小さく試して実感を得る」のが有効だと語っています。

 製品を試作して売ったり、スタートアップを手伝ったり。そういう経験がもやもやを晴らし、起業への安心感に結びつくということです。確かに、ネットショップを手軽につくれるサービスなど、起業プランを試す道具がいまは豊富にある状況です。

人材確保のハードルは低下傾向

 仲間を募りやすい状況も起業家には追い風になっているようです。

 スタートアップに人材を紹介するフォースタートアップスによれば、紹介手数料(年収の4~5割程度)の平均単価は約280万円と、この3年で17%増えた。年収アップを反映するデータだと考えられます。

 ベンチャー投資が拡大し、スタートアップが人件費に回せるお金が増えている状況です。いい人材を確保するための経済的なハードルは低下する傾向にあるようです。

 また、パーソルイノベーションが手がける副業マッチングサービス「ロッツフル」では、21年上期に大企業で働きながらスタートアップで副業を始める人が20年下期の1.5倍に伸びたそうです。

 「スキルを高め、視野を広げたい。」・・・そう考える人が大企業内で増加しているのが背景だということです。スタートアップにとっては即戦力をつかむ機会となっているようです。

 ANRIの起業家分析に戻れば、電機や自動車、医薬などメーカー出身者の多さも目を引くようです。代表パートナーの佐俣アンリ氏が語っています。「いろいろな産業から、自分の業界の生産性を上げたいとスタートアップという手法を選ぶ人が次々に出てくるのではないか」

 就職人気が高く、強い求心力を見せてきた総合商社を飛び出し起業する人も珍しくないということです。「若いうちに権限と裁量を得て、小規模でも手触り感のある仕事をしたいという人が増えている」。リクルートの松阪真吾氏はこうみています。

 起業やスタートアップの人口が膨らむ可能性は大いにあります。こうした潮流が本物になれば、日本の産業界を活気づけるきっかけにもなりえます。

出典:日本経済新聞電子版

「ならば自分も」起業の環境、進む整備

 ネットでコンサルタントを仲介するビザスクは8月、同業の米社を112億円ほどで買収すると発表しました。年間売上高が16億円の会社にとって思い切った動きに思えるが、「似たもの同士で、仲良くやれそうだ」とビザスク創業者、端羽英子氏に気負いはないということです。

 端羽氏は外資系金融などに勤めた後、起業したのは2012年のことです。シングルマザーでしたが、「仮に失敗したら、また就職活動をすればいい」。日本で事業を磨くうち海外のライバル企業からも一目置かれる存在となり、この分野で世界一をねらうチャンスが巡ってきました。

 スケールの大きい挑戦が乏しい、研究開発型のディープテック領域が手薄、女性が少ない――。日本の起業には弱点がたくさんありますが、高い山をめざすなら、起業の裾野を一段と広げる必要があるようです。

 起業をテコに人材が動き、能力発揮の場が増えているのは間違いないようです。まだ局地的だが、大学に加え、会社でも周囲に起業する人が現れ、「ならば自分も」との気分にさせる環境ができつつあります。

 日経記者は、「起業の連鎖が始まる日は意外に近いのではないか。日本にプラスだ。」と締めくくっています。

まとめ

 起業について述べていましたが、これってまさに「働き方改革」の要素が色濃く出ていますよね。起業、兼業・副業も含めて、本当に多様な働き方ができる時代に突入していきそうです。ただし、それに社会保険制度など世の中の仕組みが追い付いていくような状況を願いたいものです。

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