年金繰り下げ、配偶者の死亡で増額なしも!
みなさん、こんにちは!「家族信託」や「遺言書」など生前の相続対策に特化した取組を行うディアパートナー行政書士事務所です。
令和5年8月12日付日本経済新聞電子版に「年金繰り下げ、条件を確認 配偶者死亡で増額なし多く」という記事が掲載されていました。私自身も妻が死亡し、現在、遺族厚生年金の受給しているため、年金の繰り下げができないことは承知していましたが、現実にはもっと厳しいケースがあることをこの記事で知りました。どのようなケースなのでしょうか。
「繰り下げの条件を満たしているか」を年金事務所などで相談
「自分は年金の繰り下げ増額ができないなんて」。今年初めに社会保険労務士に年金受給について相談した都内の男性(63)は落胆していました。落胆の原因は厚生年金加入期間のあった妻を2年前に亡くし、遺族厚生年金の受給権が発生していたことでした。
原則は65歳から受給できるのが老齢年金です。「年金繰り下げ」というのは、年金の受給開始を1カ月遅らせるごとに0.7%増額され、増えた額が終身で続きます。年金の受給開始は最大75歳まで遅らせることができ、その場合84%増になります。
遺族年金の受給権発生で繰り下げできず
年金を増額して受給できるのは66歳以降で、繰り下げ待機の期間は1年以上必要です。ところが自分が66歳未満で配偶者が亡くなり遺族年金の受給権が発生した場合は、繰り下げ増額はできないのがルールとなっています。社会保険労務士の内田健治さんは「繰り下げの盲点とも言え、初めて知って怒り出す相談客もいる」と話しています。
では、遺族年金の受給権はどんなときに発生するのでしょうか。
遺族年金には18歳までの子がいる場合の遺族基礎年金と、厚生年金加入期間がある人が亡くなった場合の遺族厚生年金があります。年金受給を控える60代には18歳までの子はいない場合が多いはずですから、通常は遺族厚生年金が問題になります。
まずは年齢要件です。子がいない場合、配偶者の死亡時に妻なら何歳でも受給権が発生(30歳未満で夫が亡くなった場合は5年間で受給権消滅)します。夫なら妻の死亡時に55歳以降であることが必要になります。
また、配偶者の死亡時に自分の年収が850万円未満であることも条件になっています。
つまり夫の場合、自分が55歳以上で65歳未満の間に厚生年金加入期間のある妻が亡くなり、その時の自分の年収が850万円未満であれば繰り下げを行うことはできません。
かりに65歳になって繰り下げ待機をしていた場合でも、66歳未満で妻が亡くなれば待機は中止となり、待機中の数カ月分の年金を一括受給したうえで、その後も増額なしの年金を受給することになります。
特に不満が多いのは、実際の遺族厚生年金の額が少額だったりゼロだったりしても繰り下げできないケースです。例えばどんな場合があてはまるのでしょうか。
65歳以降の配偶者死亡後の厚生年金は
①配偶者の生前の厚生年金額の4分の3
②配偶者と自分の厚生年金額の半分ずつの合計
③自分の厚生年金額
の最大額に自動的に決定されます。
自分の厚生年金をまず受給し、最大額との差額があれば差額が遺族厚生年金になります。
夫の厚生年金が年120万円、妻が年30万円なら妻の死後、残された夫の厚生年金は、①~③の計算式で最大となる③の120万円が適用されます。夫の厚生年金を優先受給し、差額はないので妻からの遺族厚生年金はゼロになります。
しかし、遺族厚生年金の受給権自体は発生しているため、繰り下げはできないことになります。社会保険労務士などの専門家の間では「遺族年金か繰り下げかを選択できるようにするなど法改正を検討すべきではないか」という見方は多いようです。
ほかにも配偶者の死は、年金の繰り下げに様々な影響を与えます。
自分が66歳以上で繰り下げ待機中に配偶者が亡くなった場合は、それ以降繰り下げ待機はできなくなり年金受給が開始されます。受給方法は「待機期間に応じて増額された年金をそれ以降受け取る」か「増額なしの65歳以降の年金額を一括受給し、その後も増額なしの年金額を受け取る」かの選択となります。
繰り下げ増額受給後も注意
それでは、配偶者の繰り下げ待機中に配偶者が亡くなった場合はどうなるのでしょうか。
こうした場合は、配偶者に65歳以降支給されるはずだった年金が待機期間分、増額なしで、未支給年金として遺族に支給されることになります。
家計に大きな影響を与えかねないのが、配偶者が繰り下げ増額した年金を受給し始めた後に亡くなった場合です。
例えば配偶者である夫が65歳時点で年120万円だった老齢厚生年金を10年繰り下げ、75歳以降に84%増の220万8000円を受給していたとしましょう。
夫死亡後の厚生年金は増額後の金額ではなく、65歳時点の120万円を基に計算されます。
妻の厚生年金が30万円なら①~③の3つの計算式のうち、夫の厚生年金の4分の3である①が最大であるため、妻の厚生年金は90万円となります。
夫の生存時に夫220万8000円、妻は30万円で、夫婦合わせて合計250万8000円だった厚生年金が約6割減になります。さらに夫の死亡により、夫の基礎年金も無くなります。
繰り下げ増額した配偶者が年金の受給開始後に死亡すると、待機期間分の未支給年金を遺族は受給できないことも知っておきたいところです。
専門家は「夫の生前より減額率がかなり大きくなることもあり、それに備えるには、妻が自分の基礎年金を繰り下げ増額しておくことも有効」と指摘しています。
私の場合は?
私の場合ですが、私(夫)が55歳の時に、厚生年金に加入していた妻がなくなりました。55歳当時の私の年収は850万円未満だったため、自分に遺族厚生年金の受給権が発生しました。
この遺族厚生年金は、60歳まで支給停止となっていましたので、遺族厚生年金の実際の受給は満60歳を過ぎてから始まりました。
そして私の場合、特別支給の厚生年金の受給が64歳から始まりますので、遺族厚生年金の受給はそこで終了することになります。(現在62歳でありますので、現在は遺贈厚生年金を受給中です。)
したがって、遺贈厚生年金の受給は60~63歳の4年間となります。
自分の場合は「男性の平均寿命まで生存」と仮定すると、遺族厚生年金を受給した方が「繰り越し」するよりも、生涯の年金受給額は多いと考えられますので、深刻な状況には至りませんでした。
ただ、亡妻の基礎年金(国民年金)は、200万円以上の金額を保険料として納めていたにもかかわらず、一時支給金額は12万円でしたので、モトはとれていません。(年金の保険料ですので、モトがとれているか、いないかという考え方自体が適当ではない気もしますね。)
それから、「公的年金の繰り下げ」には「基礎年金」と「厚生年金」をそれぞれ別に選択できることから、2つの年金を使い分けるアイデアがよく紹介されていますよね。
それから類推すると「遺族厚生年金」の受給権を得た場合に「基礎年金」は繰下げできるのではないかと考えますが、それはできません。
「遺族厚生年金」の受給権を得た場合(年金受給の年齢層ではこのケースがほとんどです!)には、基礎年金、厚生年金ともに65歳からの受給となります。
私もこれを知った時、若干ながら落胆したのを覚えています。「配偶者の死亡」というのは、こういったリスクもあることを知っておいた方が良いかもしれませんね。
まとめ
公的年金は「長生きリスク」に備えた保険ですからこうしたケースが生じるのは、しょうがない部分もあるのですが、損得勘定で考えれば割り切れない思いもします。
いちばん望ましいのは、遺族年金などとは無縁で夫婦ともに健康で長生きすることなのでしょう。
しかし「死の発生」は、年齢順に発生するというわけでもなく、それがいつ訪れるのかも分かりません。せめて、自分の人生に後悔しないような生き方(余生)をしていきたいものです。
「老後の幸せな生き方」と「自分の資産の使い方」との関係を考察したブログが以下にありますので、ご参照ください。
それでも生前の相続対策は必要!
人がいつ死ぬかはわからないものですし、その順番も決まっていませんが、その時はいずれ必ずやってきます。
その時のためには、やはり生前の相続対策は必須となります。少なくとも遺言書を残すということは、誰にとっても必要なことではないでしょうか。
ディアパートナー行政書士事務所では、家族信託に限らず、遺言書作成や任意後見契約など生前の相続対策のご相談を承っておりますので、相続対策全般についてお気軽にご相談ください。
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