年金改正で、60代前半減りにくく後半は毎年増額に!
みなさん、こんにちは!「家族信託」や「遺言書」など生前の相続対策に特化した取組を行うディアパートナー行政書士事務所です。
2022年5月の日本経済新聞「人生100年の羅針盤」に今回実施される年金改正の話が掲載されていましたので、それに関して投稿していきます。
今回の年金改正は?
「人生100年時代」といわれる現在、年金を受給できる年齢になっても働き続けることが徐々に普通のことになってきている状況にあります。「老後資金に2000万円が必要」として働かざるを得ないという人も多いのかもしれません。
在職定時改定とは?
今回の年金改正のなかにも、こうしたシニア就労を促進・支援する内容が盛り込まれています。在職定時改定の新設と在職老齢年金の改正がそれにあたります。60代以上でも、いきいきと働き続けるために、改正された新しい制度の知識も頭に入れておきましょう。
「60代以上の人の働くモチベーションの維持・向上のための改正といえる」。年金の専門家でもある社会保険労務士の望月厚子さんがこう話す改正内容が、4月に新設された在職定時改定です。65歳以上70歳未満で厚生年金に加入して働き、年金を受給している人は毎年、年金支給額が改訂されて増えていきます。
厚生年金に加入して働けば働くほど年金が増えるのは当たり前のようにも思いますが、65歳以上で働いた分は改正前には退職時か70歳になったときにまとめて増額されていました。このことは、働いて年金を増やす実感が得にくい面があり、毎年改定する仕組みに改められました。
例えば、月20万円で65~70歳に働いた場合の年金を概算すると、改正前は70歳のときに5年分の約6万6千円がまとめて増額されましたが、改正後は毎年約1万3千円ずつ増える形になります。
それでは、年1回というのは、具体的にいつを指すのでしょうか。細かくみると毎年9月1日を基準日とし、前年9月からその年の8月までの1年分を計算し、10月分の年金から増えることになります。
しかし、実際に増えた年金が支給されるのは12月になります。ちなみに在職定時改定については「個人が何か手続きをしないといけない場面は特にない」(望月さん)ということですので、この仕組みとスケジュールさえ覚えておけば大丈夫です。
年金の繰下げ・繰上げとの関係は?
ここで最近、よく話題になっていますが、年金の繰り下げ・繰り上げとの関係はきちんと整理しておきましょう。
65歳以上で厚生年金に加入して働いていても「繰り下げて、まだ年金を受給していないなら在職定時改定は関係ない。65歳未満で繰り上げ受給している人も対象ではない」(社会保険労務士の上野香織さん)といいます。
在職老齢年金の見直しは?
60代後半向けに在職定時改定が新設された一方、60代前半では在職老齢年金が見直されました。
これは、60歳以上で厚生年金に加入して働きながら年金を受け取る場合などに、年金月額と月収などの合計が一定の基準額を超えると年金が減る仕組みのことです。
具体的には、60代前半は基準額が28万円でしたが、4月から60代後半と同じ47万円となったことで、年金は減りにくくなりました。「28万円はフルタイムで働くとすぐ超えてしまう例が多く、就労意欲をそぐ一因だった」(上野さん)といいます。
在職老齢年金を考えるときに気をつけたいのは、まず厚生年金が対象であり、基礎年金は減らないことを理解することです。基準額を超えるかを考えるときの年金月額も厚生年金だけを考えればいいわけです。厚生年金に「年金版の家族手当」である加給年金が加算されている場合は、加給年金の分は除いて計算することになります。
今回の改正を機に在職老齢年金に関するありがちな誤解も解消しておくのが有益になります。社会保険労務士の望月さんは「在職老齢年金を説明するときはあえて『支給停止とは没収です』と強い言葉を使う」と話しています。
停止という言葉から、働くのをやめれば後で停止された分は戻ってくるなどと考える人が多いといいます。実際は減った分が戻るということはありません。
社会保険労務士の上野さんは「在職老齢年金と繰り下げとの間の誤解も多い」と話しています。年金を繰り下げても、その間に在職老齢年金で年金が減った場合、減った分は繰り下げによる増額対象にはならないのだそうです。
年金制度の詳細をよく理解し、60代以降の働き方のプランを組み立てていきたいものです。
支給停止26万人減 しかし、対象者は限定的
60代前半の在職老齢年金の改正で、厚生労働省の推計では2022年度末の支給停止対象者は、改正前の約37万人から約11万人に減るとみています。全国で約26万人が恩恵を得るのですから一見インパクトは大きいように見えます。しかし、年代別でみると、実は対象者がかなり限定されていることがわかります。
今回の在職老齢年金の改正で恩恵を受けるのは、「特別支給の老齢厚生年金」を受給する男性は1957年4月2日~61年4月1日生まれ、女性は57年4月2日~66年4月1日生まれ(公務員は男性と同じ)になります。この対象時期前に生まれた人は改正前に既に65歳になっており、影響は受けません。対象時期よりも後に生まれた人は厚生年金支給開始が65歳となるので対象外になります。
また、時間の経過とともに、今回の在職老齢年金の改正で恩恵を受ける人(時間の経過とともに65歳を迎えるため)は減っていきますから、条件に照らして確認することが重要になります。
まとめ
実は、私は1960年11月生まれ、今回の在職老齢年金の改正で恩恵を受ける年代に含まれています。しかし、会社勤めでなくフリーランスのために関係がありません、残念!
しかし、在職定時改定の方は、「ひとり合同会社」の代表社員として厚生年金に加入していますので、恩恵を受けることになります。
いずれにしても、老後を支える公的年金制度は改正が頻繁に行われますので、改正の都度に内容を確認し、対応が必要な場合は早めに手を打つことが大切になります。
公的年金は老後を支える大事な資金です。iDeCoなど私的年金も含めて、若いうちから老後資金の形成プランをしっかりと組み立てていきたいものです。