年収300万円以下は損益通算なし? 副業節税にフタか?
みなさん、こんにちは!「家族信託」や「遺言書」など生前の相続対策に特化した取組を行うディアパートナー行政書士事務所です。
今回は副業がテーマです。私は、公務員時代の経験から「公務員の副業・兼業支援」にも取り組んでいます。
2022年8月27日付け日本経済新聞電子版に「副業」に関する国税庁の所得税の基本通達の改正案の記事が掲載されていましたので、それに関して投稿していきます。
所得税の基本通達改正案
国税庁は8月、所得税の基本通達の改正案を公表しました。
原則、年間300万円以下の副業などによる収入の所得区分を「雑所得」とするのが主な内容です。副業の所得区分が「雑所得」になれば、経費などを合わせて副業が「赤字」になった場合、本業収入との損益通算ができなくなります。
ネット上では「副業を利用した節税をふさぐ目的ではないか」「実質的な増税だ」などの反発も目立っています。専門家からは「小規模事業の保護の観点が重要だ」という指摘もあります。
通達改正案のパブリックコメントには異例の4000件以上の意見が
国税庁は8月末まで、パブリックコメント(意見公募)を実施しました。
集まった意見を踏まえて国税当局が考え方を示した後、10月をメドに改正する予定だそうです。
過去の通達改正では集まった意見は多くても100件程度でしたが、今回は8月26日までに4000件以上の意見が寄せられるなど、異例の関心の高さとなっています。パブリックコメントの大半が改正反対の趣旨の内容といいます。
税法上、所得は給与所得や事業所得、雑所得など10種類に区分されています。いずれも税率は同じですが、各所得区分により黒字と赤字を相殺する損益通算の方法などが違ってきます。従来は副業収入がどの所得区分にあたるかの基準を示す通達はありませんでした。
これまでは副業収入を「事業所得」として申告する人も一定数いたとみられています。今回の改正案では「収入金額が300万円を超えない場合には、特に反証(納税者側の証明など)のない限り、雑所得と取り扱って差し支えない」としています。
副業収入が事業所得でなく雑所得となると、所得間での損益通算ができなくなるなど納税者側に不利になることがあります。
事例1
例えば、サラリーマンが動画配信の副業で100万円の収入を得る一方、パソコンや通信費などの経費が120万円かかり、20万円の赤字になったとします。事業所得であれば本業の給与所得から副業の赤字20万円を引いて(損益通算)税負担を軽減できることになります。
副業が黒字の場合も、事業所得なら、副業収入の課税対象分から最大で65万円を差し引ける青色申告特別控除などの制度もあります。
ところが副業収入が雑所得となることで、こうした損益通算や特別控除ができなくなります。国税当局の関係者は「節税策を防ぐ意図がないとは言わない」としています。
ただ、これら通達は国税庁の内規で法律ではありません。不服とした納税者が訴訟を起こした場合、副業収入の実態を裁判所が総合的に判断することになると思われます。
また今回の通達改正案は300万円超の収入については所得区分を示しておらず、今までと同様に総合判断となるもようです。
国税OBの坂本新税理士は今回の改正案の内容について「基準が明確になることは納税者側にもメリットだ」とみています。
一方、税務訴訟に詳しい栗原宏幸弁護士は「今回の改正案は副業節税の抑止に重きを置きすぎている。正当な小規模事業の保護のため、どのような場合なら事業所得と認められるかなども丁寧に示すべきだ」という指摘をしています。
まとめ
現在の「副業・兼業意欲の高まり」が今回の改正案につながっているのでしょう。この「副業・兼業」は、「働き方改革」の進展も含めて、今後もいろいろな動きが出てくるのでしょう。
しかしながら、これから多くの人々が「副業・兼業」という視点をもって、弾力的に対応していかないと刻々と変化する時代に取り残される可能性も高いのではないでしょうか。これからは変化にとんだ時代になりそうです!