定年退職(シニア)起業の3つの留意点とは?
こんにちは、ディアパートナー行政書士・FP事務所 代表の瀧澤です。
定年退職起業、シニア起業にあたって気を付けるべきこと3つを経済コラムニストの大江英樹さんが、8月21日付け日本経済新聞「マネーのまなび」に掲載しています。定年退職(シニア)起業をするにあたっての3つの留意点とはどんなことでしょうか。
「人生100年時代」というのが時代を覆いつくすようなキーワードになっている現在、60歳の定年で仕事を一切やめるという人は、少なくなりつつあります。多くの企業では65歳までの再雇用、あるいは定年延長が定着し、2021年4月からは70歳までの就労機会の確保が努力義務化されたことで、70歳まで会社に残って働くという人も増えていくと考えられます。
一方で、定年を機に独立して自営業やフリーランスになる人も増えてきています。
中小企業庁が発行している2020年版「中小企業白書」によりますと、フリーランス起業家の年齢に注目すると、男性の場合は50歳~59歳が30.8%、60歳以上が16.4%となっており、50歳以上として合わせると5割近くを占めました。
長く働くことは老後を支える収入面では重要なことですが、シニアの起業は必ずしもうまくいくわけではないということです。大江英樹さんの経験から、シニア起業がうまくいかない人は次の3つの特徴があるとしています。
見栄えにお金をかけ過ぎる
会社勤めが終了し、定年後に起業する場合にありがちなのが、うれしさのあまり見栄えにお金をかけ過ぎるということを指摘しています。
具体的には、都心のオシャレな場所にオフィスを借りる、会社や事務所のロゴを高額なデザイン料を支払って専門家に頼む、そして名刺に凝るといった事柄を挙げています。
このような価値を生み出さないものにはお金をかけるべきではないとしています。事務所や名刺は何らキャッシュ生み出しません。
注力してやるべきことは、これから自分が提供しようとしているサービスや商品の質を高めることとしています。そのためであれば、お金をかけても構いません。何らかのリターンを見込めるものであれば、それは投資そのものに当たるので、お金はむしろかけるべきだとしています。
これは私にとっても、なかなか耳の痛い指摘です。次に挙げられている「資格」と「投資」の違いを見極めるのはなかなか難しいところです。しかし、見栄えに注力しないことは、老後資金の保全という観点においても、定年退職後の起業におけるキモかもしれません。
資格を取りたがる
大江さんは、これもありがちなこととして「まず資格を取ろう」とばかりにファイナンシャルプランナーや社会保険労務士といった資格を取ろうとする人が多いと指摘しています。
しかしながら、資格取得以上に大事なことは「自分がどういうビジネスをやりたいか」ということです。そのために必要なスキルを身につけるための
勉強は必要ですが、それとビジネスの計画とは別物であると論じています。
資格取得以前に、自分のビジネスプランを考えることの方がはるかに重要なことであるとしています。
自分が定年退職後にどういったビジネスをしていきたいのか、これについて調査したり、熟考するにはある程度時間を要しますし、その上で、定年退職前から入念な準備(資格が必要なビジネスであれば資格取得、スキルが必要であれば予行演習など)が必要になると思います。
私も実際に、定年退職起業してみて、準備にはかなりの時間が必要だと実感しました。「今後のビジネスプラン」がある程度固まってから3年くらいの準備期間があればと思いました。もっとも、この「今後のビジネスプラン」を固めるにも一定の時間がかかりますので、準備期間は十分にあった方が綿密な行動を計画することができます。
ビジネス交流会に出たがる
実はこれもありがちな勘違いと大江さんは指摘しています。起業したばかりのシニアがポケットいっぱい名刺を入れて「ビジネス交流会」のような場に出掛けていくパターンを指しているようです。
しかし、信用されるためには”ギブアンドテイク”ではなく、”ギブファースト”の考え方が大事だと大江さんは説いています。
なぜならば、あなたにはどんなことができて、どんな能力があるかを人に知らしめるためには、その人のために何かをやってあげなければいけないからだそうです。むしろそういう場(ビジネス交流会のような場)ではなく、普段のいろいろな人との付き合いのなかから、あなたに対する信用というものは作られていくということです。
なかなか難しいところですが、私が考えるには、自己紹介・自己PRの場面は必要になってくるとは思いますが、そういったシーンでも信用性が伴っていなければ実効性はないということをおっしゃりたいのでしょう。
自己PRの時間をいただけたとしても、いかに短い時間でアナタの強みやサービス内容を的確に相手に伝えることができるかが重要になってきます。
私が参加させてしているビジネスオンラインサロンの中で、先駆者の方が、2分間で自己PRをする練習(予行演習)を100回以上行ったということです。そして、うまく自己紹介ができるようになってきたころに、ビジネス面でもうまく展開し始めたということです。
まとめ
このように定年退職起業(シニア起業)にはいくつかの落とし穴がなるようです。大江英樹さん自身もシニア起業を体験し、失敗して気づいたものもあるそうですが、気をつけるべきことは、「焦らないこと」と「舞い上がらないこと」だと指摘されています。
そして何よりも大事なことはまず、「自分で何をやりたいか」ということを固めることだと論じています。「自分で何をやりたいか」をきちんと考え抜いてやることでおのずと先は開けていくのだろうと締めくくっています。
再来月の10月には、長野県松本市で大江英樹さんが講師となるセミナーが開催予定で、すでに申込みしています。今年に入ってからも、長野市で大江さんの講演を聞きましたが、定年起業の先輩として、いつも示唆に富んだお話を聞かせていただいています。
私自身にも、決して「焦らないこと」と決して「あきらめないこと」を心に留めて、今後も活動していきたいと考えています。