増加する認知症高齢者 支援と備えのポイントは?
みなさん、こんにちは!「家族信託」に特化した取組を行うディアパートナー行政書士事務所です。
今回は、日本FP協会「FPいまどきウォッチング」に増加する認知症高齢者への支援方策などの記事が掲載されていましたので、それに関して投稿していきます。
内閣府の「平成29年版高齢社会白書」によると、65歳以上の認知症高齢者数は、2012年では462万人と約7人に1人(15%)でしたが、2025年には約5人に1人(20%)になるという推計もあります。今回は、認知症にどう備えるか、支援方策などを考察していきましょう。
認知症の初期対応
認知症とは、脳の病気などの原因により記憶力や認識力、判断力に障害が起こり、社会生活に支障をきたす状態のことをいいます。中でも3大認知症として、①アルツハイマー型認知症、②血管性認知症、③レビー小体型認知症が有名です。
軽度認知障害の場合は、早期発見、早期対応で重症化を遅らせる方法があり、高齢者および判断能力が不十分な人を対象に各種制度や公的機関の相談窓口もあります。活用できる主な制度を確認してみましょう。
(1)地域包括支援センター
地域包括支援センターとは、高齢者が要介護になっても可能な限り住み慣れた地域で暮らし続けることができるように、地域の包括的な支援・サービスを提供するために市町村(特別区を含む)が設置主体となっている施設です。「介護予防ケアマネジメント業務」「総合相談支援業務」「包括的・継続的ケアマネジメント支援業務」「権利擁護業務」の4つの業務を行っています。
保健師(看護師)・社会福祉士・主任ケアマネジャーなどが、それぞれの専門性を活かし、連携しながら次のような対応や支援を行っています。
・高齢者の総合相談窓口として、様々な制度や社会資源の情報提供
・高齢者およびその家族などからの在宅生活に関する相談の受付や制度横断的な支援
・地域の高齢者の状態を把握、介護予防の推進
・地域で活動するケアマネジャーに対する助言や充実したサービスを提供するための支援
(2)日常生活自立支援事業
日常生活自立支援事業の実施主体は都道府県・指定都市社会福祉協議会です。対象者は、判断能力が不十分であるが、本事業の契約内容について判断しうる能力を有していると認められる方です。
支援の内容は福祉サービスの利用援助、日常生活上の消費契約および住民票の届け出等の手続きに関する援助、日常的金銭管理、定期的な訪問による生活変化の察知などです。
手続きと利用の流れは次のようになっています。
①利用希望者は、実施主体に申請
②実施主体は生活状況や援助内容を確認し、「支援計画」を策定し、契約を締結
③定期的な支援計画の見直し
なお、相談や支援計画の作成にかかる費用は無料ですが、実際のサービスを利用する際は、実施主体が定める利用料を支払う必要があります(訪問1回当たり平均1,200円)。
(3)認知症初期集中支援チーム
認知症初期集中支援チームとは、医療・介護の複数の専門職が家族の訴えなどにより、認知症が疑われる人や認知症の人およびその家族を訪問し、アセスメント、家族支援などの初期の支援を包括的・集中的(おおむね6カ月)に行い、自立生活のサポートを行うチームです。対象者は40歳以上で、在宅で生活しており、かつ認知症が疑われる方または認知症の方で、所定の基準に該当する方です。
診断・治療の早期開始により、地域による能動的な認知症対応の契機となることが期待できます。利用を検討する際は、まずは地域包括支援センターへ相談してみましょう。
認知症に早期に気づき対応することは、本人や家族の不安・戸惑いの期間を短くすることにも有効です。その観点から、認知症初期集中支援チームのサービスは自宅で受けられ、住み慣れた環境での自立生活をサポートする効果的な認知症予防策といえます。
特に認知症の初期は単なる老化現象と似ていてまぎらわしく、周囲の人にはわかりにくいものです。もしかして?と気づくことができるのは身近な家族だからこそです。
介護費用負担も確認
2021年9月に厚生労働省が発表した住民基本台帳に基づく100歳以上の高齢者数は8万6,000人超です。
公益財団法人生命保険文化センター「平成30年度生命保険に関する全国実態調査」によると、介護を行った平均期間は54.5カ月で、介護に要した費用(公的介護保険サービスの自己負担費用を含む)は住宅改造や介護用ベッドの購入などの一時費用の合計が平均69万円、月々の費用が平均7.8万円となっています。
しかし、認知症介護の場合は、①介護度が高くなる傾向があるため平均額よりも費用が増える、②民間施設(介護付き有料老人ホームなど)を利用すると月額10万~40万円程度の費用がかかり、公的施設と比べて2倍以上の高額の負担になる可能性もあります。
認知症は誰でもなりうることから、認知症保険への加入も選択肢の1つになるでしょう。
認知症保険で備えるポイント
前述のとおり、長期的に治療や介護が必要になるということは、治療費や介護費用も高額になるということです。現在、介護費用に備える公的保障として、40歳以上の国民が強制加入する国の「介護保険」があります。しかし、介護保険は、要支援・要介護度に応じて保険適用上限額が決まっており、必要な介護すべてに保険が適用されるわけではありません。
また、介護保険は現物支給で、実際にかかった介護費用の1~3割を自己負担する方式のため、適用外の介護サービス等で発生する出費には対応できません。このような事態に備えるためにも、民間の「認知症保険」の検討も必要になるかもしれません。
認知症保険は、被保険者が、保険会社が定める認知症、または認知症による要介護状態になった場合に給付金が受け取れる民間介護保険の一種です。加入する場合は、自分(もしくは家族)に適した保障内容が何かを明確にし、商品をどう選択するかが重要です。
当然ながら、保障が充実するほど保険料負担も重くなるため、家計や貯蓄とのバランスを確認しながら加入を検討することが大切です。
一人ひとりのライフプランに合った対策の検討を
高齢になると基礎体力が衰え病気がちになり、医療費負担が増加し、自立生活が困難になります。ライフプランを考える際には、介護費用も含めて老後の資金準備を行うことが重要です。
そのうえで、認知症になった場合に想定されるリスクも考えながら、一人ひとりのライフプランに適した認知症対策を検討していきましょう。
まとめ
いざ、認知症になって意思能力が失われると、家庭裁判所へ法定後見制度を申し立てる方法しか選択肢がありません。したがって、家族信託や任意後見制度、遺言など事前に対策できる方策の検討も必要になってきます。
事前にできる認知症対策も、いわゆる「保険代わり」です。認知症(遺言は死亡)にならなければ何も発動しないわけですから、用意しておくことはリスク管理の観点でも非常に重要です。ぜひ、専門家にご相談することをおすすめします。
私が代表を務めるディアパートナー行政書士事務所では、家族信託を活用した相続対策(遺言や任意後見などを含む)を専門にサービス提供しております。関心をお持ちの方は、ぜひご相談いただきたいと思います。