地方銀行の振込手数料も10月に下がる!!
ディアパートナー行政書士/FP事務所 代表の瀧澤です。
全国地方銀行協会と第二地方銀行協会に加盟する99行のうち、約半数に当たる49行が振込手数料を引き下げる方向であることが5月8日、共同通信の調査で分かりました。
政府の引き下げ要請を踏まえ、40年以上変わらなかった銀行間の送金料が見直される10月を念頭に実施するということです。残る地方銀行の多くも値下げを含め「検討中」との姿勢を示しており、幅広い地域の利用者に恩恵が広がりそうです。
下げ幅を100円超としたり、コストのかかる銀行窓口での利用を減らすためインターネット取引をより優遇したりする銀行もあり、今回の「手数料見直し」を経営戦略に活用する動きも鮮明になっています。
(※)長野県に本店がある八十二銀行(長野市)、長野銀行(松本市)は今後の振込手数料の扱いについて未公表(R3.5.8時点)
銀行間の資金決済を担う「全国銀行資金決済ネットワーク」(全銀ネット、東京)の銀行間手数料は、3万円未満が117円、3万円以上が162円で長期間据え置かれていました。各銀行はこの費用をベースに個別に振込手数料を設定しています。
現在、三菱UFJ、三井住友、みずほの三大銀行の利用者は、現金自動預払機(ATM)でキャッシュカードを使い他行宛てに振り込む場合、3万円未満で220~330円、3万円以上は440円の手数料が掛かっています。
今年3月に、銀行間の資金決済を担う「全国銀行資金決済ネットワーク」、が銀行間の送金手数料を10月1日から1回当たり一律62円に引き下げると発表していました。この62円というのは現行水準の半分以下となります。
全銀ネットでは、10月に「内国為替制度運営費」という制度を新設し、手数料の水準を引き下げます。振り込む銀行から振り込まれる銀行に支払う費用を1件当たり62円とし、現行の銀行間手数料より55~100円下がる計算になります。
この62円の内訳は以下の通りです。
・振り込まれる銀行側のシステム費や人件費などの「被仕向対応コスト」が50円。ここには全銀システムの提供元であるNTTデータに支払う全銀システム経費も含まれ、この経費は6円程度と報じられています。
・この50円に振り込まれる銀行側の利益として12円が加わって合計で62円になります。
・利益相当分は経済産業省の「企業活動基本調査」に基づいて算定しています。
そして、この「62円」に振り込む銀行の費用や利益を加えた金額が、消費者が支払う振込手数料となるのです。振り込む銀行がいくら上乗せするかは、「各銀行がそれぞれの経営戦略や事業戦略に基づいて決める」としています。
全銀ネットは、新設する「内国為替制度運営費」を5年に1度見直し、「社会通念上合理的な水準であることを維持する」(全銀ネット)としています。5年という数字はITシステムの一般的な減価償却年数に従っています。
この「振込手数料の引下げ」のきっかけになったのは、昨年4月、公正取引委員会が公表した「フィンテックを活用した金融サービスの向上に向けた競争政策上の課題について」という文書です。
その中で、現在の銀行間手数料の水準は「事務コストを大幅に上回っている」との見解を示していました。さらに各銀行が銀行間手数料を設定してから40年以上見直しておらず、銀行間で変更交渉が行われた事実を確認できなかったことも問題視していました。
そして、「各銀行は、銀行間手数料の必要性を含めた検討を行ったうえ、設定水準、設定根拠に関する説明責任を十分果たすことにより、事務コストを大きく上回る銀行間手数料の水準が維持されている現状の是正に向けて取り組むべきである」とも書かれていました。
今回の地方銀行の「振込手数料引下げ」の動きは、地方銀行の生き残りをかけた経営戦略でもあり、下げ幅を100円超としたり、コストのかかる銀行窓口での利用を減らすためインターネット取引をより優遇したりする銀行があるなど、「振込手数料見直し」を経営戦略に活用する動きが鮮明になってきています。
大手銀行は、3月の全銀ネットの発表を受けた時点で「振込手数料引下げ」の方向を示していましたが、地方銀行においても、個別に設定する振込手数料の引き下げに踏み切らざるをえない状況となっていました。
3月の全銀ネットの発表時点の報道では「地方銀行では収益への影響を懸念する声も出ている。」とも報じられていましたが、各地方銀行の生き残りをかけた経営戦略に、「振込手数料見直し」を活用する動きとなってきている状況です。
これには、3月の記者会見で、全国銀行協会の三毛兼承会長(三菱UFJ銀行頭取)は、10月からの銀行間手数料半減を受け、振込手数料の値下げを問われ、「各銀行でビジネスモデルを踏まえた検討が進む」との見通しを示していました。
利用者は恩恵を受けますが、大手銀行から振り込みを受けるケースが多い地方銀行では、銀行間手数料が収益源にもなっていたことから、今回の大幅引き下げで「(収益への)影響は小さくない」(全国地方銀行協会の大矢恭好会長)としていました。(3月時点)
日本も、今回の送金サービスの「原価」にあたる銀行間手数料の見直しを引き金として、銀行間で振込手数料の引き下げを競う「脱・横並び」が進みそうです。
地方銀行でも振込手数料の値下げが進むことで、「手数料の関係」で「遠隔地の決済方法」に悩んでいた事業者の皆さまは、オーソドックスながらも、この「銀行振込」という選択肢、再び脚光を浴びてくるのではないでしょうか。
コストのかかる銀行窓口での利用を減らすためインターネット取引をより優遇する銀行もあるということですので、インターネット取引の振込手数料の方が安くなるという価格設定する銀行もでてくることでしょう。
365日24時間、口座振込で入金ができ、入金を受ける側も365日24時間、入金を確認できる時代なのですから、オーソドックスで安全な「銀行振込」という決済方法の可能性も高まってくるかもしれません。(私にような還暦を過ぎた人間には、「銀行振込」、とてもしっくりと来る「決済方法」です。)