厚生年金は70歳まで増額される?

みなさん、こんにちは!「家族信託」や「遺言書」など生前の相続対策に特化した取組を行うディアパートナー行政書士事務所です。

令和5年4月14日付日本経済新聞電子版「長く働き、 社会保険の恩恵 厚生年金は70歳まで増額に」と題して、「社会保険各種」についての記事が掲載されていました。

近年、定年退職後でも働き続ける人が増えています。「長く働き続けること」と「社会保険の効用」とを併せて考えてみましょう。

シニアで働く人は増えている!

「正社員から嘱託に変わったのに厚生年金の保険料はまだ引かれるのか」「年金をもらい始めたが、保険料を払う必要があるのか」。社会保険労務士の望月厚子さんは60代の人からこんな質問を受ける回数が多くなったそうです。

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近年シニアの就労意欲が強くなった?

こうした質問を受ける回数が増えた背景には、60歳の定年以降も働く人が増えていることが挙げられます。

総務省の「労働力調査」(2022年)によりますと、60歳以上の就業率は60〜64歳で73%、65〜69歳は51%、70〜74歳も34%となっています。

そして、されにシニアの就労意欲も強くなっています。2019年度の内閣府調査では、60歳以上で仕事を持つ男女に何歳まで働きたいかを尋ねたところ「働けるうちはいつまでも」との回答が約4割に達しました。

長く働きつづけるのであれば、厚生年金や健康保険などの社会保険に加入して働くことにメリットがあります。

なぜならば、個人の保険料支払いは発生しますが、厚生年金の受取額が増えたり、少ない負担で医療サービスを受けたりできるからです。

これらの社会保険、制度によっては加入年齢が決まっているものもありますので、上限年齢を知ったうえで働くことにより、老後の資金計画や家計運営に大いに役立ちそうです。

まずは年金制度から

社会保険制度のうち、厚生年金からみていきましょう。

現在は勤め先の規模や働く時間などの条件を満たすことで、70歳になるまで加入することが可能です。

正社員や嘱託社員といった働き方や、現在年金を受給しているかいないにかかわらず、給料の額に応じて厚生年金保険料を払う必要があります。保険料は会社と折半で、自分で負担する分は毎月の給料から天引きされることになります。

その結果、長く厚生年金に加入した分、老齢厚生年金の受取額が増えることになります。

65歳以降に働いた年金はこれまで、退職したり、70歳になったりして被保険者の資格を失った時点で年金の増額を反映する仕組みとなっていましたが、2022年度から65歳以上の働くシニアの年金額を毎年1回見直す「在職定時改定」が導入され、早期に年金額が上乗せされるようになりました。

厚生労働省の説明によれば、月20万円の給料で65歳以降も働くことで、年に1万3000円程度ずつ年金額が増える計算なります。

また、夫が厚生年金の加入者ですと60歳未満の専業主婦などの妻は第3号被保険者となり、原則60歳になるまで保険料負担なしで加入していることになり、原則65歳から老齢基礎年金を受給することができます。妻が年下の場合、保険料の負担なしで国民年金(老齢基礎年金)に保険料を収めているのと同じ効果があります。

ただし、年金制度では夫が65歳になると妻は第3号被保険者ではなくなりますので注意が必要です。

例えば妻が58歳のとき夫が65歳になると妻は第3号被保険者から第1号被保険者に変わり、自分の国民年金保険料を60歳まで納める必要が出てきます。この場合、58~60歳までの国民年金保険料を納めないと妻の老齢基礎年金の受給額は少なくなります。したがって、夫婦で妻が夫より5歳以上若いケースは注意する必要があります。

厚生年金とは別立てとなっている、もう片方の公的年金である国民年金は加入が60歳までとなっています。60歳の時点で保険料の納付月数が満額(40年)に満たなければ、65歳になるまで国民年金に任意加入して保険料を納め、国民年金受給額を満額まで増やすことができます。これは主に自営業者向けの仕組みですが、厚生年金に加入しないで働くシニアが利用することができます。(逆を言えば、厚生年金に加入していると「国民年金への任意加入」することはできません!)

健康保険加入で医療サービスも充実

それでは、公的医療保険である健康保険はどうなるのでしょうか。

健康保険制度は、大企業で働く人は健康保険組合、中小企業は全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入するのが一般的です。健康保険加入の年齢の上限は75歳になるまでとなります。(75歳以上は後期高齢者医療制度へ移行します。)

70歳で厚生年金の資格を失った後も、会社で働き続けることができれば、健康保険の加入は75歳になるまで続けることができます。健康保険の保険料は引き続き個人と会社の折半になります。健康保険に継続して加入することが出来れば、配偶者など被扶養者がいた場合、保険料ゼロで医療サービスを受けることができます。(そうでない場合は、国民健康保険に加入することになります。)

介護保険はどうなる?

公的介護保険制度では65歳になると第2号被保険者から第1号被保険者に切り替わり、介護が必要になれば誰でも制度を利用できるようになります。

一方で健康保険料と合わせて給料から天引きされていた介護保険料は年金からの天引きになり、計算方法が変わります。健康保険と切り離されることで会社の2分の1負担がなくなり、保険料が3〜4倍に跳ね上がることがあるので注意が必要です。

介護保険料は前年の所得が基準になりますので会社を辞めて収入が減れば翌年は保険料が下がることになります。もし収入額が変わらなければ原則保険料は下がらないことになります。

また年下の配偶者がいれば、65歳になると配偶者の保険料も発生してきますので、夫婦合わせた介護保険料の負担増加をあらかじめ見込んでおく必要があります。

雇用保険は?

雇用保険は週労働20時間以上、31日以上の雇用見込みがあれば年齢の上限なく加入することができます。保険料は給料の0.6%(2023年度、一般の事業)と少ない金額となっています。

65歳以上の被保険者は退職前1年間に6カ月以上の被保険者期間があれば、退職するときに「高年齢求職者給付金」を一時金で受け取ることができます。

この高年齢求職者給付金の給付額は退職前賃金日額の50〜80%、給付日数は30日分または50日分となります。以前は一度きりの給付に制限されていましたが、現在では条件を満たせば何度でも受給が可能となっており、老齢厚生年金と一緒に受け取ることができます。

社会保険をうまく活用するには長く働くこと!

人生100年時代を迎え、誰しもが老後の生活を考えていく必要が出てきています。少子高齢化の進展で公的年金の額が長期的には縮小していくことが見込まれますが、逆に平均余命の年々延伸している状況です。

公的年金は「長生きリスク」に備えた保険といえる側面を持っています。シニアの生活設計を考える上では、長く働き続けることで厚生年金に加入することで厚生年金受給額の増額を図りつつ、今までに築き上げた資産を長持ちさせていくという手法も有効かもしれません。

また、健康なうちはできるだけ長く働くことで、その間は勤労収入を得ることもできます。働いている間は、年金受給開始時期を繰り下げることによって受給額をふやすことも可能になってきます。

今回ご紹介した社会保険の恩恵を得るためには、原則的には会社組織などで働くことが条件になってきます。これは、一人法人会社で社会保険(雇用保険・労災保険は除く)に加入しても叶えることができます。

定年後に独立して個人事業者として働く場合であっても、事業が順調であれば法人設立を視野に入れることも大切なことかもしれません。

公的な社会保険以外でも、厚生年金に加入していることで「iDeCo(個人型確定拠出年金)」への加入も65歳を迎えるまでかのうになります。(さらに「70歳を迎えるまで」のiDeCo加入延長は既定路線といわれています。)

シニアなりのライフワークバランスが大切

今回、組織(一人法人会社を含む)に所属して長く働き続けることに注目してきましたが、人生の終盤を迎えているシニアにとっては「バランス」が何よりも大切ではないでしょうか?

健康寿命の最後まで「組織で働き続ける」ことが、自分の人生にとって「本当に幸せ」かどうかという疑問もわいてきます。

本当はやりたい、体験したいことがあったにもかかわらず、健康寿命の最後まで働きつづけたことで、それが叶わなかったとしたら人生の最期に悔やむことになるかもしれません。

老後の幸せな生き方とは?
「人生の最期までにお金を使い切る」という発想

「人生における経験や思い出」と「老後の資金」。どちらも大切な要素ですが、私が考えるには「バランス」が最も大切で重視すべきではないかと考えます。

人それぞれ考え方が違いますので、何を重要視するかによって変わってくるのでしょうが、少なくと「人生における経験や思い出」と「老後の資金」のふたつがあることを考えながら、シニア人生を歩んでいくことが正解かもしれません。

私自身、メインで相続関係の仕事をしていますので、ご高齢の方々と面談する機会も多いのですが、自分の人生、ましてや健康年齢は思ったよりも残り少なくなっていることを痛切に感じます。悔いの残らないようシニア人生を歩みたいものです。

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