公的年金の損得感。長生きリスクに備える!

いよいよ今年もあと1ヵ月となりました。みなさん、こんにちは!「家族信託」や「遺言書」など生前の相続対策に特化した取組を行うディアパートナー行政書士事務所です。

令和4年11月28日付日本経済新聞電子版の「Life is MONEY」の「正しく年金を理解する(4)」(ファイナンシャルプランナー山崎俊輔さん)に、日ごろ当職がよく考えている「公的年金の考え方」が掲載されていましたので、それを参考に投稿します。

いかにも「ごもっとも」という考え方だと思うのですが・・・

タイトルは「年金制度、損得論・破綻論からの卒業を」

このブログは「年金制度の全体像はどういうものなのか」という「適当な年金理解のビジョン」をまとめています。

年金制度については、年金保養所の赤字運営の問題、年金記録不備の問題、運用環境の悪化などが相次いで顕在化し、メディアを旗振り役に「年金不信キャンペーン」が巻き起こりました。

また、年金保険料の負担増や厚生年金の受給開始年齢の65歳への段階的引き上げがあり、団塊世代のリタイア(つまり年金をもらい始める)時期に重なったことも、国民の年金制度に対する不安をかきたてたようです。

社会保障制度の中でも特異な年金制度

このとき、一部の経済学者やメディアは「公的年金の損得論」を持ち出して年金制度を批判しました。その内容は、世代によって損得の格差が拡大していくというものでした。「個人勘定での事前積み立て方式」への変更を主張する意見もありました。

いずれも年金を「社会保障」として考えるとおかしな議論になります。「ほとんどの人が年金をもらえる長寿社会」が実現し、社会保障制度の中でも年金は比較的、負担と給付の収支が計算しやすいことから、損得論が生まれたのでしょう。

しかし公的年金は国が行う社会的な助け合いの仕組みであって、そもそも損得を論じるものではありません。

例えば健康保険の損得論があまり論じられないのは、保険給付は個人差が大きく、また病気にならないと「給付の得」が生じない制度だからです。そう考えて病気になる人、病気になりたいと思う人はほとんどいないことでしょう。一生病気知らずで健康に人生を終えた人が「私は国の健康保険制度のせいで損を被った」と後悔することはまずありえないでしょう。

平均寿命より早く亡くなればどんな世代でも年金制度的に見れば「損」となります。とはいえ、その人の負担してきた分は平均より長生きをした人に回す財源にもなったり、残された配偶者の遺族年金に回ったりしています。年金給付を社会的に平準化し、社会全体での老後の安心に寄与しているわけです。

長生きをしてももらい続けられる定期収入

また、どんな世代でも平均的にみると男性より女性のほうが「得」になります。これは男性より女性の方が平均寿命が長いからです。男性もあと5年長生きすれば社会保障給付の「損」を気にする必要がなくなります。最終的には年金の損得は個人的なものとなります。

こういった損得論ではなく、「働けなくなったときに定期収入が得られる」という安心料、「どんなに長生きをしてももらい続けられる定期収入である」という安心料に目を向けるべきで、これこそが公的年金制度の本質です。

当職も同様の考えですが、更に加えるとすれば、「インフレリスク」にも(ある程度)対応している唯一といってよい制度だと思います。私的年金であればほとんど、加入時に将来の給付額が決定していますが、公的年金はある程度インフレに対応した制度となっています。

ただし、年金額の増加を抑えるために年金の改定率を調整する仕組み(「マクロ経済スライド」といいます)があるので、実状に合った改定とはなりませんが・・・。それでも、インフレに対応している唯一の制度といってもいいと思います。

それに、世代間の損得を声高に訴えるのも適切ではないでしょう。「得をしている」ように見える団塊世代は、現役のころ「自分の親に老後資金の仕送りをしつつ、自分の年金保険料を納めた」という人も多くいました。このような「家庭内扶養」の負担を加味せず、年長世代は「逃げ切り」と断じるのは変だと思います。

今の世代は「自分と妻の両親に月22万円ずつ仕送り」をする代わりに、公的年金制度がその役割を果たしているともいえるからです(ちなみに現役世代の夫婦がふたりで毎月80万円を稼いでも、厚生年金保険料は18.3%で14.64万円、しかも保険料の半分は会社が負担します。双方の親の年金額の負担にもなっていません)。

あなたの両親や祖父母に質問をしてみましょう。ほとんどの人は一生涯の固定収入がいかに助かるか、子や孫に仕送りを求めなくてもやりくりできることがどれだけ安心か、ということに年金の価値を見いだしているはずです。もちろん「もうちょっと多いといいなあ」とは言うでしょうが。

年金破綻論はそろそろ忘れていい

一時期、公的年金制度を説明する場面で、「複数の現役世代が1人のお年寄りを支える”おみこし型”が少子高齢化の進展とともに、現役1人がお年寄り1人を支える”肩車型”の社会になります」という説明がありました。とてもインパクトがある図なので脳裏に焼き付いている人も多いでしょう。

実際、1990年代は厚生労働省(当時は厚生省)も年金改正の必要性を訴えるためにこの図を使っていました。「年金破綻は間違いなし」という説明でもこの図が使われたため話がややこしくなりましたが、現実はどうでしょうか。

今や60代も大半の人が働いています。60代前半に働く男性の割合は82.7%、65~69歳で働いている男性の割合は60.4%にもなるそうです。

この20年で日本人の健康・体力は5歳以上若返っているという調査結果もあります。かつての60代後半の体力テストの数値を今は70代前半でクリアしている、といった具合です。

こうした元気で長寿な未来を考えるとき、今も未来も「65歳」を区切りとして現役世代と高齢者の比率を考えるのはおかしいことに気づきます。肩車論を主張する人は、未来永劫(えいごう)「65歳引退」が変わらないと考えているからです。

2020年の推計値では高齢者比率28.6%、生産年齢人口の割合は59.1%となっており、2.07人で1人の老後を支えています。区切りは65歳です。これが約40年後の2060年も「65歳」を区切りにすると高齢者比率が38.1%、生産年齢人口が51.6%となり、1.35人で1人の老後支えることになり、確かに肩車型に近づいています。

ところが「75歳」を区切りとして高齢者比率を計算してみると、25.7%となります。65~74歳までの人口が12.4%相当あり、15~64歳の生産年齢人口比率51.6%を足すと合計64%。2.34人で1人の老後と支えることを意味し、現在より高齢者の比率は小さくなります。

少子高齢化、長寿化、人口減少だけは「変化」を見ているのに、リタイア年齢だけは「固定」して論じているからこそ生じるミスリードです。

年金破綻論はかなり前から存在

年金破綻論は今も昔もあるようです。今、70歳前後になっている世代の人と話していると「私が若い頃は、年金破綻をセールストークに使うと金融商品がよく売れましたよ。ま、そういう自分が今は年金を頼みに老後を過ごしているんですがね(笑い)」というブラックジョークを聞かされたことがあります。

金融機関が金融商品の売り上げ競争のためのセールストークとして、あるいはメディアが視聴率や部数競争に勝ち抜くためのツールとして「年金破綻論」という不安をあおる情報を利用してきました。

日本の年金積立金は200兆円に達しました。この規模以上の積立金がある国は米国の他になく、経済協力開発機構(OECD)加盟国はもちろん、日本より人口の多い新興国も実現できていない額です。完全賦課方式で年金積立金を持たない先進国も多々あります。

10~15年前に流行した年金破綻論は、今では現実味はありません。しかし、私たちの意識には今も強く刻まれています。それでも、年金制度は維持され、おそらく批判をした人にも愚直に年金給付を一生涯払い続けることになるでしょう(もちろんその人が未納していなければ、ですが)。もうちょっと、年金制度を信じてあげてもらえたらなと思います。

ゆるやかな国への信任を

そうなると、今の公的年金制度に必要なのは国に対する「ゆるやかな信任」なのかもしれません。まあ、破綻はしないだろうし、潤沢な給付をしてくれるわけでもないだろうけど、一生最低限度の食生活や日常生活費くらいは振り込み続けてくれるだろう、という理解です。

昔も、今も、国の年金が老後を左うちわで暮らせるほど潤沢に振り込まれた時代はありません。それでも、多くの人が年金を頼りに老後を暮らし、楽しんでいます。

ゆるく信頼し、納めるべき保険料はしっかり納めてください。納めた人は制度について文句をいってもかまいませんが、全否定はしないでください。なんだかんだいって、あなたの老後を支える中核としてその年金制度が、数十年後に力を発揮することになるのですから。

まとめ

いかがでしたでしょうか?公的年金制度について、普段私が考えていることとまるっきり同じで、深い共感を得ました。

よく、週刊誌などで「年金受給の繰下げ」や「年金の受給を何歳から受けるか(このことが年金繰下げにも影響するわけですが)」といった話題が最近よく取り上げられています。

損益分岐点を示して、その「損得感」が詳細に解説されています。しかし、年金制度、とりわけ公的年金制度は、人々の「長生きリスク」に対応する保険制度ですので、「損得感」を論じるような性質のものではなさそうです。

配偶者などが遺族厚生年金や遺族基礎年金を受給する場合であっても、本人は死亡している訳ですので「損得感」を感じることもありません。

ましてや死亡しても遺族年金支給に結び付かない場合(成人した多くの子世代など)は、年金を頼りに暮らす必要がなくなったわけですので、何ら後悔したり「損得感」を感じることは必要ないのです。年金を頼りに生活していく人は誰もいなくなったわけですから。

年金支給額については不安も

「長生きリスク」に対応した公的年金ですが、もともと公的年金だけで何の不安もなく暮らし続けることというのは少々難しいことでしょう。それこそ、今までの貯えや資産を取り崩しながら、命が尽きるまで生活していくことになるのでしょう。

その準備のためにも、公的年金以外の私的年金、「自分年金づくり」に若いうちから取り組んでいくことが大変重要になってきます。

老後の備えに「自分年金づくり」!

iDeCoやNISAといった国が推奨する制度は、税制優遇などのメリットも大きいわけですので、こうした制度の枠を若いうちから目いっぱい活用した上で、余裕があれば、その他の制度や投資先を利用するという流れになります。

若いうちは収入も少ないわけですので、iDeCoやNISAの活用はまず第一に考えていきましょう。ただし、iDeCoは積立金を途中で引き出せないなどのデメリットもありますから、しっかりとしたビジョンや十分な検討が必要です。

ディアパートナー行政書士事務所では、老後に向けた資産形成のご相談にも応じています。こうしたお悩みは、事業承継や生前贈与、相続対策といったものとも密接に関係しています。生命保険や不動産などの商品を活用した生前対策が有効なケースも多いですので、ぜひ総合的な相談を受けてみてはいかがでしょうか。

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