入院や介護で身元保証人がいない場合は?
みなさん、こんにちは!「家族信託」や「遺言書」など生前の相続対策に特化した取組を行うディアパートナー行政書士事務所です。
久々に終活がテーマです。2022年7月15日付け日本経済新聞電子版「終活」に「身元保証人がいない 入院や介護で関連サービス活用も」という記事が掲載されていましたので、それに関して投稿していきます。
少子高齢化、少産多死化が引き続き進行しています。この流れは当面続いていきます。(人口動態ですので近い将来は予測することが容易です。)
身元保証人を依頼できる家族などがいない高齢者は
皆さんも感じ始めているかもしれませんが、病院に入院するときや介護施設に入るとき身元保証を引き受けてほしいという要望が増えてきています。
身元保証は一般的に家族が引き受けることが多いが、子供がいても海外在住など簡単には頼れない場合もあり、また、子供がいない夫婦や結婚しない人も増えてきています。
そうした要因から、入院の際などの身元保証を誰にも頼めない高齢者が目立ってきています。そして、この流れはどんどん大きくなっていくものと思われます。
9割以上の施設が「身元保証求める」
高齢者の場合は、入院のほか老人ホームなど介護・福祉施設への入居の際に「身元保証人」「身元引受人」といった欄に署名を求められる場合が多くなっています。むしろ「身元保証人」「身元引受人」を求めない施設は極めて少ないのが現状です。
賃貸住宅への入居でも求められるのが一般的ですが、特に医療機関や介護施設で必要とされる場面は多発しています。
総務省関東管区行政評価局が2022年に公表した調査では、回答した約1200カ所の病院と介護施設のうち、なんと9割以上が「入院・入所の希望者に身元保証人等を求めている」としています。
医療・介護の法律実務に詳しいは「病院や施設側には本人の支払い能力のリスクや、入院・入所中に判断能力が衰えたりするリスク、退院・退所の際の対応などに備えたいとの事情がある」と話しています。
さらに、この調査では身元保証人が見つからない場合、病院の6%、介護施設の21%が「入院・入所を断る」と回答しています。
厚生労働省は2018年度に、身元保証人がいないことだけを理由として、病院や介護施設が入院・入所を拒むことがないよう指導を依頼する通知を都道府県に出していますが、未だに身元保証を求める病院や施設は少なくありません。
それでは、身元保証人は具体的にどんな役割を担うのでしょうか?
医療機関や介護施設の場合でみてみましょう。厚労省や一部の自治体のガイドラインによると、まず入院・入所の際は緊急時の連絡先となります。治療方針や介護のケアプランの確認、必要な物品の準備、入院・入所費の支払いのほか、亡くなった際の遺体・遺品引き取りや葬儀の手配などその範囲は非常に幅広くなっています。
この中でとくに見逃せないのは高齢化の進行とともに、一人暮らしの高齢者が増えている点です。2022年版「高齢社会白書」によりますと、一人暮らしの高齢者は2020年時点で約672万人と2000年の約303万人から2倍強に増加をしています。
さらに2040年には約896万人に増える見通しです。一人暮らしでも子供など家族、子供がいなければ、おい、めいといった親族がいる場合は身元保証人を引き受けてもらえる可能性はあります。では頼れる家族(子供など)や親族(おい、めいなど)がいない人はいったいどのようにすればよいのでしょうか。
民間サービス、契約前にしっかり吟味を
頼れる家族や親族がいない場合の選択肢の一つとなるのが民間の身元保証サービスを利用することになります。
弁護士法人が母体の公益社団法人シニア総合サポートセンター(東京・港)は、終身契約で病院、介護施設、賃貸住宅などの身元保証を引き受けています。葬儀や死後事務手続きも代行し、契約時の預託金を含め初期費用として最低約140万円の費用がかかります。別料金で介護施設の見学付き添いや入所時の荷物整理なども支援しています。
民間の身元保証サービスを選ぶ際は費用とサービス内容を吟味することが大切になります。初期費用が安くても高額な寄付を求められる場合をあるといいますので、事前によく確かめることが大事です。
もう一つの選択肢としては住んでいる自治体に相談してみることです。
自治体のなかには、身元保証人がいなくても住民が困らないように独自の取り組みを進める自治体が出てきているようです。民間に比べ安い費用で関連サービスを提供する自治体も全国の中にはあるようです。
例えば東京都の品川区社会福祉協議会が手掛ける「あんしんの3点セット」は契約時に3万円と月2000円の基本料金を払うことで、利用者は区社協を任意後見人として契約するため、判断能力が低下し医療・介護施設を利用する際は身元保証人を新たに探す必要がありません。利用者が元気なうちは職員が月1回自宅を訪問し、安否を確認するそうです。福祉サービスを利用したり、入院手続きをしたりする際は1回1200円の別料金で手伝ってもらうことができます。
静岡県熱海市は2020年に医療機関と介護施設向けにガイドラインを作成しました。ガイドラインでは、身寄りのない人が入院や入居を希望する際は、治療や介護の内容を本人に分かりやすく説明するなどの対応策を例示しています。
費用については預かり金を受領するといった具体的な案を提示しています。本人の死後に葬儀をする人がいない場合は、法律に基づいて市が火葬・埋葬をする仕組みとなっています。
まとめ
少子高齢化・少産多死化の進展とともに、頼れる家族や親族がいない人がますます増えてきます。
長野県でも、NPO法人などが終身契約を結んでサービス提供を行う事例も出てきています。また、制度化はされていないまでも、個々の事例を行政や社会福祉協議会などが中心となって、サポート、コーディネートするケースも出てきています。
成年後見制度(法定後見・任意後見)は、判断能力が失われた場合に発効するわけですが、判断能力があったとしても寝たきりなど身体機能が衰えている場合は何らかの支援が必要でしょう。
また、頼れる家族や親族がいない人の場合は、死後事務委任契約なども必要になってきます。
こうした状況を受けての受け皿は今後、増加していくことでしょうが、サービスをしっかりと見極めることは重要になります。
私は行政書士として成年後見制度に携わる「コスモス成年後見サポートセンター」会員になっておりますので、地域の状況やご要望に応じて積極的に活動していきたいと考えています。
とはいえ、個々のケースで状況は大きく変わりますのでなかなか難しい問題ではありますね。