今年の景気見通し 2022年の日本株回復シナリオ

あけましておめでとうございます!「家族信託」に特化した取組を行うディアパートナー行政書士事務所です。

年初めとして今回は、今年の日本株の見通しについて、日本FP協会会員Webの「エコノミストの視点」から第一生命経済研究所 経済調査部 主任エコノミスト 藤代 宏一さんの記事を参考に考察してみます。(投稿中の専門家という記述は藤代氏を指します)

コロナ禍対策の政策が株価を牽引してきた昨年2021年ですが、海外ではオミクロン株の感染者急増というニュースは伝えられているののの、コロナ全体の脅威が和らぎ、世界的に状況が安定化すると見られる今年、世界の株式市場から取り残された感のある日本株はどうなるのでしょうか?

専門家が「ドットチャート」「逆フィリップスカーブ」「労働市場の需給」の3つの視点から、日本株の行方を予測しています。

2022年は政策主導の株価上昇からの転換期に

2020~2021年の世界的株価上昇は「企業業績のダメージを上回る政策効果」で説明することができるとしています。すなわち、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済活動の落ち込みを主要国の政策当局が金融緩和や財政支出拡大を通じて埋めたことで説明できるでしょう。

代表例として、米国で3度にわたり実施された家計への給付金、2021年9月まで実施されていた失業給付の特例加算措置があります。

また、日本では特別定額給付金として国民1人あたり10万円、予算規模で約13兆円に相当する巨額の財政支出がありました。

その結果、民間の非金融部門に存在するお金の総量であるマネーストックは著しく上昇し、そうしたお金の一部が株式市場に流入しました。この間、世界の主要中央銀行は異例の金融緩和を継続し、投資家のリスクテイクを促しました。

本年2022年は世界的にコロナ感染状況が徐々に収束に向かい、経済活動の正常化が期待されています。投資家は先進国以外でもワクチン接種率が十分に高まると同時に新薬の開発も進み、コロナの脅威が和らぐとの予想に自信を深めているのではないでしょうか。

一方で、政策的なサポートは縮小していく可能性が高く、これは株価に下押し圧力をかけています。金融市場で最も材料視されているのは米国の中央銀行FRB(連邦準備制度理事会)の動向です。

昨年11月中旬時点で、市場参加者の政策金利予想を示すFF(フェデラルファンド)金利先物は2022年中に25bp(ベーシスポイント)の利上げが2回強あることを織り込んだ状態にあります。利上げを予想する投資家はFRBがインフレ退治に動くとの見方を有しているのでしょう。

FRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長は消費者段階のインフレ率が5%超で推移する現在の高インフレは「一時的」との見解を示していますが、2022年になってもインフレが落ち着かず、やがて修正を迫られるというシナリオを描いていると思われます。

今後、利上げの織り込み度合いがさらに強まれば、金利上昇と株価下落の圧力が同時に高まることになります。当然、これは日本株にも大きな影響を与えることになります。

「3つの視点」で世界的な株価の動向を占う

しかしながら、以下の3つの視点に鑑みますと、市場参加者の利上げ織り込み度合いは行き過ぎの可能性が高いと専門家はみています。

1点目はドットチャートとの比較です。

ドットチャートとは18名のFOMC参加者が各々の政策金利見通しを示したもので、その中央値はFRBの中心的見解として取り扱われています。発表は3カ月に一度で、2021年9月に開催された会合において、2022年中に0.5回分の利上げ実施があることが示唆されました。

これは金融市場関係者にタカ派と受け止められたが、ここで注意が必要なのは利上げを支持したタカ派の中にはどんな状況でも利上げを主張する極端な参加者が含まれており、そうした参加者によって「中央値」が引き上げられていることです。

他方、景気安定に対して責任の重い立場であるパウエル議長はハト派寄りの見解を有していると考えられています。これはFRB議長の宿命とも言えますが、議長は早期の金融引き締めによって金融市場の混乱を招くことや、景気回復を頓挫させてしまうことに対する警戒心が強いとみられています。

専門家は、発言力の強さで加重平均したドットチャートがもしあったとすれば、その中央値は2022年中の利上げ見送りを示唆していたのではないか、としてます。

専門家は、実際の利上げ回数は想定以下になる可能性が高いと考えているとのことです。

2点目として「逆フィリップスカーブ」の視点です。

一般的に失業率低下は賃金上昇圧力を通じて物価上昇に繋がります。この関係をグラフにしたものはフィリップスカーブと呼ばれ、本来の形状は失業率低下(横軸が右へシフト)、物価上昇(縦軸が上へシフト)が相互に関連し、傾向線(図中のオレンジ線)は右肩上がりとなります。しかしながら今次局面においてその形状は逆になりそうだということなのです。

というのも、最近の高インフレの背景にあるサプライチェーン問題は、一部が労働者不足に起因しているからです。典型例として米国西海岸の港湾労働者、長距離トラックドライバーの不足に伴う物流の遅延があります。

労働者不足の一因は政府からの手厚い給付にあります。米政府からの給付は消費活動の早期正常化に貢献した反面、労働市場の回復を遅らせるという副作用をもたらしました。そうした下で生産と出荷は停滞し、需給が著しく引き締まった結果、納期は遅れ、財やサービスの価格は大きく上昇しました。

だとすれば今後、失業率の低下に伴ってサプライチェーンが回復することでインフレ圧力は落ち着くと考えられます。人員が充足され、賃上げ競争の鎮静化により、労働コストの増加ペースが鈍化すれば、賃金と物価の相互刺激的な上昇も収まるだろうと専門家はみています。

3点目として、そもそも資源価格高騰、サプライチェーン問題といった供給側要因に起因するインフレを金融政策で対処するのかという視点です。

参考事例としてECB(欧州中央銀行)が2011年に実施した利上げがあります。当時ユーロ圏の消費者物価は食料・エネルギーを除いたコア物価が1%台前半で安定していたものの、総合インフレ率はエネルギー価格主導で3%近傍へと上昇していました。

ギリシャ危機が周縁国に波及し、域内景気が低迷するなか、金融緩和を主張する声もありましたが、ECBはインフレ退治を優先して利上げを断行し、その後の景気後退と欧州債務問題の深刻化を招いた経緯があります。この利上げについては当時も今も酷評する声が多くあります。

そうした教訓もあってか、デイリー・サンフランシスコ連邦準備銀行総裁は昨年10月に「利上げを行っても世界的な供給網を巡る問題は解決せず、むしろ来年の経済成長が阻害され、生産と雇用の双方が犠牲になる恐れがある」と発言し、早期利上げ論に消極的な姿勢を示しました。

今後、FRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長が同様の見解を示せば、金融市場の利上げ織り込み度合いは低下し、金利上昇圧力は後退、株価の追い風になると考えられると専門家はみています。

日本国内ではサービス業と自動車産業の回復が株価を牽引する

日本固有の要因も重要で、ポイントは2つ。

まず1つはサービス業の回復が生み出す「間接的効果」です。

サービス業の回復そのものについては、個人消費の喚起策として子育て世帯への現金給付案に加え、ワクチン接種証明を活用したGo Toキャンペーンの再開案などが伝わっており、すでに株価に織り込まれていると考えられます。

一方で間接的効果とは、需要者としてのサービス業が復調することで製造業の回復に貢献することがあげられます。コロナの直接的な打撃は対面型サービスに集中していたが、それらセクターが従来生み出してきた需要が失われ、製造業を蝕むという間接的影響も大きかったのです。

コロナ不況に直面した企業は投資計画を先送り・撤回し、キャッシュフローの確保を優先してきたとみられています。実際、設備投資の先行指標として知られる「機械受注統計」(内閣府)では非製造業の回復の鈍さが目立っていました。

コロナ感染状況が落ち着いているなかでサービス業の投資が本格的に再開すれば、設備投資の回復を通じて、その恩恵が製造業にも及ぶ可能性が高いと専門家はみています。

もう1つのポイントは自動車生産の底打ちです。

自動車最大手はコロナ感染状況の悪化により滞っていた東南アジアからの部品調達が正常化しつつあり、昨年11月に減産幅は縮小し、12月以降は挽回生産を検討するとしています。

経済産業省が公表する製造工業生産予測調査に基づけば、輸送機械工業は昨年10月に前月比+17.9%、11月は+35.0%と極めて大幅な増産計画が示されています。

当然のことながら自動車生産の回復に伴い鉄鋼(ボディ)、化学(シートやバンパー等に使われる樹脂)、非鉄金属(アルミ部品、ワイヤーハーネス)といった関連業種の業績回復も期待できると専門家はみています。

以上の記述を踏まえますと、日経平均株価は昨年来の高値を更新し、31,500円程度まで上昇する余地があると専門家は考えています。

ただし、リスクとしては、①専門家の予想に反してFRBが早期利上げに踏み切ること、②再び自動車生産が停滞すること、などを挙げています。

米国をはじめとする先進諸国の株価の回復からちょっと遅れをとっている感のある日本株ですが、米国株式なみの回復や成長が今年はみられるのでしょうか。コロナ禍からの回復とともに日本株の復活も願わずにはいられません。

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