シニアの投資にも「終活の視点」が必要か?

みなさん、こんにちは!「家族信託」や「遺言書」など生前の相続対策に特化した取組を行うディアパートナー行政書士事務所です。

今年1月から運用が始まった「新NISA制度」ですが、新NISAは、2024年1月1日時点で18歳以上の成人を対象としています。そしてこの制度は、日本国内に住んでいる人なら誰でも利用することができます。

実際のところ新NISAの利用者は、つみたてNISAの利用者が多いようで、特に若年層での利用率が高いことがわかっています。しかし、18歳以上の人ならば誰でも利用可能であるため、シニア層でも一定の利用が行われているのではないでしょうか。

かく言う私も、今年1月初めから毎週、投資信託5商品を積み立てています。若い世代でも死亡リスクはありますが、シニア層になればなおさら、死亡した時のリスクや判断能力が低下した場合のリスクを考えておかなければなりません。いわゆる「出口戦略」、「投資の終活」などをよくよく考えておかなければならないと思うのです。これは「新NISA」だけのことではなく、預貯金や不動産、保険といった全ての資産に当てはまることです。

シニア層の運用では相続税への目配りも

死亡リスクが高まるシニア層では、自分の相続がそう遠くない将来に起こりうることを自覚する必要があります。そのことを私自身あまり認めたくはありませんが、事実として自分の相続は日々近づいていることを実感しています。

自らの相続を控えて運用資産をどうするか迷う人は多いようです。投資信託協会が2022年に実施した調査で、全国の60歳以上の男女を対象に現金・預貯金以外の金融資産をどう相続させるつもりかを聞いたところ、「決まっていない」との回答が58.5%と最も多く、「全てそのまま」は18.3%、「全て現金化」は14.4%にとどまるという結果がでています(有効回答1556)。

老後の資産を長持ちさせるためシニア層であっても資産運用を続けることへの関心が高まるなか、「子どもなど相続人の負担にならないよう生前に運用資産を整理する『投資の終活』をしておくことが大切」と専門家は話しています。

まだまだ相続税発生事案は少数(全体の約1割以下程度)ですが、相続税の節税を意識して投資の終活をするのであれば、主な資産の相続税上の扱いを押さえておく必要があります。

相続税は相続人が引き継ぐ財産の課税上の評価額を出し、相続財産の総額が基礎控除(3000万円+法定相続人の数×600万円)を差し引くなどして課税対象額があれば相続税が発生します。

評価額を出す際に適用する価格は資産によって異なり、例えば一般的な非上場の公募投信は死亡日の1口当たり基準価格を適用します。

上場株式や上場投信(ETF)は、①被相続人の死亡日の終値 ②死亡月の終値平均 ③死亡前月の終値平均 ④死亡前々月の終値平均から最も低い価格を選ぶため、株式・投信は相場動向次第で相続税の評価額が左右されることになります。

生命保険金の非課税枠を活用する

ある専門家は「税制上の利点が大きい生命保険に入るのが一案になる」と助言しています。生命保険の死亡保険金は被相続人(亡くなった人)の財産に当たりませんが、被相続人の死亡をきっかけに受け取る「みなし相続財産」として相続税の対象になります。ただし法定相続人1人につき500万円まで非課税枠が設けられています。ちなみに「死亡保険金」は民法上「受取人固有の財産」として位置付けられます。

仮に株式や投信を売却した資金900万円で、契約時に一括して保険料を払う「一時払い終身保険」に入り、保険金1000万円を受け取るとしましょう。法定相続人が2人なら1000万円までが非課税になり、そのぶん相続税の対象となる財産が減るため節税につなげることができます。

節税効果があるのは不動産だが留意点も

節税効果を大きくすることが見込めるのが不動産(現物不動産および不動産関連商品など)です。土地は国税庁が毎年7月に公表する「路線価」で評価するのが基本で、路線価は時価(公示地価)の80%程度を目安に決まります。建物は固定資産税で評価し、建物価格の60%程度が目安となっています。運用資産のほかにまとまった資金がある人なら「不動産購入が選択肢の一つになる」と専門家は説明しています。

ただ不動産は相続をする際に相続人どおしで分割をすることが難しく、かりに分割できたとしてもトラブルになりやすくなります。ましてや相続人全員で「不動産を共有名義」にするといった方法はトラブルになる可能性が高く、一番やってはいけない手法といえます。相続人が複数いる場合には、不動産を引き継ぐ人以外の相続人に預貯金を多く渡すといった配慮が大切になってきます。こうした配慮を行うために、生命保険の死亡保険金を活用するという手法がよく利用されます。具体的には、不動産を引き継ぐ人を死亡保険金の受取人に指定しておいて、その人が死亡保険金から現金を他の相続人に渡すという作業を行ないます。

一方、現預金は金額そのままが相続税の課税上の評価額になります。運用資産を現金化することによる節税余地は乏しい半面、遺産分けをしやすいといったメリットはあります。相続財産の総額が基礎控除の範囲内で相続税がかからなかったり、相続人同士が不仲で遺産争いをする可能性があったりするならば、現預金化しておくのも一案になりそうです。

老後資金は十分に確保することが大切

資産の出口戦略を考え、投資の終活を実行する際はいくつか注意点があります。

当たり前の話かもしれませんが、まず重要なのは「老後の生活資金を十分に確保しておくこと」になります。例えばいったん不動産にすると、現金化するのに手間や時間がかかりやすくなってしまいます。

運用資産を現金にした場合には物価上昇が続けば、実質的な価値が目減りするリスクがあります。意思判断能力が低下すると金融商品の取引は制限されるため、体に不調を感じたら、早めに投資の終活に着手するのが望ましいといえます。

保有している投資商品によってはあえて運用を続けながら、それを子どもなどに相続させるという手法も考えられますが、確実とはいえないリスクは残ります。

60代で認知症を発症、判断能力低下も

ただ、まだ60代であってたとしても認知症を発症する人はある程度存在します。ある研究によれば、65〜69歳で認知症を発症するのは全体の3%だといいます。認知症が進み判断能力が低下した場合には、「投資の終活」を行うことが出来なくなります。

最近、こうしたリスクへの対応を始めた事業者がでてきました。

野村証券では「ハートフルパートナー」という制度を設けて、高齢の顧客とその家族の想いに対応する専任担当者を設けて、高齢者特有のリスクへの対応を始めています。

東海東京証券は今年「予約型代理人取引制度」を導入してました。この制度では認知症と判断された場合、事前に指定された代理人に一部の取引権限が移る建付けとなっていますが、代理人ができる取引は原則50万円までの現金化に限られています。

従来、認知症対策としては「家族信託」が多く使われてきました。家族信託は民事信託の一種で、信頼できる家族に財産の管理や処分を託す制度です。ただ、受託者である子どもが信託された財産に対して大きな権限を持つため、ほかの親族とトラブルになるリスクがありました。東海東京証券の予約型代理人取引制度には、取引額や内容に制限を設けることで不要なリスクを避ける狙いがあります。

上記のような対面証券では認知機能の低下を事前に察知しようとする取り組みが進みつつあります。問題になるのは、多くの個人投資家が使うネット証券となります。顧客と対面で接する機会が基本的にないため、証券会社側が認知機能の低下を察知するのは困難といえます。ネット証券の利用者は若年層が多いのですが、新NISAの取り込みなどに高齢顧客の増加に備えるネット証券会社も出てきています。

ネット証券はオンラインで対応

楽天証券は2023年12月から、オンライン相談を提供するサービス「withアドバイザー」の提供を始めています。このサービスはファイナンシャルプランナーなどの資格を持つ社員がオンライン面談やチャットなどを通じて、相続や少額投資非課税制度(NISA)の使い方などの相談に乗るものです。

60〜70代の相談では「年齢や老後計画に応じた資産配分に変えたいが、どのようにしたらいいか分からない」という内容が多いといいます。相談の予約枠はすでに上限近くまで埋まっている状態で、ニーズに対応するため担当者の増員を進めているそうです。

マネックス証券は2021年9月からマネックスグループ子会社のマネックスSP信託(東京・港)を通じて、認知症発症時の財産管理と、相続時のスムーズな資産承継を支援する信託サービス「たくす株」を展開しています。この「たくす株」は本人が申し込み、認知機能が低下したときに家族に任せる株を専用口座に移すというサービスです。この口座の株は認知症が発症したときに家族が代理人として売却・現金化することができます。相続時には戸籍謄本などを提示すれば、指定した家族が専用口座の資産を受け取ることができます。最近はサービス内容に対する具体的な質問が増えており、ニーズの高まりが感じられるといいます。

このように証券会社側の取り組みが進む一方で、認知症発症や相続に備えた「投資の終活」に対する投資家側の意識はまだ高いとはいえないようです。信託協会が2022年に実施した調査では、相続を意識して投信や株式をどうするか決めていると答えたのは回答者の41.5%にとどまっています。専門家は、日本でも認知症や相続の問題を家族全体のものとして捉え、証券会社と当事者が協力して対応する仕組み作りが必要だと指摘しています。

運用方法についても、加齢とともに認知能力が落ちれば適切な売買判断が下しにくくなります。楽天証券では、投信を決まった額や割合で毎月自動的に売却してくれるサービスがあります。こうしたサービスを利用しながら、投資の終活を進めていくのも有効なのではないでしょうか。

節税策も意識して投資の終活を

相続税の対象となる人は少ないものの対象になりそうな人は相続税の節税を意識して、高齢期にどんな資産を持つかにも気を配る必要がでてきます。株や投信のまま相続する場合、相場動向で相続税の評価額が左右されることになります。子どもに資産運用をさせたい場合はそのまま相続するのが一案となりますが、相続税を抑えたい場合は節税効果のある資産に換えることも検討する必要がでてきます。

節税効果のある資産の代表として挙げられる不動産ですが、デメリットやリスクもでてきます。私個人としては、現物の不動産よりも小口化不動産のような不動産関連商品の活用もよいのではないかと考えています。

私がまず最初にお勧めするとしたら生命保険になるでしょうか。生命保険の死亡保険金は前述のとおり法定相続人1人につき500万円まで非課税であるため、株式や投信を売却した資金で生命保険に入ると、その分相続税の対象資産を減らすことができます。

今は高齢であっても加入できる生命保険や健康告知を気にせずに加入できる生命保険もでてきていますので、まとまった資金がなくても簡単にできる節税策になります。

また、死亡保険金の受取人指定を工夫することで、相続の際の「遺留分対策」として活用したり、相続税の納税対策として活用できますので、生命保険活用はまず最初に考えるべき選択肢になるのではないでしょうか。

いずれにしても出口戦略/投資の終活は必要!

ビットコインのような暗号資産の台頭もあり、最近は投資先も非常に幅広くなってきています。これからもデジタル資産は増えていくでしょうし、残される子供たちのためにも「投資の終活」は徐々に進めていく必要がありそうです。

少なくとも、どこにどのくらい投資しているのかといった情報を子供たちに知らせておくことは必須かもしれません。私も少し整理していかなければと焦る今日この頃です(笑)

投資の終活も伴走します!

ディアーパートナー行政書士事務所及び合同会社ディアパートナーでは、2024年4月から「伴走型」法人顧問FPサービスを始めています。

法人顧問FP協会

昨年結成された「一般社団法人 法人顧問FP協会」の会員として、投資家の理想の人生にぐっと近づく、人生とお金の地図づくりをお手伝いします。投資の終活に向けたお金の悩みを伴走しながら解決していきます。

また、生前の相続対策を専門とする行政書士事務所としましても、相続の際のトラブルが発生しないように万全の対策をご提案していきます。このように法務面・財務面からトータルで伴走しながら「投資の終活」のお手伝いをさせていただきます。

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