シニアのための「新しいNISA制度」活用術は?

みなさん、こんにちは!「家族信託」や「遺言書」など生前の相続対策に特化した取組を行うディアパートナー行政書士事務所です。

令和5年1月13日付日本経済新聞電子版「人生100年こわくない」に「新しいNISA制度」についての記事が掲載されていましたので、シニアの活用術について考えてみましょう。

(注)記事ベースは「新生NISA シニアのための活用術」と題した経済コラムニスト大江英樹さんのコラムから

少額投資非課税制度(NISA)の大幅拡充

2022年末に税制改正大綱が発表され、岸田政権が提唱する「資産所得倍増プラン」の具体策の一つである「少額投資非課税制度(NISA)の大幅拡充」の内容が明らかになってきました。

NISA自体は2014年からスタートし、その後ジュニアNISA、つみたてNISAといった新しいパターンもできた中で、どちらかと言うと主に若い人向けの一生涯にわたる資産形成の制度として注目されてきました。

しかし、現実にはシニア層の投資家も多くがこの制度を利用していますし、利用年齢も18歳以上であれば上限年齢の設定はないため、誰でもが利用できる有効な資産形成の制度であることは間違いのないところです。

特に今回の制度改正の内容をみると、シニア層にとっても使い勝手が良くなっていることがうかがえます。そこで、今回は他の多くのNISAに関する記事とは少し視点を変えて、シニアがNISA制度をどう活用すべきかについて考えていきましょう。

今回の改正点は?

まず最初に、今回の制度がどう変わったのかを見ていきましょう。実際に施行されるのは2024年ですので、まだ細かい部分は追加されたり変更されたりするところもあると思われますが、大まかなところは以下の通りとなっています。

①制度の恒久化

従来のNISA制度は、投資可能期間と非課税期間が有期限でした。今までは長期の資産形成を目的としながらも、期間が限定されており、趣旨にはそぐわない面もありました。

ところが今回の改正では、投資可能期間も非課税期間も無期限ということになったため、期間を気にすることなく、安心して制度を利用することができるようになります。

従来NISAでは、非課税期間が終了した後は、引き続きそれまでの資産を非課税として続けるか、あるいは、翌年以降に新たに投資をするためにそれまでの残高は課税の口座へ移すなり売却するなりを判断しなければなりませんでした。今回、制度が恒久化されたことで、そういうことを考える必要はなくなります。

②制度の一体化

従来の制度では、「一般NISA」と「つみたてNISA」は別の仕組みで、どちらか一方しか利用することができませんでしたが、今回の新しいNISAではこの二つが一体化されます。ただし、一つのNISA口座の中に「成長投資枠」と「つみたて投資枠」という二つの枠組みができることになります。

成長投資枠というのはこれまでの一般NISAとほぼ似たような形であり、つみたて投資枠は従来のつみたてNISAとほぼ同じ形となっています。

商品も成長投資枠では株式にも投資できる一方で、つみたて投資枠では従来通り、一部の投資信託等に限られます。これまでとの違いはこの二つの枠のどちらか一方しか利用できないのではなく、どちらも同時に利用することができます。

③利用枠の拡大

従来のNISA制度では「一般NISA」と「つみたてNISA」はどちらか一つしか選べず、利用できる枠については「一般NISA」が年間120万円、利用できる非課税期間は5年で総額は120万円×5年=600万円であり、「つみたてNISA」の場合は年間40万円で利用できる期間は20年で40万円×20年=800万円となっていて、このどちらかを選ぶというしくみでした。

ところが今回の改正で、成長投資枠で年間240万円、つみたて投資枠は年間120万円と大きく増えた上、併用できるため合計すると最大は年間360万円までとなります。

④生涯投資枠

ただし、制度が恒久化されたとはいいながらも、利用できる金額には上限が設けられています。

これは「生涯投資枠」と呼ばれるもので、その限度額は1800万円(このうち成長投資枠が1200万円)に設定されていますので、これ以上の金額は投資できないことになります。

とはいえ従来のNISA制度と比べて利用枠は大きく広がったのは間違いありません。さらに言えば、生涯投資枠の限度内であれば、売却した分の枠を再び利用できるようになるということです。これは画期的なことかもしれません!

シニアにも大きなメリットが!

従来のNISA制度もそうですが、今回も制度の基本的な考え方は長期にわたって資産形成するための制度であることは間違いないようです。

一見すると成長投資枠の方が金額は2倍で、積み立てによる資産形成よりも一括投資を優遇しているように見えなくもありませんが、成長投資枠は、原則、積み立てを続けて行く中で何らかの理由で積み立てができなかった場合、後にその分をキャッチアップするために設けられているという意味合いもあるのではないかと大江さんは述べています。

また、あくまでも中間層の資産形成を支援するというのが制度の根幹ではありますが、中身をよく考えてみると、若年層向けの資産形成のみならず、シニア層の資産運用においても活用できる面が見えてくるとも述べています。

そのうえで大江さんは、今回設定された生涯投資枠で、1800万円以上は利用できないとなっているため、比較的多くの金融資産を持つ高齢者層にはさほど魅力がないという意見もあるとしながらも、必ずしもそうとは言いきれないとしています。

なぜならば、売却するとその分は翌年復活し、年間の利用可能額の範囲内で再び利用することができるからだとしています。詳細についてはまだ見えないながらも、現在までの報道や金融庁が主催する広報のためのミーティングなどではそのように語られているといいます。

そうだとすれば、NISAを利用して買い付けた株式や投信が値上がりした場合、それを売却してもその分は生涯投資枠の内であれば再度買い付けることができることになります。具体的には利益が出た場合は売却して安全資産(個人向け国債等)へ移し、新たに使える枠を使って投資をすることができることになります。

シニア層の場合、リスク資産のみで運用するというよりは、むしろ一定割合を安全資産で保有したいというニーズがあると考えられるので、そういう点ではシニア層にも使い勝手はよいと考えるべきだと大江さんは記しています。

リタイア後の積立投資

一般的にシニア層のようにある程度の金融資産を持っていると考えられる人たちは、長期の積立投資のような方法はあまりなじまず、まとまった資金を一括で投資することが多いと思われがちですが、必ずしもそういうわけではないようです。

若い頃から投資を続けてきてそれなりに資産も増やした経験のある人なら、まとまったお金で投資を行うでしょうが、普通の会社員は、それほど投資の経験を持っている人は多くないでしょう。むしろ投資経験のない人の方が圧倒的に多いように思えます。

そういう人が退職金というおそらく生涯で最もまとまったお金を手にすると同時に、そのお金をまとまって投資に回す、いわゆる「退職金投資デビュー」は極めて危険な行為だといえます。

大江さんは常々、投資経験の乏しい人が定年を迎えた後には一度に投資するのではなく、若い人と同様、毎月少しずつ積立投資をした方がよいと主張しています。

大江さん自身、証券会社に在籍し投資することには制約があったため、自分自身のお金で株式投資を始めたのは定年になって以降だといい、60歳から積立投資を始め、それを継続しているということです。

新たなNISA制度では、つみたて投資枠は年間120万円で、月額10万円までは投資できることになります。月額10万円という金額は、若い人にはちょっとハードルの高い金額ですが、定年後に退職金のなかから積み立てていくのであれば、十分可能でしょうし、適切な金額であるとも言えます。

この新しいNISA制度が始まるのは来年2024年からですので、まだ1年間の猶予があります。この猶予期間にいま一度、自分の金融資産を点検するとともに、シニアであっても積立投資を活用する、そして生涯投資枠の使い方を工夫して自分なりのポートフォリオを作ることを大江さんは勧めています。

まとめ

定年を迎えた、または定年退職し退職金を手にしたシニア層の「新しいNISA制度」の活用方法について「積立投資」のススメでした。

現在、私は「一般NISA」を利用していますが、今年に入って個別株式を3銘柄購入したため、今年の利用枠がほとんどなくなってしまいました(笑)

シニア層に限らずどの世代においても、NISA非課税枠を利用しない手はありません。

とくに現役世代においては、個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)を活用して「所得税・住民税を軽減」しながら、老後資金を準備することは勿論、NISA枠の活用も極めて有効な資産形成の方法です。

“いまのNISA制度”の非課税枠も活用しては!

大江さんが勧めているように、今年2023年は自分の資産形成の点検に充てるのも良いかもしれませんが、2023年今年のNISA枠の活用も検討してみてはいかがでしょうか。

たとえ1年間とはいえ、「一般NISA」であれば年間120万円の枠が活用できます。2024年の新生NISA制度の詳細を見極めながらになるかもしれませんが、今年2023年から始めて、従来のNISA制度の非課税枠の活用も検討の余地は大いにありそうです!

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