シニアにとって「長く働くこと」の効用は?

みなさん、こんにちは!「家族信託」や「遺言書」など生前の相続対策に特化した取組を行うディアパートナー行政書士事務所です。

令和5年9月1日付日本経済新聞電子版「人生100年こわくない 定年楽園への道」に経済コラムニスト 大江英樹さんが「老後の基本は「投資」よりも「長く働くこと」」をテーマにした記事が掲載されていました。シニアにとって「長く働くこと」の意味やその効用について考えてみましょう。

大江さんは冒頭で、「老後の基本は「投資」よりも「長く働くこと」」をテーマにしていることにふれ、「決してシニアの投資を否定的に考えているわけではない」としています。

その理由として、シニアの投資は、「自分のお金の購買力維持」や「知的好奇心の維持」という面で大きなメリットがあるからと指摘しています。

ただ大江さんは、老後の生活やお金の基本を投資に委ねるというのは個人的な意見としてはあまり賛同しないといっています。それは、老後の生活全般にわたって最も大切なことは「投資すること」ではなく「働くこと」だと思っているからなのだそうです。

現役世代の人の多くは会社勤めなので、できることならなるべく早くリタイアして仕事から離れたいと思うのも理解できるとし、大江さん自身もそうだったということです。

ところが「会社員時代の働き方」と「会社を辞めた後の働き方」というのはかなり様子が異なってくるといいます。「会社を辞めた後の働き方」をひと言で言えば”仕事が楽しい”のだそう。このように老後に長く働くことのメリットを3つの点で考えてみましょう。

「老後三大不安」の解消

一般的に「老後の三大不安」と言われるものがあります。それは「健康」、「お金」、そして「孤独」です。このうち「健康」については説明するまでもなく、老後に限らず人にとって一番大事なものが健康だと考えられます。

2つ目の「お金」ですが、会社員や公務員であった人ならば、厚生年金が終身にわたって受給できるため、極端な貧困に陥ることはないと考えられます。もちろん公的年金だけでは豊かな生活をおくることは難しいかもしれませんが、少なくとも日常生活をまかなうことは可能でしょう。

そして3番目の不安である「孤独」。大江さんは、この孤独が一番厄介だとなと主張しています。それは、健康やお金は誰もが意識しているのに対し、多くの人は現役時代、会社を辞めた後に孤独が襲いかかってくることをあまりイメージできていないからだといいます。

多くの人の気持ちの中にはこの「老後の三大不安(健康・お金・孤独)」が存在しています。大江さんは、これらの不安は多くの場合、”働く”ことで解消が図れるといいます。

例えば「健康」についていえば、現役時代のようなハードでストレスのたまる働き方さえしなければ、社会的な役割を持って働き続けることは健康上のメリットがあります。

2つ目の「お金」は言うまでもなくいくばくかの報酬を得ることができるわけですから、ある程度解消することができます。

そして3つ目の「孤独」について言えば、働くということは何らかの形で人とのつながりが続くわけですし、新しい仕事をやってみたらそこでまた新しい人とのつながりもできることになります。

大江さん自身も60歳で会社を辞めて以降、職業、年齢、地域はバラバラですが、その土地に行くと必ず一緒にご飯を食べようという友人が定年後に100人以上できたといいます。

大江さんは、趣味やボランティアといった社会的な活動を続けていくことによって孤独の解消もできるが、働いていくばくかの収入が入ってくる方がずっとありがたいのではないかともいっています。

「遊ぶため」楽しく働く

大江さんは、「定年後の働き方」は「現役時代の働き方」とは変えるべきだと考えています。

冒頭、大江さんは、会社勤めの人は仕事が苦行で早くリタイアしたいと思っているだろうとし、老後(定年後の働き方)は”働くことが楽しい”と述べています。

大江さんの場合も、60歳で独立して働き始めた2〜3年の間はほとんど収入のある仕事はなかったそうですが、実に楽しかったといいます。それはなぜかというと、自分の好きなことで収入を得ようとしているからだそうです。

大江さんは、豊かな生活を求めずに生活するというだけであれば公的年金だけで老後資金をまかなえないことはないとし、大江さん自身、年金受給を繰り下げたため、65歳から公的年金を受け取らなかったということです。

替わりに年金受給額に相当する金額を会社から給料で受け取り、それだけで日常生活をおくってきたが全く何の問題もなかったといいます。そうしたことから、現役時代とは発想を変えて「お金のために働く」のではなく、「遊ぶために働く」と考えてみてはどうだろうかと投げかけています。

普通に生活していくための日常生活費だけなら公的年金でカバーできるものの、旅行したり、毎週おいしいものを食べに出かけたりするということであれば公的年金だけでは難しいでしょう。大江さんは、こういった楽しみのために働くのが定年後の働き方としてはベストだと思うとしています。

定年後の仕事ですので、それほど多額の収入は得られないかもしれませんが、生活のために働くのではなく、”遊ぶため”に働くのですから、収入は少なくても大丈夫です。

例えば何かのアルバイトで月10万円(年収120万円)ぐらい稼ぐことは十分可能でしょうし、パートナーがいるなら自分1人ではなく夫婦で働くことができれば、月に20万円ぐらいは稼ぐことができます。

ちなみにこれを60歳時点での自分達の人的資本として考えてみると、上述の条件で65歳まで働けば2%で割り引いたとしても1086万円の価値を持っていることになります。70歳まで働くとすれば1968万円になります。これだけの収入が見込めるとすれば、十分に遊ぶために働くことは可能となるでしょう。

それに遊ぶために働くのであれば、きっとモチベーションも上がるはずですし、働くこと自体が楽しみになるでしょう。なにしろ生活のために嫌な仕事を仕方なくやるのではなく、旅行にいくための費用を稼ごうということですから気は楽ですし、楽しいに違いありません。

年金を70歳から受給する意義

大江さんは、長く働くことによるお金の面での最大のメリットは、その収入自体ではなく「年金」にあるとしています。

年金の支給開始は原則65歳であるものの、自分で受け取り始める「受給開始時期」は60歳から75歳までの15年間、いつでも好きな時に設定できます。

通常年金支給額として表示されているのは65歳から受給開始した場合です。65歳よりも早く受給を始めると1カ月早めるごとに0.4%ずつ減額されます。60歳から受け取り始めると24%減額されることになり、その減額は生涯続きます。

逆に65歳よりも遅く受け取り始めると1カ月ごとに0.7%増額されます。仮に70歳から受け取り始めると増額幅は42%となり、それが生涯続くことになります。

しかし、いつから受け取り始めるのがいいか、という問いに対する正解はありません。その人のライフプランによっていつから受け取り始めるのがベストかは人によって異なるからです。(いつまで生きるのかは誰にもわかりませんね(笑))

しかし、年金の本質が「長生きリスクに備えた保険」であることを考えると、元気で働けるうちはなるべく長く働き、受給開始を遅らせて人生の終盤を豊かに過ごしたいという考えがあっても良いのではないでしょうか。

大江さんも同様で、年金を受け取り始めたのは70歳になってからだそうで、受給金額は知ってはいたものの、実際に受け取って見てその金額の多さに驚いたといいます。

もちろん、年金の受給開始を遅らせるのであればそこまでの生活費が必要になります。

そのための方法としては、

①70歳まで働く

②個人型確定拠出年金(iDeCo、イデコ)や少額投資非課税制度(NISA)を含む手持ちの金融資産や退職金を取り崩す

という2通りがあります。

大江さん個人の考えは、できるだけ②を取り崩したくはないということです。なぜならば、今後、医療や介護という不確定な出費が想定されるからです。したがって、できることなら①70歳まで働くということを最優先で考えたいとしています。

投資の成果は常に不確実であり、20代や30代の人ならともかく50代、60代という年齢になってくれば長期投資といっても難しい場合もあるだろうとし、老後に最も大切なことは「投資」よりも”長く働く”だと結んでいます。

まとめ

日本経済新聞「人生100年こわくない 定年楽園への道」 大江英樹さんの「老後の基本は「投資」よりも「長く働くこと」」は以上のようなご提言でした。

アルバイトで月10万円(年収120万円)ぐらい稼ぐというのも結構大変なことかもしれませんし、夫婦で月に20万円ぐらい稼ぐのも、地方ではハードルがちょっと高いかもしれませんね。

なによりも、月〇〇万円稼ぐために嫌な仕事をガマンするのでは「本末転倒」になってしまうかもしれませんね。大江さんの主張の本質はあくまで「好きな仕事で楽しく稼ぐ」という点なのでしょう。

いずれにしても、寿命は自分自身にも分かりませんので、「年金受給時期の繰り上げ・繰り下げ」の判断も難しいでしょうし、損得勘定だけが正解とは限りません。ご自身のライフプランによって、また、自分や家族の状況によって考えていくしかないのでしょうね~。

ただ、年金の繰り下げには大きな落とし穴がありますので要注意です。詳しくはコチラをご覧ください↓

年金の繰り下げの盲点?

何より一番大切なのは「健康」!

大江英樹さんが冒頭でも述べていますが、1つめに数えられている「健康」が一番大切なのでしょう。上のブログにもありますが、夫婦の場合、夫婦ともに健康でないと筋書き通りの年金受給につながらない場合も多々あります。

ましてや「健康」でなければ、長い間、働くこともできなくなりますので、最重要であることは間違いありません。

ただし、お金のことを申し上げれば、私自身は「死んだ時が一番自分の資産が多い時」にはならないように、元気なうちにやりたいことを楽しみ、計画的に自分の資産を使っていきたいと考えています。

そして、自分の人生に後悔しないような生き方(余生)をしていきたいものです。

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それでも生前の相続対策は必要です!

人がいつ死ぬかは誰にもわかりませんが、しかしその時はいずれ必ず誰にでもやってきます。

その時のために備えて、生前の相続対策は必須となってきます。少なくとも遺言書を残すというのは、どなたにも必要なことだと私は考えています。

ディアパートナー行政書士事務所では、家族信託に限らず、遺言書作成や任意後見契約など生前の相続対策のご相談、お一人様・お二人様のお悩みのご相談などを承っておりますので、相続対策全般についてお気軽にご相談ください。

ご自宅への訪問やサザンガク(下のチラシを参照)でも面談に対応しています。また、土曜日・日曜日、時間外の対応も行いますのでお気軽にお問い合わせ下さい。

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